1 |
原告は、被告が、平成16年10月25日付け被告準備書面(13)(以下「被告準備書面(13)」という。)において、本件検証申出が現行情報公開法及び民訴法のいずれも認めていないインカメラ審理を求めるものであり違法である旨主張したのに対し、甲第71号証を提出して、大阪高等裁判所で審理された別件の情報公開請求訴訟においてインカメラ審理が行われたことを立証しようとするものの ようである。
甲第71号証をみても、同訴訟が情報公開訴訟であることは必ずしも明らかではないが、以下、そのような訴訟であることを前提として意見を述べる。 |
2 |
情報公開訴訟においてインカメラ審理が認められるべきでないことは、既に被告の平成16年7月7日付け意見書で述べたとおりである。 |
3 |
もっとも、裁判実務上、このような法律上の手続によらず、当事者聞の合意の上で、他方当事者の閲覧を排して裁判所(ないし裁判官)のみが文書の見分を行うという運用がなされることがあり、「事実上のインカメラ審理」と呼ばれているようである(ジユリスト増刊・研究会新民事訴訟法−立法・解釈・運用299ページ、門口正人編集代表・民事証拠法大系第4巻各論U184ページ)。
そして、この事実上のインカメラ審理と、法律上のインカメラ審理との相違は、法律上のインカメラ審理であれば、文書の所持者の意向にかかわりなく、インカメラ審理がされるのに対し(対象文書の所持者が提示しない場合、提示命令が出される。)、「事実上のインカメラ審理」の場合は、飽くまで、文書の所持者が任意に審理対象となる文書を提示することがその前提となり、文書の所持者が任意に文書を提示しない場合には、これを行うことができない点にある。
そして、甲第71号証の取扱い事例は、両当事者の同意の下に、裁判所が他方当事者の閲覧を排した形で不開示文書を確認するなどの方法によっているものと考えられ、事実上のインカメラ審理を行ったものとみられる。
しかし、このような「事実上のインカメラ審理」は、相手方の立会を認めないなどの点において批判があるところであり(前掲・民事証拠法大系第4巻各論U184ないし186ページ参照)、たとえ当事者の同意があったとしても軽々に採用されるべきものではない。
甲第71号証の事案は、原告が主張するところの「インカメラ審理」が行われた後、同一期日において被控訴人らが訴えを取り下げていることにかんがみれば、訴えの取下げがなされることを前提に、不開示文書の所持人である当事者が、飽くまでも任意にその提示に及んだものにすぎないと思料され、例外的な事案である可能性が高い。 |
4 |
以上のとおり、たとえ、大阪高等裁判所において、「事実上のインカメラ審理」が認められた例があったとしても、このような審理方式を採用すること自体慎重であるべきであるし、しかも、同事案は本件とは事案を異にし、本件の先例となるものではない。被告が、平成16年7月7日付け被告意見書及び同年10月25日付け被告準備書面(13)において詳細に述べたとおり、本件検証申出は不適法であることは明らかであるから、速やかに却下されるべきである。 |