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1.外務省の準備書面(1) 外務省は第2回口頭弁論での裁判長の指示をうけて、2006年12月28日付で外務省準備書面(1)を提出した。この書面で外務省は次のような説明と主張をしている。 ・情報収集や交渉の相手方ではない人物との会合(間接接触)の経費の支出文書があり、その件数は58件である。個別文書の記録内容を説明。 ・それ以外の支出(895件)はすべて直接接触の会合の経費であり、秘匿性が高い。(米国の裁判例も援用) ・直接接触のうち58件の個別文書について、記録内容を類型的抽象的に説明。説明をする文書の件数はこれにとどめざるを得ないと主張。 ・外務省不祥事の概要を説明。それらは報償費とは無関係であると主張。 2.市民センターの準備書面(2) 市民センターは外務省の準備書面に対して、釈明を求める内容の準備書面(2)を1月30日付で提出した。要旨は、 ・外務省の報償費の6分類の説明が、原審と控訴審で表現がいくつも異なっている。 ・初めて出てきた「直接接触」「間接接触」の用語・概念は、情報公開法に基づく開示・不開示の基準として主張するのか。 ・木俣佳丈議員の接待費用の開示請求に対し、請求の仕方によって不開示と存否応答拒否の2種類の決定をしたのは、場当り的である。など 3.第3回口頭弁論 東京高裁の第3回口頭弁論は、1月30日(火)午後3時から825法廷で行われた。 裁判所の構成が変更になり、吉戒修一判事が裁判長になった。 両者それぞれが準備書面を陳述した。 裁判長: ・裁判所の関心は、外務省準備書面で報償費の分類の表現が従前と違うことである。できるだけ変えないでほしい。変えるなら何故なのか、趣旨の説明を求める。 ・証拠の英文判決例の訳文を早期に提出されたい。 ・結審を見据えた進行を考えたい。長引かせず、主張がなければ結審へ進める。 ・前提事実として、外務省は当該年度の報償費の額、在外公館交流諸費の額を示すこと。 外務省 ・直接接触の個別説明の件数を58件にしたのは、間接接触の件数が58件であるのに数を合わせたものである。 ・間接接触の支出文書は、秘匿の必要性の程度が異なるが、不開示の方針は変わらない。 ・センターの準備書面による求釈明に対しては、次回までに書面で回答する。 4.次回期日 次回の口頭弁論は2007年4月19日(木)15時と決定された。 5.コメント (1)外務省不祥事の事例のうち、デンバー総領事館の事案について外務省は「公邸の賃料を水増しした賃貸借契約を締結する等の不適正な経理が行われていた」とぼかしているが、新聞では「家族の食費は機密費から出せ パーティーで使ったことにして 総領事夫妻平然と命令」と報じられたものである。外務省が挙げた事案はその他パラオ大使館とケニア大使館だけである。ニュージーランド大使館、キューバ大使館など機密費が絡むとして報じられた不祥事については説明していない。 (2)間接接触が秘匿性があるとするが、訪問者と大使館員との間で打合せが行われるのは当然のことであり、苦しい説明になっている。 (3)「58件の間接接触以外はすべて直接接触で、情報入手と外交工作に使われた」とするが、その中に相当数の、日本人訪問者に対する二次会、休日などの接待、外国機関関係者の名前を借用した仲間内での飲食供応が含まれているはずである。 |
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(鈴木祥宣記) |