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報償費不開示取消訴訟の第17回口頭弁論は2004年9月1日、午前11時30分から第606号法廷で行われた。 原告側:高橋、羽倉、土橋、谷合の4弁護士 被告側:法務省、外務省情報公開室など8人 傍聴者:センター相談員など 原告の提出書面と陳述 情報公開市民センター側は、9月1日付で提出した意見書について、書面どおり供述することを確認した。 この内容は、原告の6月30日付の検証申出に対する被告の7月7日付の意見書での主張に反論したものである。要旨は次のようなものである。:
被告の提出書面と陳述 外務省側は、8月25日付で提出した準備書面(12)について、書面どおり供述することを確認した。内容は、原告が開示された文書を分析した6月30日付の原告準備書面(8)で提起した疑問個所(不開示の文書枚数、金額の不整合など)に対する被告の反論で、フランス大使館の大使着任パーティの開示枚数・金額に問題はないなどとしたものである。 インカメラ審理について 裁判長は、「インカメラの導入は、前例がなく大きな議論である」として、被告に対して、「反論があろうから、提出するように」と指示した。 原告側は発言を求め、「証拠隠し、情報隠しの事件ではインカメラの担保がなければ隠しおおされて終わってしまう。被告は情報公開審査会の答申を逆手にとって『審査会はインカメラで慎重に判断した結果、開示の範囲を決定したのだから、裁判所はそれを尊重すべきである』としている。アメリカ事情に詳しい学者は、アメリカの情報公開法でインカメラ審理を明記しているが日本の法律で明記していなくても裁判所はインカメラ審査を行えるとしている。裁判所は明断で判断していただきたい。」と述べた。 開示文書の特定・取下げについて 裁判長から原告側に対して、「先に開示された文書の特定・不開示取消請求取下げの作業は進んでいるか」との質問があったが、原告側は「形式的には開示部分を特定して取り下げるのは原告の責任であろうが、実質的には特定のしようがない。一つの文書の中に複数の決裁書、複数の支払が混在しており、不開示とされた頁の書類の種類や記載事項も、頁相互間の関係も読み取ることが出来ないので、原告としてはこれが限界であり、インカメラを論じなければ進められない。」と説明した。 次回期日 裁判長は被告からの反論の提出を待って、インカメラをどうするか等について詰めた検討を行う予定とした。次回の口頭弁論は10月25日(月)11時30分 606号法廷と決定された。 コメント 1.インカメラが必要 今後の進行はインカメラ検証の採否が重要な論点となる。先に情報公開審査会が本件対象文書を見分したが、全体的に「秘密を保持して……行われる情報収集活動等の内容を示す情報」であって不開示情報に該当すると判断し、その上で5類型について開示を答申した。このような判断方法は情報公開法の立場ではない。 またその5類型は会計検査院がすでに指摘したものをなぞったに過ぎない。5類型以外にも、秘密を要する情報収集・外交工作に該当しない支出、例えば議員への便宜供与、裏金プール金などが存在するのは明らかである。5類型についても審査会が一部を不開示とすべきとした判断は誤っている。 被告は「審査会が答申を見分した上で答申したのであるから裁判所は審査会の判断を尊重せよ」とする。裁判所は自らインカメラ検証によって、不開示について相当の理由があるかどうかを判断すべきである。 2.複雑な構成で読取り不能な部分開示文書 開示された52文書(総数1069文書)のうち、例えばフランス大使館の大使着任パーティの事例を見ると、被告の「反論」では、パーティ関連の二つの「決裁書」による支出を1件の支出文書としており、その一つの「決裁書」の下での領収書20枚が8頁の台紙に貼り付けられていて、そのうち金額のみ開示した領収書1頁と「4頁不開示」「3頁不開示」とだけ記載した2枚を開示したとする。開示を受けた側とすれば、20枚あると記載されているのに開示・不開示合わせて9枚しかないと思ってしまう。不開示の7頁に19枚の領収書が貼ってあるとは想像のしようもないため「まだ秘匿している文書がある」と疑うし、1枚目の用紙に記載された支出総額と、開示された1枚の領収書の額とが合わないことにも疑念を抱く。 大臣官房が購入した日本画のいくつかの事例でも、一つの支出文書の中に数点の絵画の個々またはいくつかごとについての証拠書類が入り組んで存在する上に、マスキングが多いため、全体像を把握することは到底不可能である。 3.開示文書の特定は被告側の責任 これらに見るように、1件の支出について、文書の種類も明らかにされない不開示の頁、マスキングされた頁を含めて数十枚の文書の開示を受けても、その支出文書がどのように構成されているのかさえ読み取れず、ある項目が本当に開示されたのか判断することはできない。取下げのために原告が開示部分の特定作業を行うことは不可能である。開示部分の特定は文書を保有する被告側が行うべきである。 |
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(鈴木祥宣記) |