平成13年(行ウ)第150号 行政文書不開示処分取消請求事件

原 告 特定非営利活動法人情報公開市民センター
被 告 外務大臣

答 弁 書

平成13年7月17日
東京地方裁判所民事第2部 御中

         被告指定代理人
〒100−8977  千代田区霞が関一丁日1番1号
   法務省大臣官房行政訟務課
         課  付    野 下 智 之
         法務事務官  箕 浦 裕 幸
〒100−8170  千代田区大手町一丁目3番3号
大手町合同庁舎3号館
         東京法務局訟務部行政訟務部門(送達場所)
         (川代あて)
         (電 話 03−3214−0718)
         (FAX   O3−3215−1584)
副 部 長  栗 原 壮 太
部  付    蔵 重 有 紀
訟 務 官  川 代  光

〒100−8919  千代田区霞が関二丁日2番1号
            外務省大臣官房会計課
課  長    鈴 木 敏 郎
外務事務官 小 池  稔
外務事務官 杉 浦 正 俊
外務省大臣官房総務課情報公開室
室  長    篠 原  守
外務事務官 吉 原 健 吾
外務事務官 関 口 誠 二

第1 請求の趣旨に対する答弁
1. 原告の請求を棄却する
2. 訴訟費用は原告の負担とする
との判決を求める。

第2 請求の原因に対する認否
1. 請求の原因第1について
 被告が原告に対し送付した各行政文書開示決定等通知書の原告に到達した日が平成13年6月5日であることは不知,その余は,おおむね認める。ただし,被告が上記各行政文書開示決定等通知書(甲第1号証ないし第5号証の各2)に記載した決定理由は,次のとおりの趣旨のものである(なお,それぞれの行政文書開示決定等通知書により,その文言には若干の差異がある。次に掲記した文言は,在米大使館における平成12年2月及び3月に支出された報償費に関する支出証拠,計算証明に関する計算書等の行政文書の開示請求(開示請求番号2001−00055)に係る行政文書開示決定等通知書(甲第2号証の2)に記載した決定理由によっている)。

 「報償費は,国が国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため,当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり,外務省においては,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するため使用する経費がこれに当たります。

 このような報償費の支出証拠,計算証明等の文書が開示されることにより,報償費の具体的使途に関する内容が明らかになることで,情報収集や外交交渉における相手の権利や立場に影響し,あるいは他国若しくは国際機関との間で外交儀礼上問題が生ずるおそれがあります。この結果,国の安全が害されるおそれがあり,他国政府もしくは国際機関との信頼関係を損ね,またはこれらとの国際交渉上の不利益を被るおそれがあると認められます。

 また,これらの内容が明らかになることで.相手の権利や立場に影響を与え,これらとの信頼関係を損ねる結果,その後の情報入手や外交工作が困難になると考えられます。これにより,外交に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあります。

 したがって,本件請求に係る報償費の支出証拠,計算証明書の文書は,情報公開法第5条3号及び同条第6号の情報に該当します。」

2. 請求の原因第2について
(1) 1について
 被告が,原告の各開示請求に係る請求の趣旨記載の各行政文書(以下併せて「本件各文書」という。)について,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)5条3号,6号に掲げる情報が記録されていることを理由として,これらを開示しない旨の各決定(以下併せて「本件各不開示決定」という。)をしたこと,本件各文書が原告の開示請求に係る外務省大臣官房及び在外公館における報償費の支出証拠,計算証明等の文書であることは認めるが,本件各文書に記録されている情報が会合の外形的事実にすぎないとの点は否認し,その余は争う。
(2) 2について
 本件各不開示決定の適法性と関連しない事柄又は単なる原告の個人的見解を述べるものであって,認否の限りではない。

 なお,外務省改革要綱は,平成13年6月5日ではなく,同月6日に発表されたものであるが,報償費制度の改革に関しては,
  • 報償費の支出は,外務大臣の責任で行う。(大臣決裁)
  • 平成13年度予算については,一層の効率的使用と節約に努める。
  • 平成14年度予算については,使用の実績を踏まえながら,他の予算科目への振替えも視野に入れつつ,極力減額に努める。
ことを表明するものであった。しかし,このことは,原告が主張するところの報償費の目的外使用とは何ら関係がない上,本件各不開示決定の適法性に何ら影響を与えるものでもない。
(3) 3について
 本件各処分が違法であるとの主張は争う。その余は,本件各不開示決定の適法性と関連しない事柄又は単なる原告の個人的見解を述べるものであって,認否の限りではない。

3. 請求の原因第3について
 衛藤征士郎外務副大臣(当時)が,平成13年3月23日の衆議院外務委員会において,「外務省報償費は,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するために使用されていることから,具体的な使途を公表することは行政の円滑な遂行に重大な支障を生じると考えられるため,本来公表すべき性格のものではないと考えております」と答弁したことは認める。その余は,本件各不開示決定の適法性と関連することではなく,認否の限りではない。

第3 被告の主張
 報償費とは,国が,国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため,当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり,外務省においては,これを,情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するため使用する経費に充てている。

 被告は,報償費の支出に関する文書を開示することとなれば,その使途等が公になる場合があり得ることとなるため,情報収集及び外交交渉ないし外交関係の展開についての支障が生じるから,これにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ,又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるとともに,外務省が行う外交に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあって,本件各文書は,法5条3号,6号に該当すると判断し,不開示決定を行ったものであり,その判断は合理的なものであって,違法と評価されることはない。

 おって,被告は,本件各不開示決定の適法性について詳細に主張を行う。

附 属 書 類
指定書  3通