外務省の移送申立の棄却を求める決議



(決議の趣旨)
 情報公開法が、地方の国民の出訴と訴訟活動の便宜を図るべく地方管轄を設けた趣旨を尊重し、行政機関の都合を偏重する外務省の移送申立に関する許可抗告は棄却されるべきである。

(決議の理由)
 仙台市民オンブズマンが原告となって仙台地裁に提起した情報公開訴訟において、被告の外務省は、非公開処分の取消を求める裁判の原則的管轄地は行政機関所在地、即ち東京地裁であると主張し、同種・同一・類似文書に関する取消訴訟が複数の裁判所に係属した場合は、東京地裁に集約する為に移送すべきであると主張し、一審・二審で申立が棄却されたにもかかわらず、最高裁に許可抗告をしている。
 しかし、地方に住む国民は、東京地裁で訴訟活動を行う為の様々の負担に耐えることはできない。移送を必要とする特段の理由がないのに、複数の裁判所に係属したという理由で東京地裁に移送されるようでは、情報公開請求権は画餅に帰し、公正で、透明性が確保された民主的な行政と、統治過程における国民の適切な決定や選択の確保は困難なものとなる。
 主権が国民にある我が国では、行政機関は、国民の共通の利益を図る為、国民が編成したものであり、その諸活動は国民に説明され、国民の的確な理解と批判のもとに、公正で民主的に遂行されるべきである。
 また、国民が、自らが統治するという憲法上の権限を行使するためには、国民は、統治過程に関連するあらゆる争点を判断するに相応しい素材の一切に接することができなければならない。接近が妨げられる程度に応じ、国民の決定は社会全体の観点から見て不完全なものとなり、その為に生ずる損失は国民自身が被るからである。それ故、行政機関保有の情報は、国民全体の利益を損ねる場合を除き、広く国民に公開されるべきものであり、行政文書の公開を求める権利は、国民固有の権利である。
 情報公開法の制定過程では、この権利の実効性を確保する見地から、司法救済の重要性が明確に意識され、国民世論の強い要求によって、高裁所在地の地裁8ヵ所が管轄裁判所とされたのである。
 外務省の移送要求は、全国8地裁を管轄裁判所とした立法趣旨とは全く相容れないものである。最高裁判所は、情報公開請求権の憲法上の意義を明らかにし、外務省の許可抗告申立を棄却すべきである。
 以上のとおり決議する。

2002年9月15日 第9回全国市民オンブズマン栃木大会