2010年5月20日
「情報公開制度見直しに関する意見書」作成の経緯と要旨
情報公開市民センター
政府は「行政透明化検討チーム」を設け、情報公開法の改正に乗り出す
「行政透明化検討チーム」は、枝野幸男行政刷新担当大臣が自ら座長を務め、4月20日に開催された第1回会合では、「情報公開制度の改正の方向性について」(枝野試案)が提示されました。同チームは6月にも情報公開法の改正案をまとめ、総務省から秋の国会に提出して成立を目指すと見られています。
枝野試案の骨子
・目的として「国民の知る権利」の保障の観点を明示
・国の安全が害され、公共の安全に支障を及ぼす恐れがある情報を不開示とする要件で「行政機関の長が認めるにつき相当の理由がある」を削除=恣意(しい)的判断の排除
・全部の不開示決定は首相に報告。首相に取消しなど必要な措置を求める権限を創設
・開示等の決定期限を、請求のあった日から14日以内に短縮。文書が大量の場合、「相当の部分」を開示した残りについて、「相当の期間内」に開示できる規定については開示等決定から60日以内と明記
・開示・不開示の決定が法定期間を過ぎてもなされない場合は、不開示決定があったものとみなす
・情報公開請求訴訟において、開示しない部分について、これを特定するに足りる事項やその内容の要旨および不開示の理由等を記載した文書の提出制度(ヴォーン・インデックス)の創設と、裁判官が文書を見分できるようにするための文書提出命令制度(「インカメラ審理」)の導入
・国会や裁判所、政府周辺法人関係にも情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す
国民の意見の募集に市民センターは「意見書」を提出
事務局の内閣府の「職員の声担当室」が、情報公開制度改正についての意見を5月14日締切りで募集したので、当市民センターは、「情報公開制度見直しに関する意見書」を作成し、提出しました。「意見書」は、これまでの情報公開法施行以来の活動で体験した、現行の情報公開制度の問題点を指摘したもので、特に外務省報償費不開示取消訴訟(2001〜09年)における、法の解釈と運用をめぐる具体的な攻防にもとづいた実践的意見です。
情報公開市民センター「意見書」の要旨
・枝野試案は、現行の制度の大きな問題点に一応の対応がなされたものになり、基本的には全面的に賛成する。
国民の知る権利の明示、外交・国防・安全情報につき行政機関の長の「おそれがある情報」の裁量判断の削除、不開示情報記録部分以外の開示義務、不開示決定の具体的理由の明示、開示等決定期限の短縮、審査会への異議申立の諮問の早期の期限の設定、ヴォーン・インデックスおよびインカメラ制度の導入、など
・「おそれがある情報」の規定は抽象的であいまいであり、行政庁の恣意的な解釈を許すので法5条各号の不開示事由の規定に限定が必要。
・ヴォーン・インデックス制度については、「……文書の作成・提出を求めることができる」ではなく、インカメラ方式に合わせて、「……文書の作成・提出を命ずることができる」が望ましい。
・付帯意見として、「行政透明化検討チーム」が(1)住民訴訟の代位訴訟の復活と納税者訴訟の創設 (2)真の司法改革のため最高裁判事の任命方式の検討、を課題として取り組むこと。