情報公開市民センター |
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報償費(機密費)の支出文書を外務省が不開示としたのは違法として、情報公開市民センターが処分の取消しを求めた訴訟の控訴審で、1月31日に東京高等裁判所は、東京地裁が大部分の開示を命じた判決を変更し、開示範囲を大幅に限定する判決を言い渡した。 1.文書の分類ごとの開示部分・不開示部分は次のとおりである。 1)情報収集の経費(64件) 情報公開法5条3号、6号の不開示情報に該当し、不開示 2)間接接触(日本人との会合 58件) 情報公開法5条3号、6号の不開示情報に該当せず、開示。ただし会合場所が明らかになる請求書と領収書は安全確保の観点から不開示。従って会合の目的、客側および外務省・在外公館側双方の出席者(公にする規定・慣行のない下級職員を除く)、支払日、支払額は開示。 3)直接接触(在外公館職員と任国の機関職員との会合)および本省大臣官房の会合(895件) 会合の目的、内容は情報公開法6条3号、6号の情報であり不開示。請求書と領収書は不開示。ただし支払日、支払額は不開示情報に該当せず、開示。 4)訴訟途中で外務省が部分開示をした五類型の文書(52件) 日本画等購入経費7件は開示(公にする規定・慣行のない氏名は不開示) 大規模レセプション・酒類購入経費・車両借上げ経費45件はレセプション出席者、支払先、請求書、領収書は安全確保の観点から不開示、他の情報は開示。 2.双方の主張についての判断のうち、市民センターの主張が採り入れられているのは次の事項である。 1)法5条3号(外交等情報)該当性の主張立証責任は一般的には請求者にあるが、具体的な訴訟においては外務省に該当性の主張立証責任がある。各文書について主張立証すべきである。 2)法5条6号(事務事業情報)不該当の主張立証責任は外務省側にある。 3)法5条3号、6号の該当性を、外務省は各文書について主張立証することを要する。 4)不開示決定の適否は法5条所定の不開示情報の存否によって判断すべきであり、「報償費は不開示とすべき」との外務省の主張は採用できない。 5)外務省は報償費を「公にしないことを前提とする外交事務の経費」と主張するが、判断基準が明らかでなく、判断権者が誰であるかも不明で、客観的基準になりえず、この定義は採用できない。 6)「在外公館交流諸費」(任国の機関の職員との会食の費用)の開示された文書との対比からすると、報償費の支出が「公にしないことを前提とする外交活動の経費である」との外務省の主張の通りであるとは認めがたい。 7)情報公開審査会が「不開示に該当すると認めがたい報償費支出がある」と答申した五類型の文書についてなど、外務省の報償費の取り扱いが変遷している経緯も、不開示該当性の判断に当って考慮するのが相当である。 8)わが国関係者が在外公館員と会合を持つことは自然なことで、訪問国も会合が持たれることは想定している。「間接接触」には秘匿性が存在しない。 9)齊木証人(外務省官房会計課長)の供述は、すべての文書が自ら成果をあげた事例のような会合であるとするが、合理的でない。 10)外務省は1件の文書(支出)ごとに独立した一体的な情報が記載されており部分開示の余地はないと主張するが、情報は事項ごとに有意性が認められ、部分開示を認めることが相当である。 3.市民センターの主張が採り入れられなかった項目は次のようなものである。 1)インカメラ審査を実施すべきである。(裁判所の判断:実施は相当でない。) 2)外務省の「報償費」の定義が変遷している。報償費を包括的に隠す意図である。(裁判所の判断:報償費の定義が変遷しているが、審理の対象を特定するために行ったものである。) 3)国会議員など要人への便宜供与支出を平成14年度から報償費から庁費に変更したことについて説明を怠り、この事実を秘匿してきた。 4)平成14年度から開示されるようになった要人訪問関連支出文書では、直接接触の会食の相手方の氏名を開示できない場合でも、相手方以外の情報は開示がなされている。これに準じた開示をすべきである。 5)本省大臣官房の支出分は在外公館分の説明と明らかな違いがあり、会合のテーマと相手人物の立場・国籍をあいまいにしており、相手は日本人であると推測できる。これらは間接接触に分類されるべきものである。 6)原判決が指摘した疑念は一層拡大し、外務省は主張立証を果たしていない。 |
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(鈴木祥宣 記) |