|
|
司法制度改革推進本部が導入を検討している弁護士費用の敗訴者負担制度は、市民による法の実現と法の創造を阻むものであり、強く反対します。 私たちがこれまで各地で取り組んできた情報公開訴訟は、地方自治体の行政の透明性やむだの削減に大きな成果を挙げてきました。そして、住民訴訟は行政の腐敗や談合の抑制に着実な効果を挙げつつあります。 しかし、私たちが全国の裁判所に提起した大企業を被告とする談合住民訴訟は、「裁判の入口問題」で当初11連敗を帰しました。あきらめなかった住民の訴訟活動が奏功し、02年7月、最高裁判所に私たちの常識が通じて逆転の勝訴判決を得ましたが、それを得るのに6年の歳月を要しました。私たちと大企業や行政との間の組織力・資金力の差、証拠隠しといってよい企業の行動や行政の非協力の前に、きわめて高いはずの勝訴の見込みも、消えかかる時期すらありました。現代訴訟とか政策形成訴訟と呼ばれる訴訟には、常に理不尽な抵抗が立ちふさがること、そして多くの困難を乗り越えなければならないことを例証しました。個人で立ち上がった同種事件の原告は、下級審での敗訴判決に直面し、上訴を断念せざるを得ませんでした。 この上に、弁護士費用の敗訴者負担制度が導入された場合には、被告企業や行政側の弁護士費用を負担する結果をおそれ、裁判の提起そのものをあきらめざるを得なくなります。その影響は、私たちの活動だけでなく、公害訴訟、消費者訴訟、労働訴訟、医療訴訟、株主代表訴訟、各種の行政訴訟に及びます。日本の裁判は寒々しいものとなり、その時代時代に必要とする被害者の救済、市民による法の実現と法の発展的な創造が止まることは明らかです。同制度の導入は、日本国憲法第32条の定める「裁判を起こす権利・裁判を受ける権利」を著しく制約するものといわざるを得ません。 司法制度改革推進本部が推進しようとしている今次の司法制度改革の目的は、司法の機能を強化して法(正義)の支配を社会の隅々にまで拡げることをめざすとされていますが、弁護士費用の敗訴者負担制度の導入は、これに真っ向から反するものであることは明白です。 以上の理由から、私たちは政府並びに司法制度改革推進本部に対して、弁護士費用敗訴者負担制度を絶対に導入しないことを強く要請するものです。 |
|
2002年12月1日 全国市民オンブズマン連絡会議 |