司法制度改革審議会は「中間報告」において、弁護士費用の敗訴者負担制度は「弁護士報酬の高さから訴訟に踏み切れなかった当事者の訴訟を利用しやすくするものであることから、基本的に導入する方向で考えるべきである」との結論を示しました。そして「労働訴訟、少額訴訟など敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟は、その例外とすべきである」として、その導入に向けて具体的な検討を行う、というのです。 |
この制度が導入されるならば、住民の自治体監視の有力な武器であり、自治体の放置された損害の回復を住民が自治体に代わって自ら行う住民訴訟は全く機能しなくなります。私たちは、この制度の導入に絶対に反対です。 |
近年、自治体の首長たちが失政を隠蔽しようとして行う違法な財務会計処理による自治体の損害や、公共工事における大企業の談合工事によって発生する自治体の損害は数億円から数百億円と、とみに 巨額化しております。この損害の回復のため、各地で活発に住民訴訟が起こされていますが、その前置手続きとしての住民監査請求の期間制限が極めて厳しいうえに、住民訴訟制度に理解を示さない裁判所の姿勢が加わって住民訴訟はしばしば門前払いされ、違法行為者を喜ばせています。公正取引委員会も、公取が摘発した談合行為による自治体の損害の回復措置が不十分であると指摘しており、住民訴訟の活用に期待するとの意向さえ示しているのですが、住民訴訟はその勝敗だけを考えるならば非常にリスキーな訴訟となっています。 |
かかる状況にあって弁護士費用の敗訴者負担制度が導入されるなら、住民訴訟の原告になろうとする人は、誰一人としていなくなります。勝訴しても一円たりとも還元されない原告住民が、敗訴したときには巨額の債務を負わされることになるからです。 |
かくして弁護士費用の敗訴者負担制度は、住民訴訟制度に墓標を建て、自治体の公金をかすめ取った違法行為者の天国を作ることになります。このような不正義の横行を許してよいはずはありません。
住民訴訟に限らず、私たちの自治体監視活動に欠かすことのできない情報公開請求訴訟を含め、現代訴訟といわれる各種のフロンティア型訴訟も同様な運命をたどることになるでしょう。私たちは、この制度の導入に強く反対し、司法審に再考を強く求めるものです。
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全国市民オンブズマン連絡会議 |