補助教材帳簿訴訟,高裁で全面勝訴。
「補助教材帳簿訴訟」の第2審判決が,7月12日,広島高裁岡山支部で言い渡されました。岡山市教育委員会の控訴を棄却。昨年6月の岡山地裁判決に続き,オンブズマン側の全面勝訴です。

この訴訟の争点はただ一つ、「学校にある、補助教材の購入・販売関係の帳簿類は、公文書・・・公務員が職務に関して作成・取得し、管理している文書・・・かどうか?」です。(背景になっている岡山市情報公開条例の「公文書」の定義は、情報公開法にちかいものなのです。)

実施機関である岡山市教育委員会は、主として「文書管理規定にない」ことを理由に、頑強に抵抗しました。1審の岡山地裁、2審の広島高裁岡山支部はいずれも、明確に公文書性を認めました。特に今回の高裁支部判決は、判決文の明確さ・論理性がすぐれています。

情報公開法の施行に伴って、国の諸官庁が、「公文書ファイルにのっていない」という理由で開示請求の受理を拒否したり、当然あるはずの文書について「不存在」という理由で不開示決定をする、といったケースが目立ってきています。この事件の判決は、この問題点についての貴重な先例になると思います。

「補助教材帳簿訴訟」って何か?
どこの小学校でも,教科書以外に「補助教材」を使っています。補助教材の注文は学校(購買)でまとめてとって,集金も学校(購買)でまとめてします。
つまり,最終ユーザーの生徒と,販売業者との間に,学校(購買)が入っています。
学校(購買)は,ただ間に入っているだけではなくて,中間でマージンをとっています。その利益がどのように使われているか,これまで一般にも父兄にも,ぜんぜん知らされていませんでした。

「市民オンブズマンおかやま」は,平成10年6月に,岡山市情報公開条例に基づいて,岡山市内の3小学校の補助教材の関係帳簿の公開を,岡山市教育委員会に請求しました。回答は,「文書不存在」。そんな書類はない,というのです。いやね、ブツリ的には間違いなく・・・学校内に・・・存在しとるんですけどね。「公文書じゃないから役所的には存在しとらん」つーのですよ。

オンブズマンは異議申立をしました。すると市教委は,4か月あまりほったらかしにしたあげくに,審査会にもかけないで却下決定をしてきました。理由。「文書不存在」というのは書類がないということを通知しただけである。行政処分じゃない。だから異議申立の対象にならない。じっさい驚きましたね、このキョーイク者らしからぬ屁理屈には。

平成11年2月に提訴。12年6月20日,岡山地方裁判所は「公文書不存在通知を取り消す」という判決をしました。判決いわく,
「補助教材の購入は,教職員の職務と密接に関係する事務だから,それに関する文書は職員が職務上管理しているものであって,校長がプライベートに管理しているものではない。その管理が文書管理規則にもとづいているかどうかは関係ない。購買職員が正規の事務職員かどうかも関係ない。」
オンブズマンの主張をほとんどそのまま認めた,全面的な勝訴判決です。

市教委は控訴しました。そして実にいろいろな理屈をこねました。7月12日,高裁支部判決。1審の岡山地裁判決を全面的に支持し,市教委の控訴を棄却しました。市教委の理屈に対していわく,
1.補助教材の集団購入・販売についても,市教委の管理権が及んでいる。
2.市の予算に計上されていなくとも関係ない。
3.市教委は職務上,校長に補助教材購入関係書類の引渡を求める権限がある。
4.市教委が補助教材に関与するのがその採択の点だけであっても,教育的配慮から校長がこれを集団購入・販売している以上,それは校長の職務上の行為である。
5.補助教材の購入・販売は,地裁判決のいうとおり,校長が,購買担当者を補助事務者として根職務に密接に関連する事務として行っているものである。

第1審の岡山地裁判決をさらに一歩すすめた,文章明快な判決で,市教委の主張は片端から理路整然とぺしゃんこにされています。(これなら,控訴しないほうがよかったんじゃないかしら。)

市教委が上告するかどうか,まだわかりませんが,勝負あったも同然です。(それにしても3年かかりました。寝言じみた不開示決定は、もうこれくらいにしてほしいものです。)
さあ、やっと学校の「秘密のお部屋」に入れます!