大会宣言一公共事業の必要性を市民自身が判断しよう
 7月29日に実施された参議院選挙は、「改革」を呼号する小泉自民党の圧勝に終わった。小泉政権が、あえて具体的内容には触れずマジックワードとして使った「改革」という言葉に、多くの国民が、ゆがんだ日本社会の構造を本当の意味で改革し、額に汗して働く者の幸せを増進させてほしいという切ない期待を寄せた筈である。
 わが国の社会のゆがみは、国内総生産に対する公共事業費の比率が欧米主要国の3倍に達し、社会福祉費の比率と全く逆転している点に集約されている。そして、年間40兆円に及ぶ官公需を食い物にするために「政官財の鉄のトライアングル」と呼ばれる社会的強者が形成する利権構造を、崩壊させなければ、大多数の国民にとっては本当の改革にはならない。
 「改革」方針を支持した筈の選挙の結果は、皮肉にもこの利権構造の担い手をも肥大させた。来年度予算の編成をめぐって財務省は「公共事業予算10%削減」という方針を打ち出したが、その内容は事業内容のカットではなくコストダウンのすすめを言うものに過ぎず、ムダな公共事業の根本にメスを入れるものではない。しかも、この程度の方針さえ、「景気回復」を旗印とする建設族の圧力により、削減幅が圧縮された上、「補正予算」の別途編成さえ日程にのばる模様である。
 中央政府の舵取りに期待しているだけでは、日本社会のガンであるムダな公共事業をやめさせることは出来ないとかねてから考えているわれわれは、「公共事業はうちらでしまつ」というテーマを掲げ、今大会に各地からの実情調査の結果を集約した。
 さしあたってわれわれが選択した公共事業は、高速道路・ダム・港湾・地方空港の4種類であったが、すべての事業に共通して、
事業採択がなされる前には過大な需要予測が立てられ、
その需要予測の根拠となった資料は公表されないまま事業の完成とともに廃棄されている、という問題があることがわかった。
 つまり、見通しを「誤った」原因・責任がどこにあったかということを追及する機会が、国民に対し一切封じられて来たということである。
 東京湾アクアラインや本四架橋の無惨な財政的失敗にもかかわらず、四国縦貫横断道路の建設がすすめられたり、岡山空港や福島空港の赤字タレ流しを目の前に見ながら、神戸空港や静岡空港の建設がすすめられるという、壮大な愚行の繰りかえしが大手を振ってまかり通る原因の1つは、ここにある。
 このような愚行の繰り返しを防ぐためには、すべての公共事業について、その企画・構想段階から、事業主体や監督官庁があらゆる資料を情報公開することが必要不可欠である。この種の情報は行政の「意思形成過程」に属するという理由で、ともすれば秘匿されがちであるが、このような悪しき習慣は打破されなければならない。すべての情報を把握した上で、住民がみずからに保障されている参政権(住民監査請求権、住民投票条例制定の直接請求権などを含む)を最大限に行使すること、それこそムダな公共事業への公金投入を未然に防ぐ唯一の方法である。

 時の政権がかかげる言葉に期待や幻想を抱くことはやめよう。ムダな公共事業をやめさせて、少しでも暮しやすい社会をつくるためには、市民がみずからのカをたのむしかないのだ。
 われわれは「公共事業はうちらでしまつ」する決意をあらためて確認して、今大会の宣言とする。
2001年8月5日

全国市民オンプズマン連絡会議
第8回京都大会参加者一同