外務省報償費情報公開訴訟第15回口頭弁論・傍聴記
 第15回口頭弁論は4月28日(水)午前11時から第606号法廷で開催された。
 原告側; 高橋 羽倉 土橋 谷合の4弁護士
 被告側; 法務省、外務省情報公開室など約10名 
 傍聴者 センター相談員他

経緯
 外務省報償費の不開示に対して多くの異議申し立てがなされていたが、情報公開審査会は平成16年2月10日にその一部について答申した。(トピックス欄「外務省報償費の審査会答申は会計検査院レベル」を参照)
 外務省はこれを受けて4月20日に不開示の一部を取り消して部分開示し、センターは22日に開示文書を受領した。

口頭弁論
 外務省は4月28日付け準備書面(11)で一部開示の経過と不開示事由を主張(別掲)。
 裁判長はセンターに対して、開示された文書を証拠書類として提示し請求の趣旨を整理するとともに、開示部分、非開示部分を特定するように要求した。
 センターは、本来、外務省に開示・非開示部分の特定をして欲しいが、一応、開示文書を点検して特定する努力はやって見ると答えた。
 さらにセンターは、今回の文書で開示された絵画やワインの用途などについて質問したいことがあると述べ、次回期日までの間にセンターと外務省の間で質疑応答(求釈明)を行うこととなった。

 次回期日は7月7日(水)午前11時半、606号法廷

コメント
 外務省は情報公開審査会の答申に完全に準拠する方針のようだ。それほどまでに今回の審査会答申はあまりにも行政寄りだ。納得できない部分を幾つか述べる。

1、開示できるのは5分類だけしかないか?
 まず、報償費で開示できるのが5分類しかないという判断は国民の常識に反する。当センターが当初から主張しているように海外公館で行われている「便宜供与」が報償費からの支出部分があることは明白だが、日本からの渡航者の接待などすべての便宜供与が、国の外交の関わる機密事項などであるはずがない。外務省は他の省庁からの役人や国会議員が国民の目に触れないようにして欲しいと思っていることを「報償費」というベールに包んで隠すことをサービスだと思っているのではないか。

2、酒類販売店名の開示は国の安全に関わる?
 当センターが入手した開示文書によるとフランス大使館は2000年2月、3月にワインを約1千万円購入した。これが年度末の予算消化の買い溜めであることは明々白々で、欧州の各大使館や外務省本省にも送られるとの噂もある。仮に1本1万円としても約1千本、銘柄もバラバラのワインだが、どの銘柄が何本、どこの大使館に送られたかも分からないし、ましてどの銘柄のワイン何本がどこの国の誰に提供されたかも分かるはずもない。にも関わらず、審査会の答申によれば、フランス大使館がどこのお店でどんなワインを何本買ったかを公表すると「外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり」「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれ」「交渉上の不利益を被るおそれがある」ので「国の安全等に関わる情報」だというのである。今後、フランス大使館と取引のある酒類販売店はワイン配達車の脇に書かれた商店名も隠さなければならないことになる。あまりにも非常識ではないか。

3、ヴォーン・インデックスの作成を!
 口頭弁論では「開示部分の特定」を誰がするかに多くの時間が割かれた。かなり技術的な議論に思えたが、今後、実質的な裁判を進めるには、結局、裁判所が外務省へヴォーン・インデックスの作成を指示することから始まるのではなかろうか。審査会と裁判は別の制度であるから、この際、審査会の行政寄りをぜひ裁判所で公正な姿勢に正して欲しい。
(黒田達郎 記)