|
|
前回の口頭弁論で、裁判長は被告に「仮設的な事例を示して、これ以上の開示をするとどういう支障が生じるかを説明すること」を指示し、原告からは「対象文書1069件の個々について外務省が定めた不開示審査基準をどう当てはめたかを示すこと、および開示請求5件に対してそれぞれに分けて対象文書を取り扱うこと」を要求していた。 当センターは、仮設的な事例による説明では被告側に都合のいい数例のパターンが示されるだけに終わると懸念していた。 被告外務省から1月30日付(口頭弁論と同日)で提出された準備書面(6)は、43ページという長大なもの。案の定、仮設例は情報収集・外交交渉の裏工作・国際機関交渉での裏工作という3パターンの例を仮設し、「決裁書等には「おそれ」があり不開示とすべき記載がある。外形的事実の記載は一部でも示せない。細分化された開示請求が有り得るため、件数といえども外交上の方針を関係国に推測されるので明らかにできない。」と論じている。 第9回口頭弁論は1月30日(木)11時30分から606号法廷で行われた。 出席者は 原告側:高橋、谷合、土橋、関口、羽倉の5弁護士 被告側:野下法務省訟務課付以下外務省等関係者9名 傍聴席:若干名 裁判官が被告に、準備書面6どおり陳述することを確認し、次いで原告に、この準備書面を中心に反論するかを訊ねた。 原告は「準備書面6の事例1から3はそれなりに楽しく拝見したが、被告は1069件の個々の文書を外務省自らが定めた基準に従ってどれに当てはめたのかを答えていない。後半での法の趣旨に合っていないなどの主張は、この当てはめの提示をしてから周辺の事情を言わなければ話にならない。裁判長は過去の例に従って外形的事実を示せと指示した。報償費はすべてブラックボックスとは法に書いていない。準備書面6は補足の説明であり、本体について何も言っておらず、拒否に等しい。」と主張した。 裁判長は「もとにたち返って意見を述べたいのは解かるが進まない。」として、「準備書面6を前提に、これを踏まえて反論すること」を原告に指示した。 次回期日を3月27日(木)午前11時30分 606号法廷と決定し、閉廷した。 コメント 被告は報償費が情報収集・外交裏工作という目的のためにだけ使用されているかのような議論をするが、我々は建前論の術中に陥ったりはしはない。報償費が適正に使用されず、本来の目的を口実に目的外にまた過大な金額が使用されているというのが国民周知の実態である。例えば在外公館における国会議員への便宜供与は、ほとんどが外務省の3パターンに入らないはずである。 「使途の分類・使用方法を明らかにすることは報償費の性格に照らして適切でない」との被告の主張は、外務省自体の審査基準の当てはめの拒否を意味するものと思われるが、不開示取り消し訴訟の審理で、被告による不開示事由該当性の審査の適正さを証するために、「支障」を来たさないようその部分を示すことは十分できるはずであり、拒否の理由にはならない。 準備書面6では、会計検査院の検査による報償費の不適正使用の指摘、不正経理、水増し請求プール金などについて原告に反論をしているが、「目的外使用があったか否かは、不開示事由の有無に直接係るものではない」「会計検査院の是正改善措置・指導は報償費の使用が定例化定型化していることに対してであって、目的外使用に対してのものではない」「報償費予算削減は目的外に使用されていたためではない」「決裁書で水増しが行われたが、不正が行われた事案の目的は報償費の使用である。」「不正経理の予防・是正は国民の監視によってするものではない」などと強弁に終始している。 原告は、報償費が不開示とされるべきでない用途に使用されているものを開示することを要求している。目的外の支出があるという前提にたてば、第4,第5のパターンが存在し、この類の文書は被告自らが設けた不開示審査基準のどれにも該当しないことが示されるべきであり、開示請求に対しては当然開示されるべきものであるが、不開示取消訴訟の審理においては外形的事実を示すべきである。 こういった意味で、法廷における原告の「準備書面6は周辺・補足の説明に過ぎない。」との主張は当を得たものである。被告準備書面6の主張立証の不当さを被告側の議論に即して原告側が反論すれば、本件の審理も決着に向けて大きく一歩を踏み出すことになるのではなかろうか。 |
|
(鈴木祥宣 記) |