非公開の動機は「見せたくない」 |
@対象「公文書」に該当しないか、A非公開事由のいずれかに該当するか、B存否応答拒否の場合に該当する(存否応答拒否規定のある場合)かの、いずれかでないと、公開拒否はできない。
ところが現実は、「見せたくないものは見せない」「聞かせたくないものは聞かせない」。これが情報公開請求に対する非公開処分の動機のほとんどである。だから、@ABのあてはめをまともにやっていない。そのことは非公開決定通知書の記載からはっきり読み取れる。今回紹介する事件もその典型だ。
|
1 事 案 |
2001年1月9日、町議会議長に対して情報公開請求 |
|
2000年12月15日の町議会定例会における議員の一般質問とこれに対する町長答弁の録音テープの「写しの交付」を請求 |
2001年1月22日、非公開決定通知書
非公開の理由:「請求のあった録音テープにつきましては、会議録作成の補助手段として使うもので、会議の経過を公的に記録していいるのは会議録である。したがって、会議録の閲覧または写しの交付によって目的を達することができる。」 |
同年2月14日、異議申立 |
|
※処分を知った日の翌日から計算して60日以内に異議申立できる。
異議申立をしないで提訴することもできる。
異議申立と並行して提訴することもできる。 |
同年3月27日、提訴 |
|
※処分・裁決を知った日の翌日から計算して三ヶ月以内に提訴しなければならない(行政事件訴訟法14条1項)。
しかし、異議申立中に提訴することは三ヶ月後であっても可能。審査会の進行が極端に遅いときは提訴して判決をもらった方が早いということがある。
|
2 論 点 |
@議会が「実施機関」になっているか ⇒ 本件条例ではなっている(条例2条1項)
A録音テープが「公文書」に含まれるか ⇒ 本件条例では含む(条例2条2項)
B理由の記載方法として根拠条文が書いてないことは問題ではないのか ⇒ 違法
情報公開条例上の根拠条文を示さなくてよいということになると、勝手な非公開処分ができることになってしまい、情報公開が恣意的、形骸化してしまう。
C条例2条2項は、録音テープが「公文書」になるには「決裁又は供覧の手続が終了し、実施機関が管理しているもの」であることが必要だとしている。録音テープにおいて「決裁又は供覧の手続が終了し」というのが、どのような手続でなされるのか。「終了」していなければ「公文書」に該当しない。
おそらく、この規定はあまり深く考えないまま設けられてしまった。録音テープの決裁・供覧手続は文書管理規程にはない。すべての録音テープが決裁・供覧手続を経ていないということで「終了」していない、つまり「公文書」ではないということになりかねない。 決裁・供覧は役所が文書を作成・入手・保管する原則を規定したもので、録音も公的記録の一方法。録音テープの場合にはその内容を聴くか、自ら録音に立ち会うことで内容について確認の手続をしている。決裁・供覧に準ずる手続がなされていると解するべきである。
D「公文書」に該当するとして、文書の公開か、録音テープの公開かの選択権は請求者、実施機関どちらにあるか ⇒ 請求者側にある
E『非公開の理由』欄に記載されている内容は本件条例で規定する非公開事由のいずれかに該当するか ⇒ 該当しない
|
3 訴訟をさっさと進める方法 |
主張立証責任は、被告側が非公開処分が適法であることについて負っているので、原告側からの主張立証は理論上は必要ない。
しかし、本件非公開処分の動機は「とにかく聞かせたくない!」ということしかなさそう。受身でいると、ダラダラと愚痴のような言い訳を続けるおそれがある。そこで、
問題になりそうな全論点を指摘し、かつこちらの見解をすべて述べてしまう。
裁判官に全論点について納得してもらう。
⇒裁判官から被告に対して「次回期日までに全論点について反論するように」と言ってもらえれば、次回期日までの日数が多少かかったとしても、反論ができなければそれで結審するし、反論が出てもそれが大したものでなければそれで結審してよいし、再反論した方がよさそうであればすればよい。
|
2001・5・12 情報公開市民センター・清水 勉(弁護士) |