第9回全国市民オンブズマン栃木大会

国レベルでの住民訴訟の創設を求める決議

 外務省における機密費詐取・不正使用事件、北方支援事業における公共入札談合事件をはじめとして、国あるいは特殊法人などにおける公金支出、契約、補助金などをめぐる不正事件が次々と明らかになっている。
 これらの不正事件によって莫大な被害、損害を受けている被害者は、国、そして主権者である市民である。
 ところが、これらの不正事件に対して、国は、市民が受けた被害、損害を回復するために不正行為を行った議員、官僚、業者などに対して損害賠償などの措置、手続きを取らず、被害、損害が放置されている事例が少なくない。また、このような不正事件に対する会計検査院による検査もきわめて不十分であることが指摘されてきた。そのため、市民のための行政改革は遅々として進まず、不正が繰り返されてきたのである。

 国と同じく、全国の自治体においても、官官接待、公共事業談合、裏金、カラ出張など多くの不正が明らかとされてきた。これに対して、全国の市民オンブズマンをはじめとする市民が、情報公開制度、そして住民監査請求、住民訴訟制度を活用して、自治体、住民の受けた被害、損害を回復し、あるいは防止する活動を行ってきた。その結果、不正行為による自治体の被害、損害が回復されるだけでなく、同じような不正行為が繰り返されないための対策が自治体において真剣に検討され、新たな不正、被害を防止すること、自治体行政の改革に、住民訴訟制度は、きわめて大きな役割を果たしてきたのである。

  ところが、住民訴訟制度は、自治体についてのみ認められ、国については、住民訴訟制度にあたる制度は認められていない。

  現在、司法制度改革の検討が進められているが、行政裁判制度についても、司法制度改革審議会は、「司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で行政訴訟制度を見直すことが不可欠である」として、行政訴訟制度の改革を求めている(司法制度改革審議会最終意見書・平成3年6月12日)。そして、政府の司法制度改革推進本部・行政訴訟検討会においても、国レベルでの住民訴訟制度の創設について検討がなされている。

 国レベルでの住民訴訟制度がないため、市民の監視が及ばない国、特殊法人などでは、改革は進まず、不正事件が繰り返され、国の財政は破綻の危機に瀕する状態に陥ってしまった。国、特殊法人などについても、住民訴訟制度と同じように、市民が主権者として、その財政における不正、無駄を監視し、被害、損害を回復、防止するための制度を作る必要があることは明らかである。
 市民のための行政、不正のない行政を実現するため、私たちは、国レベルでの住民訴訟制度の創設を強く求めることを訴え、ここに決議する。