包括外部監査の「通信簿」 |
全国市民オンブズマン連絡会議代表幹事:大川 隆司 包括外部監査評価班事務局:井上 善雄 大阪中央区北浜1−2−2 北浜プロボノビル 市民オンブズマン(大阪):06−6202−5051 |
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第1章 はじめに | ||||||||||||||||||||||||||||
昨年度(11年度)より全国の47都道府県、12政令都市、25中核市において包括外部監査制度による外部監査と報告書の提示がスタートした。全国市民オンブズマン連絡会議では、これらが全国の自治体の財政をはじめとする行政の刷新と改善にどれだけ役立つのかを注目しており、全国各地のオンブズ団体の協力を経てその評価を行なうことにした。外部監査人は市民のための自治体の「お目付役」となれるのか、それとも従前の監査委員の「屋上屋」や「税の無駄使い」になってしまうのか、それは外部監査人の姿勢・努力によることはいうまでもないが、それを視る市民自身の「監視」の力にもよるのである。本書は、いわば包括外部監査の市民オンブズマンによる”通信簿”である。 |
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第2章 制度の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||
第3章 今回の包括外部監査の |
「契約者」(監査人)「報酬」「監査対象事項」等
外部監査人としての契約者は、公認会計士が43都道府県、11政令指定都市、21中核市で合計75人、弁護士は4都道府県(山梨,大阪,島根,徳島)、3中核市(堺,岡山,福山)で7人であった。税理士は1政令都市(京都)1人、会計検査院OBは1中核市(秋田)1人である。 |
その監査の内容が今回の評価対象であるが、報告書の質と量は監査人により著しい差がある。もっとも同様の監査対象を取り上げていても、調査した行政部局の範囲や深さなどかなり異なるものがあり、これらを今回の評価において考慮していることはいうまでもない。 また、表のとおり監査人の報酬は633万円〜3000万円である。 なお、今回の監査対象事項を種別に分類すると、およそ下記のとおりである。
第4章 今回包括外部監査の評価と評価方法 |
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第5章 総評 | |||||||||||||||||||||||||||||
第6章 総合評価 |
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第7章 外部監査の今後の課題 |
今回調査したほとんどの外部監査報告において、十分な適法性監査が行なわれていなかった。 |
まず、監査にあたって、実質的な「適法性」ではなく、「合規性」を確認することを監査の視点として監査を行い、「適正に執行されていると認められる」と結論づけている監査報告が多い。しかし、手続規程に準拠して手続書類が作成され、手続が進められているかどうかという外形的、書面確認的な監査は、外部監査の基本作業として当然に必要なものであるが、それだけにとどまらず、契約、支出、補助金交付などの執行行為、手続の目的、金額、内容、必要性、相当性等の内容について調査し、検証することが外部監査には求められる(例えば、違法な食糧費の支出、補助金の交付、土地取得契約の締結とされてきた事例も形式的な書類は合規に整えられている事例である)。 また、実質的な監査を行なう調査の過程で、適法性に疑問のある事実が確認しているにもかかわらず、あえて適法であるのかどうかという判断を避けている監査報告が極めて多い。 「土地を民間会社に無償で貸し付けている事例が確認された」、「入札手続を行なわず、随意契約としている根拠が乏しい事例がある」、「根拠の乏しい補償金の支払いが行なわれている」、「補助金執行事業の目的とは違う用途に土地が利用されている事例が身受けられた」などと問題事実を確認しながら、外部監査人としての意見、判断を示さない監査報告や、「改善を検討されたい」「見直しを要望する」という改善、要望意見だけをつける報告である。 しかし、公有財産の貸付、随意契約、補償金の支払等には厳格な法的要件、根拠が必要であり、指摘されている事例は、違法と判断すべきものも少なくないはずである。 外部監査は、職員の非違行為を摘発したり、職員の責任追及を基本目的とするものではないが、行政内部の長年の悪しき慣行として定着している不適法な手続について、改善を要望するだけで、真剣に改善が検討され、実施されていくと期待することは甘すぎる。外部監査人が、違法な事例を指摘することの結果として担当者の責任が問われることを配慮したり、さらには自治体との緊張関係を生じることを心配して指摘を控えるようなことでは、従来の監査委員と同様に身内に甘い監査として、批判される事態となってしまう。 調査の過程で明らかになった事実が違法である可能性が少なくない場合には、外部監査人としては、その適法性の有無について、事実関係を詳細に調査し、関係法令の精査、関係判例等の調査をふまえ、厳正な判断を行なう職務があることを忘れてはならない。 さらに今回の調査では、行政提供データを追随し、充分な調査・検討のない、浅く広くの監査が多数認められた。このような監査は過去の行政に対する「お墨みつき」の効果を与えるだけで問題点が多く、反省を要すると考える。 第8章 外部監査を活かす |
外部監査は、監査の結果が提出され、公表されることによって終わるものではない。 |
監査において、いかに鋭い監査が行われ、監査報告に、いかに住民にとって有益で、有効な意見が提示されても、監査を受けた自治体の長、議会が、監査の結果を真摯に受け止め、指摘された点について原因を解明し、監査意見に示された是正、改善提言を実際の行政に活かして行かなければ、外部監査制度はまったく役に立たない。 初年度の今回の外部監査は、これを実施する監査人にとっても未経験のことであり、的確な問題提起や改善意見が示されたものは多くなく、全体的に適法性あるいは有効性、法律性、経済性の監査としては成功していない。 しかし、今回の外部監査によって、自治体内部に潜んでいた問題、欠陥、損失、負債、リスクなどが、市民に初めて明らかになったものも少なくない。 監査報告を受けた自治体は、真摯に監査結果を受け止め、迅速かつ確実に、改革を実行していくことを強く求めるものである。そして、外部監査人には今後の研鑽を求めるとともに、監査結果の実現について市民と共に監視していくよう要請する。 私達市民は、これらの外部監査によって、行政の諸問題を学ぶとともに、自らの自治体がより一層正常化するよう見守っていかなければならない。 総括表はこちらです (新しいウィンドウで開きます。開くのに少し時間がかかります。) |
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