特殊法人等の監査体制ランキング

(会計監査を中心として)

2004年8月



− 目次 −
1、はじめに
2、調査方法
      2−1 事前調査
      2−2 ランキングの対象法人と対象業務
      2−3 一斉情報公開とフィードバック
3、監査体制総合ランキング
      3−1 ベストとワースト
      3−2 明らかになった三つの問題点
4、項目別の解説
      4−1 仕組の充実
      4−2 実査の充実(会計監査のみ)
      4−3 処置の充実
5、職員数規模別ランキング
6、業態種別比較
7、情報公開はどうだったか
      7−1 不開示はNHKのみ。意外に隠蔽体質?
      7−2 サービス(手数料、コピー代)
8、おわりに

別表―1 評価基準
別表―2 監査体制総合ランキング
別表―3 職員数規模別ランキング

特定非営利活動法人 情報公開市民センター

〒160-0008東京都新宿区三栄町10-1橋爪ビル2階
TEL:03-5368-1520 FAX:03-5368-1521
E-Mail:info@jkcc.gr.jp
URL:http://www.jkcc.gr.jp
8/24

特殊法人等の監査体制ランキング
1、はじめに
 特殊法人等(特殊法人および認可法人)での不祥事、不正行為が頻発し、新聞を賑わすことが多くなった。これらの事件を見聞きするたびに、一般国民は、一体、監査をしているのかと不思議に思う。
 民間企業でもかつては内部監査が馴れ合いに近く、あまり多くの指摘をしないのが良い監査役と思われていた時代があった。今でも、企業で不祥事が発覚して社長や監督者が責任を取らされても、何年にも亘って監査で見つからなかったことが問題にされることはまずない。しかし、最近では不正行為が企業の存続に関わるケースが発生して、企業サイドから真摯に監査制度や内部通報制度の充実を図ろうとする動きが出てきている。
 一方、特殊法人等はどうなのか。民間企業のように不正行為が法人の存続に関わることもなく職員全体の身分に影響を及ぼすこともまずない。不正防止に真剣に対応しなければならないインセンティブが欠けている。
ならば外部から刺激を与えて監査による自浄能力の向上に期待するしかない。幸いに独立行政法人等情報公開法が施行されて1年半。同法が対象とする特殊法人等の監査実態を調査してランキングを試みた。
<目次へ戻る>
2、調査方法
2−1 事前調査
 特殊法人等の職員数規模は28万人から10数人まであり、業種も多種多様である。平成13年の特殊法人等整理合理化計画により事業や組織形態の見直しが図られ、この時期、統廃合で経営形態が激変したことから、法人等の実態を把握し、監査に使用する文書名を特定するために、まず、4月上旬にアンケート調査を実施した。
2−2 ランキングの対象法人と対象業務
 対象法人は2003年4月1日現在の特殊法人等(62特殊法人、14認可法人―平成15年9月、総務省行政評価局発行「特殊法人等に係わる監査機能に関する調査結果報告書」より)から金融機関および職員30名以下の極小法人を除くこととした。日本放送協会(NHK)は「独立行政法人等情報公開法」の対象機関ではないが、国民に広く内容を知って貰おうと独自に情報公開制度を設けているので対象に加えた。その後1年余りで、民営化により対象から外れたり、統廃合などで集約されたりして対象機関は53法人となった。
 特殊法人等の業態はさまざまで、法人のすべてに及ぶ業務監査では比較が難しいことからランキングは実地監査では会計監査のみを対象とした。仕組および処置の項目については業務監査を含んでいる。
2−3 一斉情報公開請求とフィードバック
 5月中旬、53法人に一斉情報公開請求し、約1ケ月後、文書の開示を受けて分析した。情報公開市民センターの独善に陥らないために7月中旬と下旬の二度にわたって、各法人に評価結果をフィードバックし、評価が実態と違っていないか照会して意見を求めた。殆どの法人から何らかの意見が提起された。
 特定のグループが不公平な評価を受けないことに最大の配慮をして評価基準別表―1を作成した。
<目次へ戻る>
3、監査体制総合ランキング  別表―2
3−1 ベストとワースト
ベスト (85点) 日本郵政公社
二位 (80点) 水資源機構、農畜産業振興機構、国際協力機構(3法人)
ワースト (10点) 新エネ・産業技術機構、金属鉱業事業団
日本私立学校振興共済事業団、勤労者退職金共済機構
国民生活センター(5法人)
(全53法人平均 44.4点)
日本郵政公社 監査項目点検シートが充実している。監査対象グループ毎に毎年作成され、評価や特記事項が記載できるようになっている。結果報告書には「勧告」「指示」事項などが1件につき1葉作成され、被監査部署からの回答書もそれぞれに対応して作成される。形式としてはまず理想的な体制が出来ている。支払先への支払を調査書で確認している2法人のうちの一つ。
水資源機構 結果報告書は40ページの冊子として要領良くまとめられ、不適切な随意契約、不適切な指名業者の選定、不適切な変更契約などを具体的に指摘している。
農畜産業振興機構 職員数が224人の小規模法人であるが、分担しながらも独自の内部監査の体制が確立している。契約関係、タクシー券などはチェックした記録を残している。業務監査室のホームページがあり、監査報告書は全役職員が読める状態になっている。
国際協力機構 監査報告書は20ページほどの冊子にまとめられ指摘事項が具体的に記載されている。会計監査の改善・検討事項に対して回答とその後の措置が同じページに並べて記載されていて分りやすい。タクシー・出張旅費についての指摘・指導もされている。
3−2 明らかになった三つの問題点
 明らかになった主な問題点は次の3つである
(1) 指摘・指導が極めて少ない。
 監査結果報告書による指摘・指導が「かなりある」のは53法人中、わずか9法人しかない。「ほとんどない」が29法人で全体の54.7%。 指摘・指導がないのは(@)きちんとした監査をしていないか(A)今の監査の基準から見れば充分な事務体制が出来ているか、のどちらかである。
 (A)の場合は、監査の「目的」をレベルアップして、さらに高度の基準を設定すべきだろう。
(2) 監査の記録を残す習慣がない。
 実際に監査をやっても記録しないところが多い。入札・随意契約の適否のチェックでは17法人、32.10%、タクシー券・出張旅費では30法人、56.6%の法人が記録を残していない。記録がないと後々困るのではあるまいか。監事が交代したとき、後任者は以前の監査実績を知らないままで支障はないのだろうか。あるいは後で何かの事件が起こった時、なぜ問題をもっと早く発見できなかったか、監査部門はなにをしていたのか問題にならないのだろうか。
(3) 監査チェックリストが完備されていない。
「監査マニュアルやチェックリスト」の開示請求をしたが、開示文書を見ると実態はすべてチェックリストであった。監査チェックリストはピンからキリまでで法人によって充実度の較差は予想以上である。詳細なリストがあるのが13法人、一応あるのが13法人。過半数の27法人ではチェックリストとは呼べないようなものか、まったくないかである。
<目次へ戻る>
4、項目別の解説  別表―1参照
4−1 仕組の充実
(1) 監査体制 (10点)
 どの法人にも主務大臣などに指名された監事はいるが、監事だけに監査を任せているのか、それとも監事監査とは別に、独自の監査体制を敷いているのかを調査した。監事室に何人かの職員がいても、単に監事の補佐だけをやっていたら独自の監査体制とは認められない。
 30法人、56.6%で独自の体制が出来ている。規模別では大規模グループ(職員1,000人以上)が76.5%、中規模(300人以上)が60.0%、小規模(300人未満)が38.1%と明らかに規模の大きいグループの方が体制が良く出来ている。
(2) 監査目的 (10点)
 25法人、47.2%が監査規程か計画書などに「経費節減」をうたっていた。残りの28法人は、独立行政法人・特殊法人等監事連絡会がまとめた「監事監査に関する参考指針」の「目的」に記載された「業務の適正かつ効率的、効果的な運営を図ること及び会計経理の適正を確保することにある」に従っている。だが、この指針を忠実に守っていればそれでよいのだろうか。もし指摘・指導する必要がないほど事務が充実していたなら、「目的」を拡大して監査基準を一段とレベルアップしなければ事務水準の向上は望めない。
 「効率性」と「経費節減」は密接な関係にあるが、大きな違いは「経費節減」は経費の絶対額の削減で具体的な数字で示しうることである。民間企業で経費節減に真摯に取り組んでいるとき、特殊法人でも重要な目標であることは論をまたない。規則の「目的」欄に「経費節減の努力」を記載しないままでは、公務員的な体質があるといわれる特殊法人の監事が本気で監査することは期待できない。
(3) チェックリスト(10点)
 チェックリストが完備している法人ほど指摘・指導も多く、実地監査が充実している。
 別表―1の仕組「チェックリスト」欄の得点区分と、実査「指摘・指導」「入札・随意契約等チェック」「タクシー・出張旅費チェック」3欄の合計得点を比較すると、両者には明確な相関関係が浮かび上がってくる。
「チェックリスト」欄得点 法人数 3欄合計点(満点30点)
10点(詳細なチェックリスト) 13法人 15.8点
5点(一応リストはある) 13法人 12.3点
0点(リストはない) 27法人 6.5点
(全 53法人 平均10.1点)
 完備された監査チェックリストは事務取扱手続と裏腹の関係にある。なぜなら、リストには監査すべき項目が詳細に掲載されていて職員がやらねばならない仕事の内容と方法が網羅されているから、監査を完全にクリアするにはやるべき仕事を完璧にこなすしか方法がないのである。
4−2 実査の充実(会計監査のみ)
(1) 年次計画書(10点)
 定期監査計画書では監査対象は全項目をカバーし、その上に時機を得た重点項目が設定される必要がある。設定しているのが13法人、24.5%。いくつかの法人から「全項目を限られた時間に監査するのは無理だから、特別の項目のみをやらざるを得ない」との意見が出された。確かにすべての項目を監査することは不可能だろう。しかし、最初から監査の対象を限定してしまっては職員の仕事に手抜きが出る。時間的な制約などで結果として全項目の監査が出来なくてもそれはやむを得ないだろう。
(2) 指摘・指導(10点)
 一番多く出た意見は「指摘・指導の多い方が監査が充実しているとは言えない」であった。これは「指摘・指導が多いのは事務体制が充実していないからだ」「事務体制が充実していれば指摘は少ない」という当然の事実から来ている。しかし、ランキングの対象は「事務体制の充実」ではなく「監査体制の充実」である。
 一般的には「事務体制の充実度のいかんに関わらず、指摘・指導の多い方が監査体制は充実している」と言ってよい。指摘・指導をしない監査など何の役にも立たない。吼えなくなった番犬のようなものだ。
 指摘・指導が「かなりある」「ほとんどない」とは何件なのか、客観的な基準が必要だとの意見もあった。しかし、指摘・指導はその内容にも濃淡があり、一概に件数のみで判断できない。結局、人の目で数回にわたって全法人の報告書を読み比べ最終的には「人の感触」で相対的に判断するしかない。これは処置「報告書」欄の「実効性があるかどうか」の判断も同様である。
(3) 入札・随意契約、複数見積書のチェック(10点)
 特殊法人のムダ使いで常に問題にされるのが「恣意的な随意契約」である。 この項目で「チェックした記録がない」のが三分の一に及ぶ。実際はチェックしていても記録をしていないのが多いようだが、記録のない監査には決定的な欠陥があるとして0点とした。
(4) タクシー券・出張旅費チェック(10点)
 しっかりと管理しないと無統制に陥りやすく、職員の規律に深く関わる項目である。残念ながら、チェックした記録がないのが過半数だ。仮に指摘事項がなかったとしても、監査したかどうかをチェックリストに記録し監査者名を残しておくのが本来のあり方だろう。
(5) 支払先への照会(5点)
 支払金が本当に相手先に支払われたかどうかを往復ハガキなどで確認する「調査」をしているかである。意外にも実施しているのは僅か2法人しかない。「銀行振込だから問題ない」「周知の相手先ばかりだからそこまでする必要がない」などは言い訳にはならない。
 相手企業の誰かと結託して不正をしようとする人がいても、ハガキの場合、極めてオープンに扱われ、受取側の誰が目にするか判らない。調査されるという事実があるだけで抑制効果がある。
 全数検査する必要はない。抜き取りで100件に1件でも2件でも構わない。独立行政法人に移行した法人は、ぜひ、公認会計士に調査させるように期待したい。
4−3 処置の充実
(1) 報告書(10点)
 財務諸表などに添付する監事の意見書やそれに表紙を付けただけなど極めて形式的なものが19法人、35.8%。内容の充実度で見ると正にピンからキリまである。「実効性のある報告書」とは指摘・指導・勧告といったものが記載されており、監査を受けた人々に取って、今後、仕事を進める上で参考となるなど何らかのプラス効果が期待できる報告書である。
(2) 回答書(10点)
 指摘・指導などに対して28法人、52.8%で被監査部署が回答文書を作成している。今回は回答書が作成されていればその内容を問うことなく満点とした。
(3) 全社に周知徹底(5点)
 指摘や指導を受けた項目は対象部門ばかりでなく他の部門にも共通するものもあり、全部門・社員への周知徹底が望ましい。必ずしも監査報告書そのものを回覧する必要はないが、教訓などが通達で流されたり、LANに載ったりして全社員が見られる状態になっている17法人、32.1%を満点とした。部長会で資料を配布するなどでは全社員には徹底しないと判断し0点とした。
<目次へ戻る>
5、職員数規模別ランキング 別表―3
 特殊法人等はその規模の大小に応じてそれなりの監査要員が配置されているとの観点から全53法人を同じ基準で評価したが、結果として大規模法人に有利な評価が出ている傾向は否めない。中小規模法人を救うために規模別のランキングを試みた。(全法人・平均点44.4点)
(1) 大規模法人(1,000人以上) 17法人・平均点56.5点
 特に目立つのは最下位の日本私立学校振興共済事業団である。平成10年に日本私立学校振興財団(職員約100名)と私立学校教職員共済組合が合併した法人である。 監査の対象が旧財団であるとの特殊な事情はあるが、例え小規模法人として評価しても最下位であることには変わりはない。
(2) 中規模法人(300人以上) 17法人・平均点44.4点
 情報通信研究機構、重度知的障害者施設のぞみの園(いずれも総合5位)および日本芸術文化振興会(総合7位)が健闘している。のぞみの園と芸術文化振興会は職員数が300人そこそこの規模である。
(3) 小規模法人(300人未満) 19法人・平均点33.7点
 小規模でありながら総合上位に位置するのは農畜産業振興機構(総合2位)、国際交流基金(総合8位)の2法人である。これらの健闘振りを見ると、監査の充実は規模の問題ではなく、理事長のやる気、監事のやる気であることが分かる。
<目次へ戻る>
6、業態種別比較
 業態種別の平均点は以下の通り。(法人毎の業態種は別表―2参照)
公共事業系 (10法人) 49.5点
文化・サービス系 (12法人) 48.8点
福祉・雇用・年金系 (10法人) 46.5点
技術開発系 (10法人) 44.0点
産業振興系 (6法人) 35.0点
公営ギャンブル系 (5法人) 32.0点
(全53法人・平均点 44.4点)
(1) 公共事業系で水資源機構(80点)がバランス良く得点を得ている。都市再生機構(65点・8位)や道路公団グループなどの多くで独自の監査体制が出来ていることからグループとしての高得点に繋がっている。とかく注目を集めがちな業界だからか、しっかり監査しようとする姿勢は覗える。
(2) 文化・サービス系ではトップ・テンに日本郵政公社(85点)、国際協力機構(80点)、日本芸術文化振興会(70点)、国際交流基金(65点)の4法人が入り、いずれも監査チェックリストの充実が図られている。国民生活センター(10点)は消費生活の向上に大いに貢献している機関であるだけに体制改善が切望される。
(3) 福祉・雇用・年金系では職員300人ののぞみの園(75点)が健闘している。労働者健康福祉機構と雇用・能力開発機構も65点でトップ・テンに3法人が入る。このグループには最近、特に国民の視点も厳しいので勤労者退職金共済機構(10点)には改善努力が望まれる。
(4) 技術開発系は情報通信研究機構(75点)を除くと40点から50点に6法人が集中し全体のレベルは平均的だ。新エネ・産業技術機構(10点)が悪い方で目立つ。
(5) 産業振興系は農畜産業振興機構(80点)以外は上位の20法人にも入っていない。意外に監査に無関心の業態種のようだ。最下位(10点)が2法人(日本私立学校振興共済事業団、金属鉱業事業団)あるので平均点は下位から2番目。
(6) 公営ギャンブル系は僅かに日本中央競馬会(65点・8位)がトップテンに入り、飛びぬけて好成績だが、その他はいずれも平均点以下でグループとしては最下位。
<目次へ戻る>
7、情報公開はどうだったか
7−1 不開示はNHKのみ。意外に隠蔽体質?
 NHKはアンケートの「監査マニュアル・チェックリスト」に対して「監査事務要領」が該当するとしたので、開示請求したところ全8文書のうち「監査結果報告書の書式等」他3文書を全面不開示とした。不開示処分をしたのは全法人でNHKのみである。
 理由は「監査結果報告書の書式等」には「評価の判断基準や方法、例えば領収書の要件、購入物件の管理等についてのチェック方法など」が記載されており、これを開示すると「監査業務に支障を及ぼす」としている。しかし、「領収書の要件」や「購入物件の管理等」のチェック方法などは職員が通常の仕事でも知っておくべきものだ。「領収書」は顧客から受け取った段階で「要件」がチェックされるべきで、事務手続きに記載されていてもおかしくないものである。
 NHKは民間放送事業者と競争する部分がある。だから特殊法人と同程度の透明性が必要であるとまでは言わない。しかし、「領収書の要件」などのチェック方法を開示することが民間事業者との競争に不利を及ぼすとは到底考えられない。意外に隠蔽体質か、さもなければ情報公開の基本が理解されていない。どのような監査体制を取っているのかを公開することで、最近、メディアで報道されている不祥事に対する国民の不信感を払拭して欲しい。
7−2 サービス(手数料、コピー代)
(1) 手数料の支払方法
 郵便請求の場合の開示請求手数料(1件300円)の支払方法(費用)は(@)定額郵便小為替(10円)(A)銀行振込(105円)(B)現金書留(500円)の三つである。
 すべての方法が可能としたのが、首都高速道路公団・日本道路公団・本州四国連絡橋公団・阪神高速道路公団と科学技術振興機構、宇宙航空研究開発機構、新エネ・産業技術機構、金属鉱業事業団、日本私立学校振興共済事業団の9法人であった。
 現金書留のみとしたのが日本学術振興会とのぞみの園の2法人であった。のぞみの園は換金のために銀行や郵便局へ行くのに自動車で往復2時間掛かるということだからやむを得まいが、日本学術振興会は便利な都心(東京都千代田区)に位置しているので一般国民へのサービス向上が望まれる。
(2) 優遇措置(手数料とコピー代)
 NHKは開示請求手数料を無料、コピー代A4版1枚10円(大部分の法人は20円)としている。国民生活センターは情報公開をセンターの本来的業務であるとして開示請求手数料を無料とし、核燃料サイクル開発機構はコピー代をA4版1枚10円とする優遇措置をとっている。
<目次へ戻る>
8、おわりに
 ランキングの目的が今後の監査体制の充実であることは言うまでもない。まとめとして五つの点を述べて置きたい。
(1) 監査部門の発言力向上を
 不祥事のニュースなどに接して疑問に思うのは監査の問題が話題に上らないことである。独善的なトップに役員が意見を述べられなくて未然に防止できないとき、監査はなにをしているのか。監事は理事会に出席して少しでも発言しているのだろうか。内部通報制度などでも通報の受け口を監事が担当してもよい。今こそ監査部門の出番であり、発言力向上が期待される時代である。
(2) 会計監査の重要性
 ランキングで比較する必要があるために実査の部分は会計監査に限ったが、業務監査のみに重点を置いて会計監査をあまりやっていない法人が多かった。最近の特殊法人等のムダ使いや不祥事への国民の厳しい視点を考慮すると、どんな時でも会計監査は手抜きの許されない重要な項目であることを認識して欲しい。
(3) 記録を残す習慣の定着
 監査業務では全般的に記録を書面に残すという習慣が十分に定着していないことが明らかになった。長い間、問題視されて来なかったことが今回はいきなりランキングで厳しい評価を受けた訳だが、今後、記録を残すルールが確立されることを期待したい。
(4) チェックリストの充実
 職員の仕事のミスを発見することが監査の最終目的ではなく、仕事のレベルを向上させミスを防止することもまた重要である。監査チェックリストの充実と開示は事務レベル向上のかなめと思われる。
 チェックリストの開示が不正行為を誘発するとは思われない。不正を予防・発見する監査ノウハウは、監査担当者がプロとして集積する知識と経験の結晶であり、チェックリストなどで開示できるような情報よりはるかに高度なレベルで深遠なところに存在する。
(5) 情報公開への対応に英知を
 監査業務の円滑な運営を図りつつ、情報公開という時代の流れにどう対応して行くかも大きな課題であろう。書類を残さない記録を残さないといった後ろ向きの方向ではなく、前向きにどう対応するか、ぜひ、英知を絞って検討されることを期待したい。
<目次へ戻る>
担当:黒田達郎(文責)、村越啓雄