V、制度運用の現状
1、「行政文書開示請求書」の取扱い  設問1、2
(1)請求書原本、コピーの保管部署
 請求書原本は請求文書を保有する部課(以下、原課とよぶ)で保管しており、情報公開室でコピーを持っているケースが半分、逆のケースが半分である。
(2)保存場所
 情報公開室では鍵の掛かる棚に保存している省もあるが、鍵のない棚の場合が過半数である。職員の帰宅時に部屋の出入り口に施錠できるので問題ないとの理由である。文書管理規定では概ね「管理が適切に行える専用の場所」とのみ規定され、施錠が必要との規定はない。
 「特に適切に保存することが必要」な行政文書を「特例扱い」する省もあり、これは施錠と同等の管理体制と思われる。
(3)保存年限
 請求書の保存年限は5年が多いが、1年・3年・10年もあり各省庁まちまちである。
(4)一般文書との区別
 コピーや配布先を制限するなどの取扱注意の表示はなく、一般の行政文書とまったく同じ取扱いとなっている。ある省では進行管理表にのみ「取扱注意」が表示してあった。
2、進行管理表(コンピュータ資料) 設問3、4
(1)進行管理表の作成
 請求書原本からコンピュータ入力される資料「進行管理表」(省庁により様々な名称がある)を情報公開室のみで作成する省と、原課でも作成する省はほぼ同数である。原課が作成したコンピュータ資料の管理実態を情報公開室では充分に把握していない。
(2)請求者氏名などの記載
 情報公開室で作成する進行管理表には、ほとんどの省庁で請求者氏名が入力されている。ある省庁では情報公開室の進行管理表には請求者氏名を記載していなかったが、原課の進行管理表に氏名を入力していた。電話番号や住所まで入力している省庁は少数である。
 請求者氏名を入力する理由は「同じ行政文書への開示請求が多数あった場合に請求者個人名が記載されていた方が区別しやすい」というのが大半であった。請求者と連絡を取るために電話番号を記載していたのは確認できる範囲で4省庁だけだった。
(3)アクセスの制限
 進行管理表にアクセスできる人は各省庁共に情報管理室の特定の者に制限しているが、一部の省庁では原課の担当者も自分の担当する部分のみ見られるようにしている。コンピュータ機器およびデータへのアクセスはパスワードなどで二重に制限されており、厳重に管理されていると言える。
3、委任機関からの照会   設問5
 各省庁の情報公開室では総務省への報告などのために傘下の委任機関から報告を求めている。この報告について設問をしたのは、報告書に付随して請求者氏名が委任機関から本省に報告される可能性を探るためであった。その可能性はないことが判明したが、調査の途中で別途の問題が発見された。
 それは委任機関からの事前照会である。情報公開法第17条で権限委任を受けた機関は法律上では自ら開示決定し、もし不服であれば請求者は上級庁へ審査請求する手続きとなっている。そこで委任機関は多くの場合、後々に問題を残さないという判断で、開示決定の前に上級庁たる本省の情報公開室に開示決定についての事前相談を行っている。
 法施行後1年しか経過していないため委任機関で情報公開に精しい人材が揃っていないとか、省庁全組織としての整合性を保つためとかで、事前相談自体はやむを得ない面もあると思われる。
 この事前相談に際しては殆どの省庁で請求書の全コピーを添付させたり、コンピュータ資料などで請求者氏名が本省に報告されるシステムになっている。
4、応接記録書  設問6
 本来、応接記録書の作成は、一般から電話などで情報公開請求手続きや文書特定についての様々な照会があった場合に担当者が更なる同種の照会に備えて作成するケースと、開示請求者との窓口での応接の記録として作成するケースとある。
 窓口応接の場合、面前で記載して請求者に記録を残すことを知らせる場合と、後刻、バックオフィスで作成する場合とがある。記録書の保管は請求書に添付するところ別途保管するところなど様々である。
 この記録書は、すでに必要性がなくなったと作成を中止している省も多い。
5、研修制度  設問7
 各省庁とも研修制度についてあまり期待していないようである。情報公開法の施行直前には特別研修をやっているが、その後はせいぜい新任者研修や階層別研修の一コマに文書管理を設けている程度である。On-the-Jobで研修するとしている省庁もある。システム研修を年1回程度実施し、これに文書管理研修を含めるところが4省庁ある。