国交省贈与等報告書への異議申立に審査会が答申

 国土交通省職員の「国家公務員倫理法」にもとづく「贈与等報告書」(平成12年度分 1件2万円以下=閲覧対象以外分)の開示請求を昨年7月に理事長の高橋利明名で行ったのに対し,金額以外の部分をほとんど墨塗りにする処分が行われた。
 原稿執筆および講演の報酬に係る報告書585件について異議申立を行い,情報公開審査会への国交省の理由説明書に対して意見書を提出していたが,このほど10月15日付で審査会の答申が出た。
 答申は実質的に異議申立を認めたもので、要旨は次のようなものである。
1. 原稿執筆・講演は職員の現在または過去の職務に関連したものである。(しかし一般に多く行われており、組織としての活動でなく個人的な活動で,職務の遂行に該当するとはいえない)
2. 職員が報酬を得て原稿執筆または講演を行ったという事実については、個人的な活動であったとしても公にする必要がある。報告者の所属部局、官職および氏名、基因事実並びに事業者名等については慣行として公にすることが予定されている情報(情報公開法5条1号ただし書イ)に該当する。報酬の価額は該当しない。
3. 本件の場合原処分において既に報酬の価格が明示されているので、報告者の個人識別部分と併せて開示することは不適当であり、個人識別部分に該当しない次の部分は開示すべきである。
(1) 所属部局
(2) 基因事実欄の記載が、雑誌名称のみが記載され発行日記事内容の記載がないもの、執筆者名を明らかにせず掲載されたもの、一部の人のみが入手できる雑誌名が記載されているもの、一部の特定されたものを対象として行われた講演名が記載されたもの
(3) 事業者名等

当センターは国交省の原処分と審査会の答申に関して、次のように考えている。

1. 誤った原処分により本来受けられるべき開示が受けられなくなった
「意見書」で述べているように、情報開示請求の趣旨は当該公務員の所属・官職・氏名・基因事実・事業者名等の開示であり、報酬額は二次的な問題である。本来受けられるべきこれらの事項の開示が、誤った原処分すなわち報酬額欄を開示しその他の部分を不開示にするという処分によって、審査会の答申によっても受けられなくなり、実質不開示に近い結果のままになってしまうことになり遺憾である。
2. 贈与等報告書の記載不備が多い
基因事実欄に当該雑誌等の名称のみが記載されており、発行日、記事内容等の記載がないものや基因事実欄の記載からは掲載された雑誌等を特定することが困難なものが相当数ある。国家公務員倫理法は、公務員の職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図ることを目的としている。同法に基づく贈与等報告書の提出は、公務員が事業者に提供する人的役務の内容と報酬が同法の目的に照らして適正であることを示し、上司がそれを検証できる記載がなければならない。
3. 原稿執筆・講演の職務該当性について
答申は「贈与等報告書の提出の基因となった原稿執筆または講演は、職員の現在又は過去の職務に関連したものである」としながら、「一般に多く行われているものである。このような原稿執筆又は講演は、組織としての活動ではなく、あくまでも個人的な活動に過ぎない」としている。当センターは審査会答申のこの部分の見解には同意できず、「意見書」に記述したように原稿執筆・講演は職務の遂行に該当すると考えている。

参考資料
1.異議申立書 (01年10月18日付)
2.意見書 (02年6月12日付)
3.情報公開審査会答申 (10月15日付府情審第1931号)