中央省庁情報公開度調査と結果
(情報公開度ランキング)
2001年7月

情報公開市民センター

− 目次 −
1、はじめに

2、調査の目的

3、情報公開請求の概要

4、開示文書

5、評価項目・採点基準

6、開示度の評価結果(ランキング・問題点)

7、開示文書に見る問題点

8、まとめ

表1:平成12年度各省庁の3費目の予算一覧

表2:中央省庁情報公開度ランキング採点表

表3:中央省庁情報公開度ランキング

表4−5:大臣交際費・諸謝金の内容・開示度と問題点

表6:情報公開制度の運用状況

特定非営利活動法人 情報公開市民センター
〒160-0008 東京都新宿区三栄町10-1橋爪ビル2階
Tel:03-5368-1520 Fax:03-5368-1521
E-mail:info@jkcc.gr.jp
URL:http://www.jkcc.gr.jp

中央省庁情報公開度調査(情報公開度ランキング)
2001年7月
特定非営利活動法人 情報公開市民センター
1,はじめに
 情報公開市民センターは、国の情報公開法が今年4月1日に施行されたのを受けて中央省庁に対して、大臣交際費、諸謝金、報償費の支出調書・支出証拠書類等の情報公開を請求した。5月から6月にかけて開示(部分開示および不開示を含む)を受け、その文書を分析し、問題点を洗い出して省庁の情報公開度のランキングを行った。
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2,調査の目的
 情報公開市民センターの設立の目的は、全国の特定非営利活動法人や市民オンブズマン団体その他の市民団体および個人が情報公開法や地方公共団体の情報公開条例を利用して行政文書の開示を請求し、かつ正当に開示を受けることを支援することにある。当センターは、法施行に際して各省庁が原則開示を遵守していることを確認し、もし、正当な開示が受けられないで異議申立もしくは処分取消訴訟をする人があれば、それを支援し、かつ自らも是正を求める活動を行う。
 今ひとつ、重要な役割は中央官庁の公開度を高めることである。全国市民オンブズマン連絡会議が、地方公共団体の情報公開度ランキングを継続的に行うことにより、各自治体間で公開度を競わせ、全体として開示度を高めることに寄与している実績を踏まえ、当センターも同じ手法で全省庁の開示度の向上を促進しようと、この調査およびランキングを計画した。
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3,情報公開請求の概要
3.1 請求対象省庁
 1府11省庁 + 1院
  内閣官房、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省
  農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛庁、会計検査院
外務省については、4つの在外公館(在米、在仏、在中国、在フィリピン各大使館)も請求の対象にした。

3.2 請求情報と請求対象期間
    大臣交際費        2000年4月分から12月分まで。
    諸謝金(大臣官房部局分) 2000年2月分および3月分
    報償費(大臣官房部局分) 2000年2月分および3月分。
 ・請求期間は文書の量などにより一部増減あり。
 ・報償費については、大臣官房に予算を持っている6省庁(内閣官房、総務省、
  法務省、外務省、厚生労働省、防衛庁)に開示請求した。
 (表1:平成12年度各省庁の3費目の予算一覧
  請求情報の合計は43件51項目。

3.3 開示請求書提出日
 4月2日(月)に当センターのメンバー10数人および東京・市民オンブズマンその他が各省庁に開示請求書を持参し、情報公開窓口で必要に応じ係員と協議の上、文書を特定し提出した。(防衛庁のみ4月3日に提出)
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4,開示文書
4.1 開示決定等の通知書の受領
 法定期限である30日目の5月1日付で、各省庁から開示決定等通知書(または不開示決定通知書、開示期限延長通知)が郵便で発送され、当センターへは連休明けの5月7日までに配達された。
  開示決定された項目数は25項目。

 期限延長の通知は6省庁26項目であった。
期限延長分について、当該省庁は30日間の延長期限一杯の6月1日付で開示決定通知を郵送し、6月5日頃に受領した。

 全面不開示決定は、内閣官房、内閣情報官、外務省、在外公館、防衛庁の報償費であった。(内閣官房、外務省、在外公館の報償費は30日延長のうえ不開示決定)

4.2 開示(部分開示)文書の閲覧・コピー
 文書が実際に開示されるのは、文書の「開示方法の申出書」が受領されてから数日後である。多くは2−3日後であるが防衛庁は1週間後としている。
 このため5月の開示分を実際に閲覧・コピー受領ができたのは5月10日から15日であった。
 6月開示分が実際に閲覧できたのは6月12日から15日であった。

 支出一覧表の開示
 開示された文書が支出一覧表のみで、個別の支出の証拠書類が付いていないものが5省16項目あった。これらについては追加文書の開示を請求し、開示は一番遅い外務省在外公館の証拠書類分が6月29日になった。

 コピーの受領
 当センターは開示方法を原則としてコピー受領としたが、開示文書枚数が200枚以上になるものについては、閲覧の上、必要なページのコピーを100枚程度受領した。
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5,評価項目・採点基準など(表2:中央省庁情報公開度ランキング採点表
 今回の調査は、開示を受けた文書の公開度を中心にチェックを行った。
・開示文書を点検した結果、使途が不適切であると認められるもの、支出額・単価など支出内容に疑問があるもの、証拠書類が不足するものがあった。
 しかし、今回は公開度チェックが主目的なので、このような特異なものについては特記するに止め、後日、対応を検討することにした。
 
 評価の観点は、中央省庁の情報開示への取り組み姿勢をチェックすることとし次の事項に重点を置いた。
   @請求情報に対する開示文書の適切さ
   A開示内容の公開度(地方自治体レベルとの比較を主眼とする)
   B開示決定までの期間
   C手数料・窓口サービス・利用のしやすさ

・報償費についても評価は行ったが、次の理由でランキングの対象から外すことにした。
   @大臣官房に予算を持つのが6省庁に限られている。
   A開示したのは3省だけで、その内容は総選挙表彰、国勢調査ポスター表彰、
    使途・目的不明の渡しきりなど範囲が狭く、金額も少額である。
   B高額の予算を持っている省庁が国家・外交・防衛機密にかかわるとの理由
    で全面不開示にした。

5.1 評価項目
 大臣交際費と諸謝金については、交際相手情報(諸謝金の場合は支出先情報)、使途情報、金額情報が、全面開示されているか、それとも墨塗りで一部不開示とされているか、また開示文書は必要な種類が揃っているかなどを評価した。
 制度運用状況については、複数年度、複数費目の開示請求について請求件数をどう取り扱ったか、開示決定に要した日数、文書特定への協力度合、窓口の対応の適切さを評価した。

5.2 採点基準
  (ア) 点数は満点を200点とした。
  (イ) 上記の評価項目のうち、交際相手(支払先)情報と開示決定日数にウェイトを置いて、各30点を配点した。
  (ウ) 開示文書の種類、文書特定への協力度、窓口の対応に15点。
  (エ) 使途情報、金額情報、件数取扱に10点を配点した。
  これにより交際費と諸謝金への配点がそれぞれ65点、制度運用状況への配点が
  70点、合計200点となっている。

 交際相手(支払先)情報については、評価基準を全国市民オンブズマンの全国自治体情報公開度ランキングに倣い、団体・法人情報が開示されるのは当然とし、個人情報の開示に重点を置いた。
 使途情報については、明確な支出の目的と、具体的な品目名とが記載・開示されているかを判定基準とした。
 金額情報については、墨塗りの有無を評価の基準にした。ただし個人名が開示されている場合は個人別支払額の不開示は不問とした。
 開示文書の種類については、@一覧・合計を示す文書、A伺い文書(事前伺い、支出負担行為決議書)、B支出証拠文書の3種類があるかを評価の基準にした。
 請求件数については、単一年度・複数費目で1件を満点とし、単一年度・単一費目で1件を次善とした。
 開示決定日数については、他の開示請求案件では20日程度で開示決定通知が出ている事例があることを考慮し、20日以内を30点とし、法定期限の30日ぎりぎりの場合は20点、60日を越える場合は0点とした。
 協力度合・窓口の対応については、一斉請求のために訪問した時に「窓口サービスのチェック・リスト」によって複数の者が評価し合議で採点した。
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6,開示度の評価結果(ランキング・問題点)
 前記の評価基準に基づいて採点を行った結果は下記の表の通りである。
   表3:中央省庁情報公開度ランキング
   表4−5:大臣交際費・諸謝金の内容・開示度と問題点
   表6:情報公開制度の運用状況
 総合点は、200点満点に対して145点から110点の間に各省庁が分布し、全体として開示度は高くないと評価される。最高点は環境省、次いで内閣官房、総務省、文部科学省で、最低点は外務省であった。
 評価区分ごとの特徴は次の通りである。

6.1 交際費
(1) 交際費の使途
 多くの省庁で葬儀用供花・香典が大半を占めており、葬儀支出と戦没者追悼式供花だけというところも4省庁ある。地方自治体の場合は首長の選挙民への儀礼用が主であるが、中央官庁は身内・OBの弔事が目立った。
 高額の支出で目立つのは外務省(外交団接待)、内閣官房(花見の会)である。

(2) 交際費の開示度
 葬儀支出の場合、逝去者名・喪主名および省庁との関係については一部の上級幹部、OB以外は墨塗りされている。個人名の墨塗り度合いで開示度を判定しているために葬儀支出のない内閣官房と文部科学省は減点が少なく65点満点で60点の高得点となった。
 厚生労働省は旧の両省とも交際費が大臣等に渡し切りであり、交際相手、使途など一切が不明であり、65点満点で最低の25点となった。


6.2 諸謝金
(1)諸謝金の使途
 謝金の主な使途は下記の項目であった。 
   @ 診療所、健康診断時、健康相談・健康講習会での医師、保健婦等に対する謝礼
   A 職員研修講師に対する謝礼
   B 翻訳、通訳謝礼
   C 審議会、委員会、政策研究会、意見を聞く会等への出席に対する謝礼

(2)諸謝金の開示度
「支出目的および金額」は各省庁とも基本的に開示した。しかし「相手先」について団体名はほぼ開示されたが、個人名については殆どが不開示であった。
環境省、会計検査院の開示度が相対的に高い。(55点/65点満点)
一方、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省は相対的に低い。(40点)
この差の主な要素は個人名の開示度である。
個人名が「個人識別情報」に該当するとしても、公金の支出による公務に関わる情報の開示が直ちに「プライバシーなどの個人の権利利益を損なう」と判断することは出来ない。
個人名であるから無条件に不開示とするのではなく、「不開示にしなければならない理由および根拠」について法に基づいて厳密な判断を要求したい。
中には司法書士試験出題者などの資格試験委員のように、開示されれば問題の傾向が推測され、試験の公平性が損なわれると省庁側が考えていると推測されるものも、法5条1号のみを適用して墨塗りしている。
司法試験、公認会計士・税理士試験のように試験委員が公表されるものもあるときに、本当に不開示としなければならないかの疑問もあるが、仮にそうであるとしても、これは5条6号イが該当するのでないか。
ただし、環境省の環境モニターのように、ボランティア活動の一環として活動し、極小額の謝礼を受けているような場合はあえて不開示を問わないこととした。

6.3 制度運用
 制度運用について最も重視したのは、請求から文書の開示に至るまでの所要日数である。
 当センターの開示請求に対して、すべての省庁が法の規定する30日の期限ぎりぎりの日付で開示等決定書を発送した。他の請求者が行った中央省庁への開示請求や各地市民オンブズマンなどの地方出先機関への請求の中には、30日を待たずに決定通知を出している実例があるため、すべての省庁が減点となった。
 期限延長(30日)をした省庁、個別の支出証拠書類を最初から開示せず追加の請求により開示した省庁はさらに減点した。

 複数の費目についての開示請求に対して、請求件数をどうカウントするかについては、多くの省庁が1費目ごとに1件と扱ったが(5点)、総務省、文部科学省は複数費目でも同一年度であれば1請求1件と扱った。(10点) 担当課 (しかも旧省の課) ごとに1件とカウントした省もあった。(0点)(厚生労働省)
 文書特定への協力度、窓口の対応を加味して採点の結果、総務省、厚生労働省が高得点で50点(70点満点)、最低は開示決定時期が遅く、証拠書類の開示がさらに遅れた外務省の20点となった。

6.4 (付)外務省4在外公館の情報開示
 4カ国の大使館に同じ項目・期間について情報公開請求を行ったが、開示が遅れたために中央省庁の比較ランキングには含めず、別途に開示度と内容の評価を行った。
 得点は96点と外務省本省より低くなった。これは諸謝金の支払先個人名をすべて墨塗りにしていることによる。
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7,開示内容に見る問題点
 支出内容が適正であったかどうかは今回の開示度の評価外とはしたが、やはり関心は持たざるを得ない。
 各省庁の支出内容、および報償費について次のような問題点が指摘できる。

7.1 交際費
@  海外出張土産品の目的・趣旨が明らかでない。贈り先が在外公館の日本人職員が主体であるケース。(文部科学省、農林水産省、国土交通省)
A 記念品などの支出の目的が明らかにされていない。(法務省、農林水産省、会計検査院)
B 高速道路代、レコーダー購入代金、出張旅費不足補填、次長室業務用酒類など、支出内容の適否に疑問がある。(内閣府、国土交通省)
C 年度末の予算消化のためと思われる公邸設宴用材料費の買い溜めが行われている。(在外公館)
D 交際費支出が交際費とODA交際費が60対40のプロラタで行われ、結果、ODA資金が開発援助関連とは思えないものにも使われている。(在外公館)

7.2 諸謝金
 各省の官房部局からの支出のみのデータであるから、氷山の一角とは思われるが、今後とも追跡したい項目がある。例えば
@国民運動推進事業への多額の支出(内閣府)
A外郭団体に対する継続的な多額の支出(内閣府・総務省)
B顧問、OBなどへの顧問料など便宜的な名目による支出(防衛庁)

7.3 報償費(ランキング対象外)
 報償費は6省庁に対して「官房部局から平成12年2〜3月に支出されたもの」について開示を請求した。

(1)全面開示
使  途 金  額
総務省 国勢調査ポスターコンクール 300千円
総選挙大臣表彰 額・花瓶 616千円
法務省 社明運動記念花瓶  262千円
テレホンカード(目的不明) 70千円
厚生労働省 事務次官渡しきり(内容不明) 1,197千円

(2)全面不開示
不開示事由
  内閣官房・内閣情報官
事務の円滑効果的な遂行に支障を及ぼすおそれ(法5条6号)及び他国等との信頼関係が損なわれるおそれ、交渉上不利益を被るおそれ(同3号)
  外務省・在外公館
国の安全が害されおそれ、国際交渉上の不利益を被るおそれ(同3号)情報収集や外交工作が困難になり、外交事務の遂行に支障を及ぼすおそれ(同6号)
  防衛庁
自衛隊の情報業務の実施に支障を生じさせると認められる情報(同3号、6号)や情報提供者の正当な権利利益を害するおそれ(同1号、2号)

(3)報償費の定義と不開示理由
 内閣官房の不開示理由を見ると報償費は次のように定義されている。
 ア 報償費は、事務または事業を円滑かつ効率的に遂行するため、当面の任務と状況に応じてその都度の判断でもっとも適当と認められる方法により機動的に使用する経費
 その上で不開示理由として
 イ このような報償費の性格上、その支出に関する文書を明らかにすることは、事務の円滑かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、法第5条第6号に定める不開示事項に該当する。
 ウ また報償費の具体的な使途には、これを明らかにすることにより、他国との信頼関係が損なわれるおそれ、他国との交渉上不利益を被るおそれがあるものがあり、法5条3号の不開示事項に該当する。
 としている。

(4) 全面不開示の問題点
@ しかし、アの定義にしたがっても報償費のすべてがイまたはウに該当するわけではない。それは総務省、法務省、厚生労働省が報償費を全面開示していることからも明白である。
 例えば外務省については、6月5日に公表された外務省改革要綱で、在外公館での国内からの賓客の接待費を機密費(報償費)から外したり、機密費の支出を削減するなどの方向が示され、機密費には国益上守秘が求められる外交機密費に該当しない部分が含まれていることを自認している。従って報償費の費用項目を一括して全面不開示とする処分は違法である。
A また、開示請求した行政文書は報償費の支出決済文書などであり、そこに記載されている情報は、金員交付の相手方氏名や懇談会の開催場所・開催日・人数あるいは参加者氏名などの会合の外形的事実にすぎないもので、懇談会などの個別的具体的な内容が明らかにされるものではない。このような情報が開示されたからといって、直ちに不開示決定通知書が挙示する事由のおそれが生じるわけではない。
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8,まとめ
1、報償費の不開示で透明度はゼロ
 まず、特筆しなければならないのは外務省、内閣官房等の報償費の全面不開示である。法の第一条を読み直してみよう。
この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。
 これらの省庁の念頭にあったのは上記の目的(第一条)ではなく、不開示条項(第5条)であった。この条項の不当な解釈による「全面不開示」だった。
 国民をあげての関心事である外務省の報償費の開示請求に対して、改革を呼号する総理大臣は何らの関心も示さず、指導性も発揮しなかった。伏魔殿退治をさけぶ外務大臣は、孤軍奮闘するのでなく国民とともに報償費の透明化をはかるべきところを、自らの名前を付した決定通知書によって不開示を通告してきた。
 このような観点から外務省、内閣官房、防衛庁の情報公開度を評価すればゼロである。「知らしむべからず」の行政の根本姿勢に何らの変化もないといえよう。

2、ランキング評価のまとめ
 とはいえ、今回の調査の目的は、省庁別公開度のランキングである。いま少し詳細に比較、分析してみよう。
 (1)窓口対応はおおむね適切
 定型的な請求であったためか、請求から開示まで大きなトラブルはなく進行した。各省庁の窓口もおおむね丁寧、適切な対応であったといえる。
 開示文書についての選定は、各省庁で差が見られた。しかし証拠書類の追加請求に対しては農水省を除いて各省庁ともほぼ適切な対応がとられた。

 (2)開示内容では自治体との差が大きい。
 開示内容については交際相手および謝金の支払先についての個人情報が著名人を除いてほとんど不開示とされた。個人名に第5条1号を適用して一律に不開示としている。地方自治体の情報公開条例での改善の実績が生かされているとは言えず、現時点での地方自治体との格差が大きい。

 (3)省庁別ランキングの特徴
 良い省は環境省および総務省
 環境省が最高点(145点)を獲得した。環境省は職務を全うするためには国民への情報公開が必須であるとの認識が、窓口の応対でも十分に感じられる。
 次点は、内閣官房、総務省、文部科学省(140点)であるが、内閣官房・文部科学省は交際費に葬祭支出がなく、個人名の墨塗りがなかったことが幸いしている。
 総務省は情報公開の取りまとめ担当省であるためか、相対的に原則公開への前向きの姿勢が認められた。窓口対応、担当課の説明も良好であった。
 財務省、経済産業省、会計検査院、内閣府は下限ぎりぎり(135点〜130点)。
 最下位は外務省
 不合格(120点以下)は法務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、防衛庁。
 外務省は報償費の全面不開示を評価の対象外としても最下位(110点)であった。開示遅延や個人名全面墨塗りが主因である。

 (4)異議申し立てと公開請求訴訟
 当センターの役割の一つは国レベルでの情報公開度を引き上げることである。
 その具体的な対応策として、不当な不開示・一部開示に対しては異議申立や公開請求訴訟を提訴することとしている。
 報償費については外務省、内閣官房、防衛庁で国益条項・国家事務への支障条項を盾に全面不開示となったので、当センターは外務大臣を相手取り、報償費文書の不開示処分取消訴訟を6月15日に起こした。また7月18日には同じ趣旨での異議申立を行った。
 総務省の研究会に参加している学識経験者の氏名を墨塗りしたことに対し、個人識別情報にかかわる第5条1号の適用を誤っているとして6月29日付けで異議申立を行った。同様に個人名を墨塗りした省庁もあるが、総務省は情報公開の総括担当省であることから代表として異議申立を行った。

 (5)今後の対応
 今後は開示度の低いケースについて更なる異議申立書の提出、処分取消訴訟なども行うが、これらの進捗状況についてはセンターのホームページを通じて報告することとしたい。
 また、法施行に当たっての当面の目標は、法を遵守せしめ情報公開度の引き上げを図ることであり、そのために各省庁に対して要望書などにより改善を求めることも必要であり、このような活動にも重点を置くこととしたい。
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以上