低価格入札でも施工に問題なし
04年度も直轄工事は8千億円節減可能
−国土交通省 「低入札価格調査」の分析−


 国土交通省が昨年度(2004年度)に直轄で実施した公共工事のうち、455件について低入札価格調査が行われたが、この全件を分析したところ、平均落札額は設定された予定価格より30%低いことが分かった。(港湾空港関係を除く)
 国土交通省の8つの地方整備局と北海道開発局が実施する直轄工事の入札のうち、低入札価格調査が行われた工事の一覧表が、各局のホームページに掲載されるようになった。当センターは昨年行った03年度分の分析に引き続き、04年度分の分析を行った。

 センターが分析した結果、判明した主な事項は次のとおり。
1. 件数
 04年度に低入札価格調査が行われた件数は455件注1である。整備局別では、最も件数の多かったのが関東地方整備局で125件(27.5%)、次が近畿地方整備局で110件(構成比24.2%)である。(表1参照)
2. 平均落札率と落札率の分布
 予定価格に対する落札価格の率(=落札率)は、455件の単純平均で70.2%(金額で加重した平均では70.3%)である。局別で平均落札率が最も低いのは近畿地方整備局で66.4%である。(表1参照)
 5%刻みの落札率でグループ化すると、件数がもっとも多いのが70%〜74%台で139件、75%〜79%台が110件で、合わせると70%台が249件で全数の54.7%を占める。次いで65%〜69%台が68件、60−64%台が50件ある。(分布状況は表2図1参照)
3. 低落札率の工事
 落札率が22.9%、26.0%、30.1%、35.9%の入札があった。また40%台の入札が9件、50%台の入札が41件あった(表2参照)。落札率が最も低い工事10件を表4に示した。
4. 失格業者の有無
 各局の一覧表に掲載された調査案件の中で、最低価格の入札業者が失格となったものは2件だけで、これは桁誤り入札と考えられる(注1)。調査の結果では他はすべてコストダウンできる、工事履行に問題はないと判定され落札している。
5. 高額の入札工事
 高額の低入札価格工事で最大のものは予定価格36億6612万円、落札価格27億円(落札率73.6%)の中部地方整備局の三遠南信引佐地区三遠トンネル新設工事(入札業者は清水・熊谷特定JV)である。次は予定価格16億2907万円、落札価格10億7700万円(落札率66.1%)の関東地方整備局の大月第一トンネル工事(入札業者はアイサワ工業)、および予定価格16億4163万円、落札価格9億8300万円(落札率59.9%)の近畿地方整備局の大和御所道路庵治北高架橋鋼上部工事(入札業者は川田工業)である。

情報公開市民センターの見解

 当センターは今回の分析で次のことが明らかになったと考えている。
1.  談合なしに競争が行われれば工事の質を落とさず落札率を大幅に低下できる。
 国交省の直轄工事の全件についての平均落札率は約95%(注2)であり、落札率が高止まりしていることは、談合が広く行われていることを示している。談合を無くすことによって、工事契約金額を予定価格の70%から85%に削減できることが、入札制度の改革を進めているいくつもの自治体の実績によって明らかになっている。今回の分析でも、談合がなく適法に受注競争が行われれば落札率が大幅に低下することが実証されたといえる。
 また、落札率が低下しても工事の質を低下させずに施工できることが、失格業者がなかったことによって示された。
2.  国交省の予定価格は高く設定されすぎている。
 予定価格を積算・設定する基準を根本的に改めるべきである。
3.  談合をなくせば、国交省の直轄工事を8千億円節減することができた。
 国交省の2004年度の事業予算額は10兆2390億円であり、そのうち補助事業を除く直轄工事予算額は3兆3246億円である(注3)。直轄工事だけを取ってみても、談合がなければ低価格入札の平均落札率70.3%にまで、契約金額が25ポイント(全直轄工事の落札率95%マイナス70.3%)低減され、約8千億円削減できたはずである。

添付資料
 表1 直轄工事低入札価格調査の集計(地方整備局別)
     −件数・予定価格合計・落札価格合計・平均落札率−
 図1 落札率別の件数
 表2 落札率の分布(地方整備局別)
 表3 落札率の分布(予定価格帯別)
 表4 低落札率入札10傑

 予定価格の約千分の一、一万分の一の入札価格で失格した、桁誤りと考えられる中部、中国地方整備局の2件はセンターの集計では除外した。
 国交省の外郭団体「建設情報総合センター」の統計によれば、平均落札率は8地方整備局平均が94.25%、北海道開発局が95.7%である。04年度分は未発表。
 国交省のホームページによる。