東大芦川ダム及び南摩ダムの建設中止を求める決議


 現在栃木県内では、栃木県が事業主体の「東大芦川ダム」(総貯水容量 983万t・事業費 310億円)と水資源開発公団が事業主体の「南摩ダム」(総貯水容量5100万t・事業費1850億円)の2つの大規模ダムの建設計画が進行しつつある。

1.東大芦川ダムはいらない
 大芦川の流域には約 100年前に足尾銅山操業のために上流域の森林が乱伐された時期以外に大きな水害はない。また、県は治水効果を過大に評価している。
 水道用水の確保についても、過大で非現実的な水需要予測に基づいているものと言わなければならない。鹿沼市は現在大芦川と黒川の伏流水を水道水源としており、鹿沼市の水は不足しているわけではない。

2.南摩ダムもいらない
 南摩ダムは首都圏の水需要に応じるため構想された思川開発事業の中心をなすものであったが、水が余り気味の東京都が同事業に参加しないことを決めた時点で、同事業の目的は既に失われていた。また、1999年11月に決定された同事業の実施方針によると、栃木県に配分される水道用水は毎秒2.67tとされていたが、2001年 5月に栃木県がまとめた水需要調査では、必要とされた水道用水は毎秒1.04tしかなく、同事業の利水目的は根拠を失っている。
 そればかりか、過去の流量データを参考に試算すると、大谷川・行川から取水をしない場合には貯水率5%の日が4割にも達するとの指摘もあり、利水目的の実現性の観点からも、同ダム計画には重大な疑問がある。治水の面についても、南摩川は小河川で大きな水害の経験もなく、集水域が 12.4km2と狭いので洪水防止の効果は極めて少ない。

3.ダム開発の時代は終わった
 東大芦川ダム及び南摩ダムの各建設予定地域は、ともに植物の南限・北限の混生帯に位置し、またクマタカやオオタカが大空を舞い、純血のニッコウイワナが渓流に潜む豊かな生態系が保全された地域であり、この貴重な自然を破壊せずに子孫に継承することが私たちの世代の責務である。
 ダム開発の時代は終わったとして、ダムに頼る治水・利水から撤退しつつあるのが世界の趨勢である。日本においても、河川審議会は2000年12月19日の「流域での対応を含む効果的な治水の在り方について」の中間答申において、川はあふれることを前提にした治水対策を提唱するに至っている。もはや両ダム建設計画を進める理由はない。

4.結論
 私たちは、栃木県に対しては東大芦川ダムの建設計画の、国土交通省及び水資源開発公団に対しては南摩ダムの建設計画の、即時中止を求める。
以上のとおり決議する。

2002年9月15日

第9回全国市民オンブズマン栃木大会