平成13年(行ウ)第150号 行政文書不開示処分取消請求事件
原告 特定非営利活動法人情報公開市民センター

被告 外務大臣

準 備 書 面(1)

平成16年4月28日

東京地方裁判所民事2部A2係 御中
被告指定代理人 間   史 恵
友 利 英 昭
吉 田 尚 弘
山 本 美 雪
高 林 正 浩
井 原 純 一
相 沢 英 明
西 海 茂 洋
佐 野 豪 俊
岡 島 洋 之
片 山 太 一

 被告は、本件不開示決定を一部取り消したので、本準備書面において、本件訴えの一部につき本案前の答弁をするとともに、取消しに至る経緯を説明した上で、不開示事由についての主張を整理する。

第1 本案前の答弁及びその理由
 1 本案前の答弁
(1) 本件訴えのうち、別紙部分開示目録記載に係る部分の取消しを求める訴えを却下する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
 2 本案前の答弁の理由
 被告は、報償費関連文書の不開示決定に関する情報公開審査会の答申(本件開示請求とは別の開示請求に関するもの)を受け、不開示決定を一部変更し、部分開示することとしたため、平成16年4月20日付けで、本件不開示決定についても、別紙部分開示目録記載に係る部分を変更することとした。これにより、当該部分に係る訴えは、訴えの利益を欠くに至ったものである。
 その詳細は以下のとおりである。
(1) 報償費関連文書についての別件開示請求と不開示決定報償費関連文書については、情報公開法に基づく開示請求が多数なされていたところ、外務大臣は、このうち原告以外の者に係る開示請求について、
@ 「平成8年4月から同13年3月までの外務省本省及び在外公館の報償費の支出決定及び支払手続のために作成された文書等」についてされた合計20件の開示請求につき、平成13年6月1日付けをもって不開示決定をし、
A 「外務省本省の報償費の平成12年3月分及び同13年1月分の全支出に関する文書」についてなされた合計2件の開示請求につき、同日付けをもって不開示決定をし、さらに、
B 「在フランス日本国大使館、在イタリア日本国大使館及び在ホノルル日本国総領事館の報償費(機密費)の平成12年度の支出に関する一切の資料」についてされた合計20件の開示請求につき、平成14年4月22日付けをもって不開示決定をした。
(2) 異議申立てと情報公開審査会への諮問
 これらの不開示決定に対し、いずれも行政不服審査法に基づく異議申立てがされたため、外務大臣は、情報公開法18条に基づき、情報公開審査会に諮問した。
(3) 答申
 情報公開審査会は、平成16年2月10日、上記諮問を受けて、上記@ないしBの不開示決定について、3件の答申(平成15年度(行情)答申第545号及び第546号〔乙第17号証の1〕、同第547号から第566号〔乙第17号証の2〕、B同第567号から第569号〔乙第17号証の3〕)をした(以下、上記各答申を総称して、「本件各答申」といい、各別には、順次「本件答申1」、「本件答申2」、「本件答申3」という。)。
 本件各答申は、原告が直接の当事者として提起した異議申立てに関するものではないものの、本件訴訟において取り消しを求められている処分の対象文書についても、本件におけると同様の趣旨の請求、決定、異議申立てに対する判断を示したものである。すなわち、本件訴訟の対象となっている平成12年2月及び3月に大臣官房、在米国、在フランス、在中国及び在フィリピン各大使館で支出された報償費の証拠書類については、本件答申2において、判断が示されている。また、本件答申1は、大臣官房分についての判断を示しており、本件答申3は、在外公館のうち、在フランス及び在イタリア各大使館及び在ホノルル総領事館における報償費支出に関する文書についての判断を示している。なお、平成16年3月9日、平成12年3月分の外務省在外公館報償費の支出のすべてが分かる文書についての答申がなされたが(平成15年度(行情)答申第672号。乙第17号証の4、以下「本件答申4」という。)、その内容は、本件各答申と同様である。
(4) 本件各答申の内容
 本件各答申の内容は、いずれも基本的には同一のもので、概ね以下のとおりである。なお、本件不開示決定の対象文書である「決裁書」(被告準備書面(9)5、6ページ参照)は、後記(6)イのとおり、本件各答申において、支出計算書の証拠書類として示されているものである。
全部不開示とすべき文書
 報償費に関する支出計算書の証拠書額のうち、@大規模レセプション、A酒類購入経費、B在外公館長赴任の際などの贈呈品購入経費、C文化啓発用の日本画等購入経費、D本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費の五つの類型にあたるもの(以下、これらを「五類型」という。)を除き、報償費の支出に係る文書は、秘密を保持して機動的に運用されている外務省報償費の使途に閑し個別具体的かつ詳細な記載がなされており、これらが容易に区分し難い状態で随所に記載されていることが認められ、これらの記載は、外務省報償費を、秘密を保持して機動的に運用することによって行われる情報収集活動等(本件各答申では、情報収集及び諸外国等との外交交渉又は外交関係を有利に展開するための活動と定義されている。)の個別具体的な内容を示す情報であるから、これを公にすることは、情報収集活動等を困難にし、外交事務の円滑かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては、国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ、法5条6号柱書き及び3号に該当するものと認められる(乙第17号証の2の第5の3(2)〔17ペ←ジ〕)。
一部不開示とすべき文書
 報償費に関する支出計算書の証拠書類のうち、「五類型」に係る文書については、以下のとおり、報償費の機動性及び秘密保持という観点から見て、情報公開法5条3号及び6号に該当すると認め難いと考えられるものであり、部分開示が可能であるものの、これら「五類型」についても、全面開示が相当との判断ではなく、法5条3号及び6号に該当する情報については不開示とするのが妥当である(乙第17号証の2の第5の3(3)イ(イ)〔20ないし24ページ〕)。
(ア) 大規模レセプション
a  開示すべき部分
 定期的に又は慣例として開催される天皇誕生日祝賀レセプション、自衛隊記念日レセプション及び我が国の在外公館長の離着任レセプションについては、当該レセプションの件名、開催の日付、主催者、場所、経費の総額に係る情報については、これを公にしたとしても、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、法5条6号及び3号に該当するとは認められないから、開示すべきである。
b  不開示とすべき部分
 調達先、調達の具体的内容及び招待者氏名・肩書に係る情報については、当該レセプションを安全かつ効果的に開催する上で、秘密を保持することが必要と認められ、これを公にすると、当該レセプションの開催に関連して、安全上及び外交儀礼上の支障や問題を引き起こす可能性があると認められるので、情報収集活動等を困難にし、外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ、法5条6号柱書き及び3号に該当する。
(イ) 酒額購入経費
a  開示すべき部分
 酒類購入費に関する記述のうち、件名、日付、経費の総額については、これを公にしたとしても、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、法5条6号及び3号に該当しないから、開示すべきである。
b  不開示とすべき部分
 外務省及び各在外公館において、酒頼を備えておく趣旨は、外交活動の一環である設宴や会食において、相手方を随時しかるべく接遇し、もって親交を深め情報収集活動等を効果的かつ円滑に行うことにあり、その際、外交儀礼にもとらないようにすることは当該設宴等ひいては情報収集活動等の成否を左右する要素である。また、酒類については、銘柄により優劣についての評価が明確であることなどを考慮すると、外務省が保有する酒類の詳細をつまびらかにすることは、外交儀礼上の支障などを引き起こす可能性がある。
 こうした点を考慮すると、酒類の調達先、購入本数、購入銘柄及び銘柄別金額については、外務省及び各在外公館が保有する酒類の詳細についてつまびらかになる情報であるので、これを公にすることにより、情報収集活動等を困難にし、外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ法5条6号柱書き及び3号に該当する。
(ウ) 在外公館長赴任の際などの贈呈品購入経費
a  開示すべき部分
 贈呈品の購入経費に関する記述のうち、件名、日付、支出要旨・説明、経費の総額については、その記載内容から対象国名、贈呈対象者及び贈呈品の具体的品目などに係る情報を除けば、これを公にしたとしても・外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、その記載内容から対象国名、贈呈対象者及び贈呈品の具体的品目などに係る情報を除いた当該情報については、法5条6号及び3号に該当するとは認められないから、開示すべきである。
b  不開示とすべき部分
 在外公館長が赴任する際や我が国政府要人が外国を訪問する際に、本邦において購入する贈呈品に係るものについては、贈呈対象者、購入贈呈品の具体的内訳、贈呈品ごとの金額・数量、調達先に係る情報及び対象国名を推測させ得る情報を公にした場合、当該国に対する我が国の評価や位置付けなどが容易に推定され外交儀礼上の支障を生じ、我が国と当該国との関係に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるので、情報収集活動等を困難にし、外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ法5条6号柱書き及び3号に該当する。
(エ) 文化啓発用の日本画等購入経費
 在外公館において、我が国の文化を啓発する等の目的で使用される日本画等の絵画を本邦において購入する経費に係るものについては、百貨店などの店舗から購入した場合とそれ以外の場合がある。
a  店舗から購入した日本画等について
 日本画等を百貨店などの店舗から購入した場合には、当該日本画等の販売価格は既に公になっているものと認められるので、件名、支出要旨・説明、経費の総額、調達先及び購入した品目ごとの金額等すベての情報を公にしたとしても、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、法5条6号及び3号に該当しないため、開示すべきである。
b  制作者から直接購入した日本画等について
(a) 開示すべき部分
 件名、日付、支出要旨・説明、経費の総額、調達の数量については、その記載内容から品目ごとの金額、調達先及び購入に至った経緯などに係る情報を除けば、これを公にしたとしても、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、その記載内容から品目ごとの金額、調達先及び購入に至った経緯などに係る情報を除いた当該情報については、法5条6号及び3号に該当するとは認められないから、開示すべきである。
(b) 不開示とすべき部分
 芸術家など特定の個人の紹介などを通して画家等制作者から直接購入する場合などにおいては、購入した品目ごとの金額、調達先及び購入に至った経緯など当該制作者及び紹介者に係る情報及びそれらが類推される情報については、これを公にすることにより、画家等制作者に対する評価に影響を及ぼすばかりでなく、紹介者と諮問庁(外務大臣)との関係についても影響を及ぼすおそれがあると認められ将来的に同様の方法での調達が困難になり、我が国の文化啓発のための資料の調達の方途が画一化されることになり、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるので、法5条6号に該当する。
(オ) 本邦関係者が外国訪問した際の車両の借り上げ等の事務経費
a  開示すべき部分
 我が国の政財界の要人等、本邦関係者が諸外国を訪問する際に、その接遇に遺漏なきを期するため、当該国等にある我が国在外公館が同国の業者から車両を借り上げ、また、当該本邦関係者の宿泊するホテルなどに事務連絡室などを設けることがあるが、このような場合の件名(法5条1号に該当する個人に関する情報は除く。)、日付、経費の総額に係るものは、これを公にしたとしても、外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、法5条6号及び3号に該当するとは認められないから、開示すべきである。
b  不開示とすべき部分
 車両の調達先や車種など及び事務連絡室の所在等の具体的内容に係る情報については、これらを公にした場合、今後、本邦関係者が当該国を訪問する際に、突発的な事態を未然に防止し、その安全を確保することが困難になり、仮に、そのような事態が起きた場合には、我が国と当該国との関係に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるので、これを公にすることにより、情報収集活動等を困難にし、外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ、法5条6号柱書き及び3号に該当する。
(5) 不開示決定の一部取消・変更
 被告は、本件各答申を踏まえ再検討した結果、本件答申において部分開示が適当であると判断された対象文書については、本件各答申の内容を尊重し、原決定を順次見直して変更していくこととした。
 しかしながら、膨大な数にのぼるすべての決定対象文書を再度検討し直し、原決定を変更すべきものを特定した上で、当該決定を変更し、開示の実施を改めて通知するといった一連の作業を短期間に一括して行うことは非常に困難であることから、被告としては、本件訴訟の対象となっている対象文書に関する決定の見直しを優先的に行うこととし、今般、原決定の変更を異議申立人にも通知すると同時に、原告に対しても、平成16年4月20日付けで、別紙部分開示目録記載に係る文書を開示する旨変更決定をし、原告に対して通知した(乙第18号証の1ないし5)。
 なお、被告は、本件対象文書と同種の文書が対象となっている本件答申4において、特定の個人を識別できる記述のうち、公表慣行のない記述については、法5条1号に該当するとしていること(乙第17号証の4、9ページ)にかんがみ、上記変更決定においても、特定の個人を識別できる記述のうち、公表慣行のない記述については、法5条1号に基づき開示しないこととした。
(6) 決定を変更した対象文書の特定とこれらの文書上の記載事項
被告準備書面(7)別表との対応関係
 本件訴訟の対象となっている1069通のうち、本件各答申が部分的に開示を求めている経費にかかるものは52通であり、これらを被告準備書面(7)別表2で示した通番を元に特定すれば、以下のとおりとなる。
(ア) 大臣官房分
18,36,221,255,397,458,521,538,614,637,716,879,887,987,1028
(イ) 在米大使館分
212,452,770,911
(ウ) 在仏大使館分
48,177,225,332,387,480,499,661,719,731,734,750,766,850,940,961,1003,1019
(エ) 在中国大使館分
195,232,297,345,394,451,653,831
(オ) 在比大使館分
187,209,275,810,815,822,906
個々の対象文書の内訳
 本件訴訟の対象文書は、平成12年2月及び3月に大臣官房、在米大使館、在仏大使館、在中国大使館、在比大使館で支出された報償費の証拠書類であり、被告は、これを報償費の使用の意思決定過程で作成された「決裁書」であると特定しているが、この「決裁書」は、本件各答申において、支出計算書の証拠書類として示されているものである。すなわち、大臣官房での支出に関する文書は、決裁書とそれに添付されている見積書、契約書・検査調書、請求書や領収書(これらは支払証拠台紙に貼付されている)、支出依頼書であり(ただし、案件により添付されているものは異同があ
る。)、在米、在仏、在中国及び在比各大使館での支出に関する文書は、決裁書、請求書及び領収書の全部又はいずれかである(被告準備書面(ウ)5、6ページ及び乙第17号証の2第5の1(1)〔12、13ページ〕参照)。
記載事項の特定
 上記答申において開示すべきとされた情報若しくは不開示が妥当とされた情報が、部分開示した文書の何処に記載されているかについて簡単に補足する。なお、括弧書きの部分は、被告準備書面(7)添付の別表1の「外形的事実等」の各項目に相当するものである。
(ア) 大規模レセプション開催経費
 件名、日付は決裁書鑑(ただし、外務本省分のみ)や決裁書本文に示される。主催者、開催場所(目的・内容に相当する。)、経費総額(支払予定額、支払先に相当する。)については決裁書本文に示されるほか、そのほとんどは支出依頼書や支払証拠台紙にも記載される。
 不開示が妥当であるとされた情報に関しては、招待者名・肩書(目的・内容に含まれる。)について、一部が決裁書本文に記載されている場合もあるが、別紙の形で添付されていることが多い。また、調達先、調達の具体的内容(支払予定先、支払予定額)については、請求書や領収書に詳細に記載されていることが多い。
(イ) 酒穎購入経費
 件名、日付は決裁書鑑(外務本省分のみ)や決裁書本文、支払証拠台紙に示され、総額(支払予定額、支払額)は決裁書本文、支出依頼書、支払証拠台紙に示される。
 不開示が妥当とされた調達先、購入本数(支払予定先、支払先、支払予定額、支払額)、購入銘柄、銘柄別金額(支払予定額)は請求書や領収書に詳細に記載されることが多いが、一部は決裁書本文にも記載が見られることがある。
(ウ) 在外公館長赴任の際などの贈呈品購入経費
 本件訴訟の対象となっている文書については、この類型に該当する支出に関する文書は存在しない。
(エ) 文化啓発用の日本画等購入経費
 絵画等を購入する場合、件名、日付、支出要旨・説明(目的・内容)、経費総額、調達の数量(支払予定額)等は決裁書鑑、決裁書本文、支出依頼書、場合によっては契約書ないし請書(支払予定先、支払先)に記載されている。ただし、不開示が妥当とされた品目毎の金額、調達先は、支出依頼書や請求書、契約書ないし請書にも記載されており、同様に不開示が妥当とされた購入に至った経緯についても決裁書本文に記載が見られる。
(オ) 本邦関係者が外国訪問した際の車両の借上げ等事務経費
 件名、日付(目的・内容)、経費総額(支払予定額、支払額)については、支払証拠台紙、請求書や領収書に記載が見られるが、不開示が妥当とされた調達先や調達の内訳についてもこれらに記載されている。
(7) 小 括
 以上のとおり、本件訴えのうち、別紙部分開示目録記載に係る文書の取消しを求める部分は訴えの利益を欠くに至ったものであるから、却下されるべきである。
第2 不開示事由該当性について
 被告は、本件各答申の内容及び情報公開法の精神を尊重して、本件訴訟の対象文書のうち「五類型」に係る文書については、答申の内容に沿って部分開示を行った。
 しかし、それ以外の文書は、従前から主張するとおり、これを公にすると、秘密を保持して機動的に運用されている報償費の個別具体的な使途が明らかになるものであり、情報収集活動等を困難にし、外交事務の適正かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、ひいては他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれがあると判断されるものであり、そのことは、実際に文書を見分した情報公開審査会の答申においても、明確に認められているとおりである。すなわち、前記第1の2(4)記載のとおり、本件各答申において、「五類型」以外に係る文書については、外務省報償費の使途に閑し個別具体的かつ詳細な記載が、容易に区分し難い状態で随所に記載され、外務省報償費を運用して行われる情報収集活動等の個別具体的な内容を示す情報であって法5条6号柱書及び3号に該当するとされており、「五類型」に係る文書についても、部分的開示相当を指摘した部分はあるものの、その余の部分について法5条6号柱書若しくは3号に該当するとされている。
 また、本件各答申は、報償費の執行について杜撰で乱暴なやり方が横行しているなどとして裁量的部分開示を行うべきであるとした異議申立人の主張を退け、それを理由とした文書の開示について明確に否定しているものである。
 したがって、今回部分開示を行った以外の文書は、従前から主張するとおり、全部不開示とすべきものである。
 なお、今般部分開示の決定を行った「五類型」に係る文書については、被告において、本件各答申を尊重し、その趣旨に従って、部分的に開示することにしたものであるが、これは、「五類型」に係る文書について、報償費が本来有しているはずの機動性と秘密保持という性格が全て失われたとするものではなく、「五類型」に関する報償費支出が、目的外使用などに当たるものではない。
 すなわち、報償費とは、これまで被告が再三主張してきたように、国が、国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため、当面の任務と状況に応じ、その都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり、予算費目の性格として使途を限定せず、個別の事案ごとに使用方法が決定されるものであるが(乙第1号証)、本件各答申は、その中で、ある程度定型化した費目につき、法5条3号及び6号に該当すると認め難いものがあるとして、「五類型」に係る文書について部分的開示の指摘をしたにとどまり、前記のとおり、その余の部分については法5条6号柱書き及び3号に該当し不開示とすべきものとしている。
 したがって、本件各答申は、「五類型」に関する報償費支出が目的外使用であるなどという原告の主張を裏付けるものでは全くない。
第3 結 語
 以上のとおり、被告は、本件各答申に従って本件行政文書のうちの「五類型」に係るものについて一部を開示したが、その余の部分及び本件行政文書のうち五類型」以外のものについては、法5条3号及び6号に該当するから、不開示とすべきものである。


別 紙

部 分 開 示 目 録
 対象となる行政文書(被告準備書面(7)別表2で示した通番)
18,36,48,
177,187,195
209,212,221,225,232,255,275,297
332,345,387,394,397
451,452,458,480,499
521,538
614,637,653,661
716,719,731,734,750,766,770
810,815,822,831,850,879,887
906,911,940,961,987
1003,1019,1028
 開示する部分
(1) 大規模レセプションに係るもの
件名、開催の日付、主催者、場所、経費の総額を記載した部分
(2) 酒類購入経費
件名、日付、経費の総額を記載した部分
(3) 文化啓発用の日本画等購入経費
 百貨店などの店舗から購入した場合
購入に係る記載部分のすべて
 上記以外の場合
件名、日付、支出要旨・説明、経費の総額、調達の数量を記載した部分(ただし、当該記載内容から品目ごとの金額、調達先及び購入に至った経緯などに係る情報を除く。)
(4) 本邦関係者が外国訪問した際の車両の借り上げ等の事務経費に係るもの
件名(公表慣行がない個人の氏名等は除く)、日付、経費の総額を記載した部分