低価格入札でも施工に問題なし
直轄工事は8千億円節減可能
−国土交通省 03年度「低入札価格調査」の分析−


 国土交通省が昨年度(2003年度)に直轄で実施した公共工事のうち、低価格で入札された478件の全件を情報公開市民センターが分析した結果、平均落札額は設定された予定価格より約3割低いことが分かった。
 国土交通省の8つの地方整備局と北海道開発局が実施する直轄工事の入札のうち、低入札価格であるとして調査を行った結果の一覧表が、港湾空港関係を除いて(=旧建設省分について)昨年度分から各局のホームページに掲載されるようになった。当センターの分析はこれを集計して行ったものである。

 センターが分析した結果、判明した主な事項は次のとおり。
1.  件数 03年度に調査が行われた低価格入札の全件数は478件である。整備局別では、最も件数の多いかったのが近畿地方整備局で126件(構成比26.4%)、次が関東地方整備局で93件(19.5%)である。(表1参照)
2.  平均落札率と落札率の分布 予定価格に対する落札価格の率(=落札率)は、全478件の単純平均で70.3%(金額で加重した平均では72.0%)である。局別で平均落札率が最も低いのは近畿地方整備局で65.9%である。(表1参照)
5%刻みの落札率でグループ化すると、件数がもっとも多いのが70%〜74%台で132件、75%〜79%台が125件で、合わせると70%台が257件で全数の53.8%を占める。次いで65%〜69%台が77件ある。(分布状況は表2図1参照)
3.  低落札率の工事 落札率が29.9%、33.0%、35.7%の入札があった。また40%台の入札が10件、50%台の入札が47件あった(表2参照)。落札率が最も低い工事10件を表4に示した。
4.  失格業者の有無 各局の一覧表に掲載された調査案件の中で、最低価格の入札業者が失格となったのものは1件もなく、すべてが調査の結果、工事履行に問題はないなどと判定され落札している(注1)。
5.  高額の入札工事 高額の低価格入札工事で最大のものは予定価格56.7億円、落札価格41.2億円(落札率72.7%)の四国地方整備局の高松合同A棟建築工事(入札業者は大成・西松・安藤特定JV)である。次は予定価格13.6億円、落札価格11.2億円(落札率82.1%)の近畿地方整備局の那智勝浦道路清水谷高架橋工事(入札業者は三井住友建設)である。

情報公開市民センターの見解

 当センターは今回の分析で次のことが明らかになったと考えている。
1.  競争が行われれば工事の質を落とさず落札率を大幅に低下できる。
 国交省の直轄工事の全件についての平均落札率は95.3%(注2)であり、落札率が高止まりしていることは、談合が広く行われていることを示している。談合を無くすことによって工事契約金額を70%から85%に削減できることが、入札制度の改革を進めているいくつもの自治体の実績によって明らかになっている。今回の分析でも、談合がなく正常な受注競争が行われれば落札率が大幅に低下することが実証されたといえる。
 落札率が低下しても工事の質を低下させずに施工できることが、失格業者がなかったことによって示されたが、これは昨年6月に宮城県の入札の落札率と工事成績点数の関係を調査して、落札率の低下と工事の質の低下とは相関性がないことが明らかになったこと(北海道・東北ブロック オンブズネットのフォーラムで公表)とも合致している。
2.  国交省の予定価格は高く設定されすぎている。
 予定価格を積算・設定する基準を根本的に改めるべきである。
3.  談合をなくせば、国交省の直轄工事を8千億円節減することができた。
 国交省の2003年度の事業予算額は約10兆円であり、そのうち補助事業を除く直轄工事予算額は約3.2兆円である(注3)。直轄工事だけに限っても、談合がなければ低価格入札の平均落札率70.3%にまで、契約金額が25ポイント(全直轄工事の落札率95.3%マイナス70.3%)低減され8千億円削減できたはずである。

添付資料
 表1 直轄工事低価格入札調査の集計(地方整備局別)
     (件数・予定価格合計・落札価格合計・平均落札率)
 表2 落札率の分布(地方整備局別)
 表3 落札率の分布(予定価格帯別)
 図1 落札率別 件数分布
 表4 低落札率入札10傑

 各局の契約課に電話問合せで確認。
 国交省の外郭団体「建設産業情報センター」の統計による。03年度分は未発表。
 国交省のホームページによれば、平成15年度予算の事業費配分額は10兆6,548億円であり、うち補助事業を除く直轄事業配分額は3兆2,259億円である。