大会宣言

 10年前、この仙台で、わずか13団体で発足した全国市民オンブズマン連絡会議の構成団体は、現在、79団体に達している。今日、全国各地から多くの団体・個人の参加により10年の節目の大会をこの仙台の地で迎えることができた。10年前には、ほとんど一般には知られていなかった「市民オンブズマン」の名称も、連絡会議と各地の団体の以下のような活動により、広く市民に知られ、私たちの活動は有力な市民運動として認知されるに至っている。
 この10年間の市民オンブズマン活動は、税金の無駄遣い・違法支出の追及、行政情報の公開の推進、行政活動の監視など多方面に成果をあげてきた。
 税金の無駄遣い・違法支出では、日常的に行われていた公務員同士の飲み食い−官官接待にメスを入れ、食糧費の全国的な調査・追及を行った。調査の結果、明らかになった官官接待による膨大な税金の無駄遣いは驚くものだったが、私たちの追及により、これらが激減したことは市民運動の力を証明するものであった。
 また、公務員による税金の無駄遣い・違法支出のもう一方の問題は、いわゆるカラ出張問題であった。出張を偽装して税金をプールし私的な飲み会・交際費などに流用していたカラ出張問題は、公務員による税金の詐取であるが、これが当然のことのように全国各地で行われていながら、市民の追及を免れていた。これに対して、私たちの活動が鋭いメスを入れ、全国各地でカラ出張の撲滅とカラ出張による損害の回復がなされてきた。これにより、それまで市民運動が空白であった分野に市民の監視の目が注がれるようになった。
 税金の無駄遣い・違法支出で、次に取り上げたのは、今大会でも重要なテーマとなっている公共事業の談合問題である。競争入札により税金を効率的に活用すべき公共事業が、実は業者間の談合や、あるいは官製談合といわれる業者と行政の癒着により、業者の違法な儲けの場になっている。これら談合は市民的には周知の事実であったが、行政は談合の排除について消極的であり、また、市民が談合の実態を暴露してこれを追及することは、ほとんど情報が公開されていない状況では非常に困難な課題であった。しかし、困難な中でもさまざまな知恵を絞り市民運動や監査請求・住民訴訟などの法的手段を工夫して行い、行政に対して入札制度の改善を行わせ、住民訴訟で勝訴するなど着実に前進し、今回の大会では非常にリアルに談合による損失を明らかにしている。
 これらの市民オンブズマン活動の表裏をなすのが情報公開である。開示請求により取得した行政情報を分析して問題点を指摘するとともに、さらに徹底した情報公開制度を推進してきたのである。情報公開については、地方自治体の情報公開度ランキングが全国行事となった。公開された情報を分析して行政に市民要求を提言するという私たちの自主的な運動は真の意味で行政参加を実現するものであった。しかも地方での情報公開の前進と広がりを受けて、国も情報公開法を制定せざるを得なくなった。
 そして私たちは、現在、市民からの有効な監視手段を欠いている国について、地方自治体の住民訴訟と同様の制度(国民訴訟制度)を制定すべく活動を強めている。国についても、地方自治体と同様に、市民が税金の無駄遣い・違法支出問題を直接に是正するための手段が必要であることは、地方自治体での私たちの経験から明らかである。
 私たちの前には巨大な公共事業による無駄を防ぐこと、議会・議員や監査委員に本来の仕事を行わせること、また、私たちが真に行政に参加できるよう政策形成のプロセスの透明性を求めること、など今後も多くの課題が残っている。
 10年の節目のこの大会が、今後の課題の新たな出発点として画期的な大会であったことを確認し、大会宣言とする。
2003年8月31日
第10回全国市民オンブズマン大会 in 仙台 参加者一同