情報公開市民センター
外務省「存否応答拒否」控訴審
第3回口頭弁論(08.3.25)の概要
米大使館と国会議員との会食支出決裁文書の「存否応答拒否」処分を取り消す東京地裁の判決に対して外務省が控訴した事件で、情報公開市民センターが前回2月12日の口頭弁論において、「外務省は、平成14年度以降在外公館の国会議員との会食情報を開示するようになったことの認否をしていない。」と認否を要求したが、これに対して外務省は準備書面(2)を提出し、市民センターはそれへの反論を準備書面(1)として提出した。3月25日の口頭弁論では、双方ともこれ以上の主張がないことを確認し、裁判所は弁論を終結、判決が5月29日に言い渡されることに決まった。
1.訴訟の経緯
情報公開市民センターが米大使館の便宜供与ファイルの部分開示に対して行った異議申立について、05年8月に情報公開審査会の答申が出され、答申に従って06年6月に開示が拡大された便宜供与ファイル文書で、いくつかの議員との会食の日時・会食場所・参加者が具体的に明らかになった。
市民センターは06年4月に、米大使館が国会議員に行った会食および供応に関する文書について開示請求を行った。外務省は6月に支出決裁文書を「存否応答拒否」とするなど、不開示処分をした。
市民センターは同年12月に、これらの処分のうち、市民センターが行っている東京高裁での報償費控訴審の対象期間に該当する「2000年2月木俣議員訪米時の会食の存否応答拒否処分」に絞って東京地裁に提訴し、判決が07年9月20日に言い渡され、市民センターが勝訴した。
外務省は判決に対して控訴し、第1回口頭弁論が07年12月11日に、第2回口頭弁論が08年2月12日に行われた。
第2回口頭弁論では、市民センターが「外務省が提出した準備書面では本件文書の存否を答えることが出来ないことを主張するだけで、平成14年度以降在外公館の国会議員との会食情報を開示するようになったことの認否をしていない」として、外務省にこの認否を求め、外務省がさらに準備書面を提出することに決まった。
2.外務省が準備書面(2)を提出
外務省は3月14日付で準備書面(2)を提出し、市民センターの答弁書に対して次の反論を行った。
1)国会議員と在外公館職員との間の会合には、公にしても構わないものと、公にしないことを前提として行われる場合とがある。便宜供与は公にすることを前提として行われる活動で、その一環として会合が行われる。センターの主張はこれらを殊更に混同するものである。
2)便宜供与として会合が行われた場合、平成13年度以前に報償費から支出したことは一度もない。
3)平成13年度分でも会合にかかわる文書の開示請求がなされれば開示に応じている。仏大使館での「大島経済産業副大臣一行との愛知万博開催に関する意見交換」を市民センターに開示した。
4)平成14年度以降も13年度以前と同じであり、新たに開示に応じる取り扱いに変更されたという事実もなければ、何らの改善の結果でもない。
5)国会議員との会合については、公にしないことを前提とする会合について、平成14年度以降は、「公費支出全般についての一層の抑制、厳格化という観点から」在外公館の経費を支出しない形で実施されることになった。
3.市民センターが準備書面(1)を提出
市民センターは3月25日付で準備書面(1)を提出し、外務省の準備書面(2)に対して次の反論を行った。
1)国会議員との会食の経費を報償費で賄ってきたか否か、平成14年度以降「庁費」への移し変えの事実があったか否かについては認否を避けている。
2)外務省の主張は今なお「公にする・しない」の二分法に基づいているが、国会議員との会合・会食の秘匿性も、「公にする・しない」の二分法も、別件の報償費訴訟高裁判決で排斥された無効な主張である。
3)外務省の「公にすることを前提とする便宜供与の活動であった場合にまで報償費から支出したことは平成13年度以前も、14年度以降もない。」との主張は、彼らの論理からすれば国会議員に対する便宜供与は実態とは無関係に「公にしない活動」であるとの屁理屈による、狡猾な答弁である。
4)外務省は平成13年度以前の国会議員との会食の事例として「大島経済産業副大臣一行との……意見交換」を開示したというが、同案件は行政関連職員との会合であり国会議員に対する便宜供与として扱われていないものである。外務省は13年度以前においても国会議員との「公にしても構わない会合」が存在したと主張するが、立証ができない。開示された文書には存在しない。
4.第3回口頭弁論
第3回口頭弁論が2008年3月25日(火)午前11時から行われた。裁判長は双方に、提出した準備書面を陳述することを確認し、またこれ以上の主張はないことを確認して、弁論を終結した。
5.判決言い渡し
判決言い渡しの期日は5月29日(木)午後1時15分、825法廷と決定した。
(鈴木祥宣 記)