2002年6月4日
中谷 元 防衛庁長官 殿
全国市民オンブズマン連絡会議

市民オンブズマンなどに対する防衛庁不正調査等の真相解明、再発禁止策等を求める抗議書
 今般、防衛庁に対して情報公開法に基づく情報公開請求を行った市民に関する情報を、防衛庁が組織的に、不正に収集、管理していた事実が明らかになった。新聞報道などによれば、防衛庁では全庁的に、情報公開請求を行った市民の職業、生年月日さらには所属団体、思想信条に関する情報を調査し、市民オンブズマン運動を行っている市民については「ob」などの記号を付けて、防衛庁内部において情報公開請求を行った市民がオンブズマン活動を行っていることが判別できるようにしていた。そして、防衛庁はこの情報を庁内のコンピューター及び公文書において管理し、これらの情報は調査隊など情報公開担当部局以外の部局を含む防衛庁の広い部局において配布、送信、利用されていたという。

 情報公開法は、国民主権、民主主義の理念に基づき、政府の国民に対する説明責任を全うさせ、国民の理解と批判の下で公正で民主的な行政を実現することを目的として、2001年4月から施行されたものである。ところが、あろうことか防衛庁では、情報公開法の施行と同時に市民に関する調査を開始していたのである。このような情報収集、調査活動は、憲法によって保障された国民の基本的人権であるプライバシー、思想信条の自由などを侵害する重大な違法行為であるとともに、知る権利や情報公開制度、ひいては民主主義を否定する行為であり、絶対に許すことのできない不正行為、犯罪行為と言わねばならない。

 私たち全国市民オンブズマン連絡会議は、防衛庁に対し、本件不正行為について強く抗議するとともに、徹底した真相、原因解明を求める。加えて、本件不正行為が、防衛庁内部において問題視されることもなく、組織的に続けられてきたことを考えるならば、防衛庁内部による調査、検討だけでは真相、原因の解明や再発の防止は到底期待できない。私たち市民オンブズマンを含む第三者による調査、検討等が不可欠であり、組織的な本件不正行為が防衛庁内の誰の指示によって行われたのか、どのような調査や資料に基づいてリストが作成されたのかを防衛庁が開示、公表することのみが再発防止の唯一の手段と考える。そのために、本件不正行為に関する徹底した情報公開、そして、不正な個人情報収集管理に対する処罰規定などを含む再発防止策の策定と実行をここに強く求めるものである。

 防衛庁における不正行為によって、市民オンブズマンを含むすべての市民が受けた人権侵害は極めて重大である。そして、防衛庁の対応が不十分なものに終わるような場合には、私たちは国家賠償請求訴訟を視野に入れた法的な措置をとる所存である。かかる結果に終わることのないよう、防衛庁には国民に対する誠実かつ適切な対応を重ねて求めるものである。
以上