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1 開示請求をしている情報 外務省大臣官房、在米、在仏、在中国及び在フィリピンの4大使館で、平成12年2月及び3月に支出された報償費(1069件)に関する支出証拠、計算証明に関する計算書等支出がわかる文書(使途別分類等は後記別表のとおり)。 原告の01年4月の開示請求に対して、全面不開示。 2 不開示理由 情報公開法5条3号、6号 参考 法5条3号の条文 「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」 3 主たる争点=5条3号主張立証責任について (1)原告の主張 「おそれ」のある情報であること、「おそれがあると行政機関の長が認めるについての相当の理由」の主張立証責任は被告にある(裁量権逸脱等の根拠事実の主張立証責任は原告にはない)。 (2)根拠 ア 原則公開の情報公開法の趣旨目的 イ 広範な裁量が被告にはないこと 情報公開法案に関する国会審議「情報公開法案では、要綱案及び要綱案の考え方に示されている趣旨を法律上明確に表現するために、『行政機関の長が』との規定を挿入したものであり、要綱案の内容を変更するものではない」との政府説明(第142国会衆議院内閣委員会平成10年5月15日、瀧上審議官)。 要綱案「おそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報」 情報公開法「おそれがあると『行政機関の長が』認めるに足りる相当の理由がある情報」 ウ 広範な裁量を認めることは「要綱案の考え方」に反する 考え方では、「行政機関の第1次的判断権を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうかを審理・判断することとするのが適当である。」と説明されている。 したがって、行政庁に広範な裁量を付与したのではなく、その不開示との判断に合理性があることを、行政庁において主張立証しなければならない。 エ 国会審議での政府答弁からは主張立証責任は行政機関にある 「この情報公開法の第5条3号及び第4号の規定に該当する情報であっても、まず行政機関の長は相当の理由の有無についてこの法律の趣旨に沿って適正に判断すべきであり、また、裁判所の司法審査を一切排除するものではなくて、訴訟が提起されれば、裁判所は、行政機関の長の判断が合理性を持つ判断として許容される限度のものであるかどうかを審査することになるので、行政機関の恣意的な運用を許容するものではない」(第142国会衆議院内閣委員会平成10年6月4日、瀧上審議官)。 「行政機関の第一次的判断が合理性を有する判断かどうかについては、行政機関が立証し、合理的な理由を有する限度であれば行政機関の判断が尊重されるという仕組みになっている」(第145国会参議院総務委員会平成11年3月11日、瀧上審議官)。 オ 松井茂記教授の見解 「アメリカの情報公開法のもとでの経験に照らしても、この例外事由(=外交情報)は乱用の危険性が高く、法執行機関の主張をうのみにすることは妥当ではない。裁判所は、行政機関の判断を尊重すべきではあるが、開示拒否の根拠が具体的に示されているかどうかをきちんと審査すべきである」(松井「情報公開法」263頁)。 4 行政機関の長が主張立証すべき内容と被告の対応 (1)行政手続法1条、5条、12条に基づき、外務省は、情報公開法に基づく開示決定等に関する審査基準を設けている。 (2)したがって、少なくとも、被告は、自ら定めた審査基準への適合性、すなわち、審査基準のどの基準に基づく不開示事由に該当するのかの主張立証責任がある。 (3)外務省情報公開法審査基準における「おそれ」は、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する程度の蓋然性が具体的に予想される場合に限られている。 (4)本件訴訟では、被告は、上記審査基準へのあてはめは一切主張しておらず、審査基準とは無関係な事情(ウイーンでのスパイ映画もどきの情報収集合戦の例などを引き、情報管理の必要性を強調)などを主張し、外交情報を秘匿することの必要性についての抽象的な議論に終始した。 (5)被告は、1069件の支出情報について、訴訟の最終段階において、後記別表のような使途分類ができる程度の説明しか行わなかった。 5 会計検査院の指摘および情報公開審査会の答申を受けて5類型については開示 被告は、前述の通り、原告の開示請求に対して、全面不開示処分をなし、本件訴訟においても、同様の対応をしてきたが、会計検査院の指摘と情報公開審査会の答申を受けて、いわゆる5類型の支出(大規模レセプション、酒類購入経費、在外公館長赴任の際などの贈呈品購入経費、文化啓発用の日本画購入経費、本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費)については、一部開示に転じた。 以上の経費に関する情報は、外交工作ワイン代などと称して、あたかも秘密性が高いかのような名称を付していたが、実際には、不開示事由に該当すべき「おそれ」がありえない情報であった。かかる情報まで不開示事由に該当すると主張していた被告の主張には、全く信用性がない。 6 同種の支出決裁文書である「在外公館交流諸費」はほぼ全面開示 在外の外交官等が、公にしないことを前提として、任地の各界、各層の人々と意見交換等を行った際の支出に関する、「在外公館交流諸費」と呼ばれる会食や接待等の支出決裁文書については開示している。この費目の支出に関する情報は、報償費による支出対象と同種の情報であるにもかかわらず、報償費による支出に関してだけは、不開示としている。したがって、被告の開示・不開示の対応は、外交上の機密情報だから開示しないというのではなく、「報償費に関する情報は公開しない」ということに帰結する。およそ、法5条3号の規定とは無縁の対応である。 |
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以上 |
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別表 「報償費使途新区分表」による使途分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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