1. |
政府は10月5日、いわゆるテロ対策特別立法のひとつとして、「自衛隊法の一部を改正する法律案」を国会に提出した。この法律案は、第96条の2と第122条を新設して、防衛秘密保護のための処罰規定を設けている。
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2. |
この処罰規定は、昭和60年に国会に提出されて廃案となった「国家秘密にかかるスパイ行為等の防止に関する法律案」(いわゆる国家秘密法案)の主な部分を再現する内容となっており、これと共通の問題点がある。
すなわち、 |
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(1) |
「防衛秘密」の範囲は非常に包括的で広いうえに、防衛庁長官が指定するだけで自動的に「秘密」扱いされることになっている。これでは、国会のチェックを受けず、司法審査すら受けない巨大なブラックボックスができてしまうおそれがある。
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(2) |
処罰規定の対象者には民間人や報道機関も含まれ、処罰範囲も「共謀」「教唆」「扇動」「過失漏洩」など非常に広い。しかも、法定刑は現行法にくらべて非常に重くなっている。
したがって、改正案はかつての国家秘密法案と同様に、国民の知る権利、言論・報道・出版の自由に対する重大な侵害のおそれを含んでいる。それは「新国家秘密法案」というべきものである。
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3. |
現代の民主主義国家では、防衛秘密保護法制の整備は、防衛情報の国民への公開と併行して進められなければならない。しかし、情報公開法は施行から6か月しか経過しておらず、同法による防衛情報公開のレベルはほとんど検証されていない。しかも、わが国の情報公開法では、防衛情報についての適用除外規定は非常に包括的であり、アメリカ合衆国のような一定年数を経過した情報についての公開制度も採用されていない。
このような状況下で「新国家秘密法案」のような立法をすれば、これまでの政府の対応でわかるように、政府にとって少しでも都合の悪い情報は、「防衛秘密」を盾に広範な情報が国民の目から覆い隠されることになる。これは国民の知る権利および行政の説明責任という情報公開制度の基本理念に反し、情報公開法を空洞化させるものである。
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4. |
このような国民の基本的人権にかかわる重大な立法については、国民各層の意見を充分に聴いて、慎重に立案・提出しなければならない。ところが「新国家秘密法案」は、いわゆるテロ特別立法の一部分として1か月たらずのうちに立案・提出されている。このこと自体、異常である。
しかも、そもそも「新国家秘密法案」は、テロ特別立法とは次元が違うもので、本来何のかかわりもないものである。それをあたかも一体関係があるかのように法案を提出することは、テロに対する恐怖と怒りが社会に広がっている時期に便乗した、意図的で悪質な立法である。情報閉塞の行政からの脱却こそがいまの日本の政治には求められており、その主軸を成すのが情報公開法である。「新国家秘密法案」の内容は明らかにこの流れに反するものである。
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5. |
以上の理由で、今回の「新国家秘密法案」に対して強く反対する。
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以上 |