外務省報償費 情報公開訴訟第10回口頭弁論・傍聴記
 第10回口頭弁論は3月27日(木)11時30分から606号法廷で行われた。
出席者は
原告側:高橋、羽倉、土橋、谷合の4弁護士
被告側:野下法務省訟務課付以下外務省等関係者10名
傍聴席:若干名

 1、原告は準備書面5どおり陳述することを確認した。
 原告の準備書面5の要旨(3月25日提出。全文はホームページ、「センターの活動」の「1、外務省報償費訴訟は今、全記録」欄に掲載)
(1)裁判所が再三再四、情報の特定や不開示理由の主張について釈明を求めてきたのに対して、被告は一向に求めに応じないことを、口頭弁論における裁判所の指示の経過を振り返って明らかにしている。
(2)原告は報償費の支出に関し、支出の意思決定から支払手続きの完了までのすべての文書の開示を求めているのに対して、被告は支出行為に先立つ決裁書だけに限定している。明らかな隠蔽工作である。
(3)被告は内部審査基準・処分基準に従った不開示該当性を審査していない。対象文書は不開示文書に該当しない。
(4)国際スパイ映画もどきの仮想の3事例は、今日の報償費の使途として希少な事例に過ぎない。仮想の事例の場合においても、そのような活動を各国が行うことは国際慣行から是認されることであり、外務省が行っていることが推認されても国益を損なうことにならない。決裁書・領収書も部分開示ができるはずである。
(5)報償費は仮想の3類型以外に、多くは在外公館での国会議員の接待、大使・公使のレセプション、日本画や高級ワインの購入などに使用されている。これらの事例の説明は回避している。
(6)歴然とした目的外使用の指摘に筋違いの反論をしている。

2、続いて裁判官は被告に次の指示をした。
 「原告準備書面5への反論と別途に、関連する事柄として、外形的事実に関してさらに特定ができると考えられる次の項目がある。
 (1)文書を各大使館、大臣官房ごとに分類すること。単発の開示請求または申立が別々であれば、個別のものになるはずである。
 (2)各文書の作成者、決済者の職名の開示
 (3)起案日、決済日
 (4)支払予定額
 (5)予算科目(報償費、政府開発援助報償費、あるいはその双方)
 (6)支払手続日
 (7)取扱者の職名
 (8)支払額と支払方法
 これら8項目について、
 @ 特定できるかどうか検討すること。
 A 特定ができないのならば具体的事情を説明すること。その説明は特殊ケースを前提としてではなく、一般的に支障があることの説明であること。
 特定ができないという場合には主張立証責任の問題と絡むので、つくして欲しい。」
 原告は請求対象文書について発言を求め、「被告は対象文書を決済書だけに限定するとしている。原告準備書面5の中でも指摘したが、当然、領収書等も対象文書に含まれる。被告準書面4の報償費使用の意思決定手続き説明部分にも、決済書に基づいて支払が実際に行われたことを示す領収書を貼付した書面を作成することが記載されている。」と主張した。
 裁判長はこの点を含めることを認め、被告に対し「決済書以外の領収書等が公開請求の対象にならないということであればその理由について説明すること」を指示した。また「外形的事実の特定の可否の検討は、これまでの主張にとらわれずに行うこと」を求めた。
 次回期日を6月17日(火)午前11時 606号法廷と決定し、閉廷した。


コメント

 (1)被告は主張立証を尽くすことが必要
 裁判長が求めた外形的事実の8項目に加えて、決済書には、被告準備書面4によれば、支払予定先、目的・内容、支払先の3項目が記載されている。多くの文書は、残りの3項目が特定されても、被告のいう「おそれ」は生じないはずのものである。情報の内容に関わりをもたない8項目の特定だけをもって、被告が主張・立証責任を果たしたことにならないのは当然である。被告はさらに内部審査基準にもとづく不開示理由の当てはめを示す責任を有している。裁判長の外形的事実の特定の指示は、第一段階であり、これに終わらずさらに文書の特定を尽くすことが必要である。
(2)審理の引延ばしを謀る被告
 次回の口頭弁論の期日について、裁判長が「審理にすでに長期間を要しており、促進を図りたい」として5月を提示したのに対して、被告は「当方も審理を急ぎたい」と述べたが、日取りは被告の都合に従った6月後半になった。被告の審理促進姿勢は口先だけで、実際は引延ばしを謀っているといえよう。
(センター 黒田達郎 記)