記事解禁:テレビ・ラジオ 3月20日夕方、新聞 3月21日朝刊
2002年3月18日版

第6回全国(都道府県・政令指定都市)
情報公開度ランキング

全国市民オンブズマン連絡会議

全国市民オンブズマン連絡会議
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(集計・編集)
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《 目次 》
1.はじめに
2.評価の対象等
3.調査結果について
4.まとめ

第6回全国情報公開度ランキング採点基準

都道府県
都道府県総合ランキング(表1)
都道府県開示度ランキング(表2)
都道府県項目別ランキング(表3)

政令指定都市
政令指定都市総合ランキング(表4−6)

任意参加都市総合ランキング(表7)

情報公開度ランキング過去5回の総合順位

第6回全国情報公開度ランキング
2002年3月
全国市民オンブズマン連絡会議
1,はじめに
 第6回情報公開度ランキングを発表します。今回のランキング調査は47都道府県、12政令市と、地元の各市民オンブズマングループが任意調査した27の市の情報公開度を評価しました。今回も昨年発表の第5回ランキングに引き続き、警察の公費支出、議会情報、それに行政の政策形成過程の情報についての公開度の調査を重視する、という方針は維持しましたが、昨年までとは評価項目、配点を変更しました。
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2.評価の対象等
【評価項目・採点基準等】
 文書開示度に関する項目と制度運用状況に関する項目とで評価をしたことは例年通りです。開示度の調査対象情報は、@首長交際費の相手方情報、A議会の海外視察の企画から実施、費用支出までの情報、B県警の運転免許費の委託料中、交通安全協会に対するもの(都道府県のみ)、C自治体の定例庁議等に関する情報、の4項目としました。
 制度運用の対象項目は昨年と異なり、コピー代だけとし、首長交際費の公開請求から決定までの期間の長短を対象項目から外しました。
 都道府県については合計140ポイントを満点とし、それ以外の自治体に関しては県警情報のポイントを除いた110ポイントを満点として、それぞれ100点満点に換算して得点を決定しました。また、例年通り、閲覧手数料を徴収する自治体については順位をつけず、失格扱いとしました。
 首長交際費の相手方情報、警察情報、議会情報、行政の政策形成過程の情報を対象としたことは昨年通りですが、ことしはA議会の海外視察とC庁議等情報について、意思形成過程の面を重視し、なぜそのような政策が決定されたか、その過程が詳細に理解できるものほど高得点が得られる配点としました。これは言うまでもなく、情報公開制度は行政の政策形成過程をどれだけ透明にしたかに重要な価値があると考えるからです。したがって、文書を全面的に公開しても、公開された文書に記載された情報だけではなぜ当該政策が決定されたのかが判然としないような場合には、住民の立場からすれば、一部非公開ないし一部文書「不存在」と変わらないと評価した結果、得点が伸びない場合もあります。
 なお、今回はじめて請求対象とした庁議の資料については、庁議で政策を議論しているところから、庁議を単なる連絡の場としているところまで、各自治体毎に庁議の位置づけが異なります。そして、これにともなって公開された資料の内容や質にも相違があります。このうち、庁議に代わる行政意思形成の場を設けている自治体については、庁議ではなく、実質的に行政意思を形成している会議の資料や議事録を評価対象としましたが、かかる会議を実施していない場合や、庁議以外の意思形成の会議を設けているかどうか判然としない場合には、庁議の資料をもとに評価しました。その結果、得点が伸びない自治体もあります。
 第2回ランキング調査から連続して評価項目としている首長交際費の公開度ですが、今回は昨年(2001年)3月27日に出された、情報公開に極めて消極的な最高裁第三小法廷判決後の最初の調査であることから、この判決の影響がどれだけ広がっているかが注目されました。想像したとおり、最高裁判決に影響された公開をしている自治体も複数見られますが、公開度の高い自治体で最高裁判決の存在を「口実」に公開度を下げた自治体は1つもありませんでした。地方分権の担い手としての強い自覚ないし自負をうかがわせます。
 制度運用状況については請求から開示までの期間を今回は評価項目からはずし、コピー代についてA4一枚を基準とし、1円?10円を満点の30ポイント、11円?20円を10ポイント、1枚21円以上を0ポイントとしました。情報公開請求する者にとってコピー代が無料になることは制度を利用しやすくします。この観点から、前回調査まではコピー代を無料としていた場合に満点を獲得できる配点をしていました。しかし、町村の条例ではコピー代を無料にしているところもあるようですが、制度の利用頻度とコピー量を考えると、都道府県に町村と同じことを期待するのは難しいのではないかと考えました。そこで今回は、様々な分野について膨大な資料を保有している都道府県や政令市についてコピー代を0円とするという運用は実際的ではないだろう、と判断し、コピー代が10円以下であれば満点としました。その反面、10円コピーが社会的にすっかり定着し、さらに10円を下回る業者も増えてきた今日において、21円以上を設定している自治体は、住民が情報公開制度を利用することについてはっきり消極的姿勢をとっていると評価して、0点としました。その結果、今回は10円と20円とで20ポイントの差を設ける結果となっています。これは自治体側からすれば大きすぎる差に思えるかもしれませんが、実際にお金を払う住民の立場からすると、特に公開文書が大量になったときにコピー代1枚が10円か20円かはとても大きな問題(障害)であり、ここをポイント差としてはっきり出すことにした結果です。
 今回、制度運用に関する請求から開示までの期間の長短をはずしたのは、文書の内容や種類が多様化し、自治体によっては文書の写しの作成のために開示が遅れる結果となったことから、点差を設けることが不適切と判断したことによります。決して、請求から決定までの期間の短縮化の重要性を軽視するようになったわけではありません。今後のランキングで対象項目に加える可能性は大いにあります。

【調査日時、方法】
 一部の自治体を除き、昨年(2001年)の11月16日に全国市民オンブズマン連絡会議に所属する各地のグループが自治体宛に情報の公開請求を実施し、開示された資料について開示度を判定しました。なお、今年は兵庫県や福島県など、11月16日より後に県警を情報公開条例の実施機関とする改正条例が施行された自治体がありました。これらについては施行日以後の公開請求の結果を評価対象にする、という考え方もありますが、基準日を11月16日からあまりに大きくずらした場合にはランキングとしての公平さないし正確さを欠くことになります。そこで今回の調査では、2001年11月末現在の運用を基準として評価することとしました。その結果、一部の自治体では、現在の運用と本ランキング調査との結果が相違しています。
 採点、集計は市民オンブズマン福岡と全国市民オンブズマン連絡会議の情報公開度ランキング判定委員会とで共同して実施しました。
 一次評価をした段階で、昨年同様、一次評価結果を各自治体に送付し、一次評価に対する自治体の意見を聴取したうえで、最終的な評価をしました。
 各項目の採点基準の詳細は別紙の採点基準表をごらんください。
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3.調査結果について
【全体の傾向】
 昨年も指摘しましたが、情報公開度を極力高めようと努力している地方自治体と、旧来どおりの閉鎖性を維持すると固く決意している地方自治体との両極分解が進んでいます。
 上位県では今年、愛媛県が宮城県と総合第1位を分け合ったことは特筆すべきです。愛媛県は昨年も高順位にいましたが、今年1位となったのは、議会の海外視察の情報で高得点を得たことが大きな原因です。詳しくは後に説明します。来年以降もこの調子で公開度をぜひとも維持していただきたいと思います。
 最下位グループの県もほぼ指定席化しています。奈良県は議会情報で10点獲得しただけで他の情報については0点でした。宮崎県は庁議情報で10点獲得しただけで他の情報については0点でした。情報公開条例の制度趣旨・条文構造・条文の規定内容はどの自治体でもあまり違いがないのに、これほどの大差がついてしまうことは大いに問題です。奈良県や宮崎県は情報公開度を高める努力を放棄してしまったとしか思えません。その背景には、「情報公開度を高めなくても住民から大した批判はなく、行政に支障が生じるようなことはない」という安心感があるからなのでしょうか。
 政令指定都市は全体的傾向として情報公開に積極的とは言えない状況が続いています。総合順位も、昨年4位だった神戸市が1位になったことを除くと、他の市の順位はほぼ固定しており、失格(千葉市・北九州市)、最下位(福岡市)も変わっていません。市区町村では情報公開度が急速に高まる傾向にあるだけに、政令指定都市は日本の自治体の情報公開の"谷間"になってしまうかもしれません。

【首長交際費】
〔調査の意図〕
 従来、首長交際費は支出基準もなく、だれに対してどのように使われているかが外部からは全く不明で、首長の職にある人の個人的な利害で支出されていた面が多分にありました。公費による事前選挙運動みたいなものです。94年最高裁判決は「相手に不快感を与える」などとして非公開処分を正当化し、このような政治手法を許してきましたが、私たちは大いに疑問を感じていました。そこで、最高裁判所の「お言葉」という権威に頼るのではなく、自治体の問題意識に働きかけることで、個々の自治体の意思によって公開度を高めようと考え、98年に発表した第2回ランキング以降、情報公開度ランキングの項目に入れることになり、今回が5回目の調査です。
 公費である交際費について私たちは、自治体の代表として首長が公的な立場で交際する以上、当然、納税者であり、かつ、様々な政治思想をもっているであろう地域住民が納得できるように使われなければならない、と考えています。そして、納得できるような使い方をしているか否かをチェックする方法が情報公開です。自治体の代表として公明正大なつきあいをしているのであれば、いつ、だれに対して、いくらのお金を、どのように使ったかが住民に分かるようにすべきです。「何でもかんでもつきあいを公開しろ」と言っているのではありません。だれにでも私的なつきあいはあります。それは首長の職にある人についても同様でしょう。私たちの考え方は公金を使う以上、その使途を明らかにすべきだと言っているだけです。公開したくないつきあいは私費で行えばよいのです。公費でどのような使い方をしても住民が何も文句を言わないのなら、住民が「認めてくれている」と理解すればよいではないですか。公費支出である以上、全面的に公開されるべきです。
 このように、交際費情報は首長の情報の公開への姿勢が最も良く現れる項目です。そして今年は、先に指摘した昨年(2001年)3月27日の最高裁判決の影響を受ける都道府県、政令市がどれだけ出てきたかが注目されます。
〔採点基準と採点結果について〕
 今回も前回調査同様、交際費の支出の相手方の公開に焦点を絞って採点しました(勿論、それ以外の項目が重要ではないということではありません。)。
 多くの自治体が最後まで公開をためらっている@「病気見舞いの相手方氏名」の全面公開を最高点(30点)としました。他方、ここ数年、病気見舞いの支出基準(どのような病状のときに支出するかなど)が立てにくいことから、そもそも病気見舞いには公費を支出しないと決めた自治体があり、この場合には不明な支出がなくなったという意味では「病気見舞いの相手方氏名」の全面公開をしているのと同じと評価できますので30点としました。
 A病気見舞いについて場合によっては非公開にすることがある、という自治体については25点としました。
 30点の自治体は、北海道・宮城県・岩手県・鳥取県・岡山県・山口県・熊本県・沖縄県の8道県でした。青森県・秋田県・長野県・東京都・千葉県・三重県・大阪府・兵庫県・愛媛県・香川県・徳島県・高知県・大分県の13都府県が25点でした。対照的に、山形県・茨城県・山梨県・静岡県・富山県・石川県・福岡県・鹿児島県は5点、奈良県・佐賀県・宮崎県は0点でした。
 前回の調査では、相手方は個人も団体もすべて非公開(0点)という態度を続けている県は茨城県・千葉県・山梨県・静岡県・富山県・石川県・奈良県・香川県・徳島県・広島県・福岡県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県の14県ありました。それが今年は3県になったことは「著しい進歩」と言えなくはありません。しかし、「進歩」の中身は昨年3月27日の最高裁判決並み、という超低レベルであり、情報公開に積極的になったという評価はとてもできません。
 なお、0点評価の奈良県は、今年は1件のみ相手方を公開してきましたが、去年の石川県同様、たまたま1件公開しても良いものが含まれていた、ということでは情報公開に積極的姿勢があるとは評価できないので、0点としました。
 政令指定都市では、昨年5点だった広島市が30点を獲得し大躍進しました。「平和政治は情報公開から」という姿勢で今後も情報公開に積極的に取り組むことを期待したいと思います。他の自治体はほとんど横ばい状態で、福岡市が5点から15点に上昇したくらいです。北九州市は前回も今回も0点です。
 任意参加の27市では、長崎市・函館市・和歌山市が30点を獲得する一方で、宮崎市だけが5点でした。

【議会の視察旅費について】
〔調査の意図〕
 これまで、議員の公費による海外視察については公費の無駄遣いだ、との批判が住民から寄せられてきました。私たちも97年夏に福岡で開催した第4回の全国大会で議員の海外視察の問題を取り上げてから、海外視察の内容や成果についての情報の公開や海外視察を公費で行うことの合理性を問題としてきました。いずれにしても、公費による海外視察の当否を検討するためには、視察の行程、結果や視察に要した費用の公開はもちろんのこと、だれが(人選)、なぜその国に視察に行くことにしたのか(目的ないし必要性)、なぜ当該旅行代理店を選んだのか、といった、海外視察の企画、立案段階の情報が市民に公開されることが重要のはずです。このような観点から今回は、2000年4月から2001年10月までに実施した海外視察の企画、立案から視察内容、視察結果、支出した公費の金額までの情報のうち、どれだけの情報が公開されているかに着目して評価しました。
〔採点基準と採点結果〕
 満点の30点は、その国に海外視察先として選定した理由や当該旅行社を選定した理由が情報として公開されている場合で、25点は海外視察先選定理由はわかるが、当該旅行社を選定した理由まではわからない場合、20点は当該旅行社を選定した理由はわかるが、海外視察先を選定した理由がわからない場合です。15点になると、海外視察先を選定した理由等を記載した企画書が抽象的で、なぜ当該視察を行うことにしたのか、十分に理解することが難しくなっています。10点以下は企画書が公開されないか、作成されていないもので、海外視察の合理性を市民が判断するための資料の公開が不十分なものです。
 今回30点を獲得したのは愛媛県です。この点数を決定づけたのは公開された文書中の1枚のコピーでした。それは「今任期中における議員の海外視察の基本方針について」と題した文書で、「今任期における議員の海外視察については、次のとおり基本方針を決定し実施する。」と書いた上で、「基本方針」として5項目を挙げていました。「1 任期中に全議員が海外視察を行う。」「2 視察先は、各年の視察団によって決定する。」「3 日数は14日間程度とする。」「4 視察団は県単独とする。」「5 視察人数は各年13人程度とし、人選は当選回数の多い議員からとする。」というものです。「議会活動上の実際的具体的な必要性があって、そのテーマをずっと追及してきた議員が国内調査では限界があるということで、目的を果たす場として最もふさわしい場(国)に出かけて行く」というのではなく、「議員全員が任期中に1度は行く、どこへ行くかはそのときどきのメンバーが好きに決めればよい、人選では当選回数の多い議員の意思を優先する・・。」-なんとわかりやすい説明でしょう。海外視察をこのように決めることの是非はともかく、非常にわかりやすい文書であることははっきりしています。今回のランキングの意図にはぴったりの公開だったということで、30点をつけることにしました。多くの議会では、当該議会が直面している重要課題との関係と訪問先選定の関係がわかりませんし、また多人数で行かなければならない理由もわかりません。訪問先に対する迷惑ということも考えれば、必要最小限の人数で出かけるべきです。愛媛県議会の海外視察はこのようなものと全く異質ですが、それはそれで愛媛県議会の考え方がはっきり分かるという意味で、情報公開度という観点から高く評価することにしました。
 25点を獲得したのは群馬県です。群馬県はどうしてその旅行社が選ばれたのかという選定過程の情報が不十分であったため、満点とはなりませんでしたが、視察先の選定についての企画書の記載は今回調査した自治体中、もっとも充実していました。群馬県といえば、以前、議員が南極に視察に出かけたことが明らかになり、全国的に有名になったところですが、これをきっかけとして視察先の選定過程について疑義を持たれないように、詳細な企画書を作成するようになったのかもしれません。
 これに対して、北海道・宮城県・山形県・長野県・愛知県・滋賀県・鳥取県の7道県から、「議会の視察企画は旅費を議員に渡すだけなので旅行業者を選ぶ書類などはない。全部公開しているのに15点はひどい」という趣旨の意見がありました。15点の議会として例えば、秋田県議会があります。その公開文書には「研修目的」として「欧州の地球環境にやさしいエネルギーや農業生産様式の実態等の状況調査」とあり、「研修地」は「スイス、ドイツ、デンマーク」、「研修議員」として8名の議員の氏名が書かれていて、「研修項目」には「デンマーク 1.エコ・ミュージアム(2カ所)の管理運営方式。 2.風力発電事業の経営実態。 3.有機農業の経営方式。」「ドイツ 4.クアハウス(温泉保養地)の現状と将来展望。 5.有機農業(主としてりんご栽培・りんご加工)の現状と課題。」「スイス 6.ワイナリー視察 7.その他」とあるほか、日程表がついています。どうしてこれらの課題と訪問地が決まったのか、これでは何も分かりません。こんな簡単な文書で視察旅費が公金で出てしまうことこそが異常なのです。役所の中ではだれも疑問に思わないのでしょうか。
 住民側からすれば、議員の公費による個々の海外視察が現に当該自治体がかかえている問題との関係で果たして必要性の高いものなのかどうかということを、十分な資料に基づいて検討できる必要があるのです。言い換えれば、必要性などない場合に、「必要性のない海外視察であること」が公開された文書からはっきり分かれば、それはそれで情報公開の点では高く評価できるのです。
 他方、0点は千葉県・富山県・岡山県・広島県・長崎県・宮崎県の6県でした。このうち、長崎県は「不受理」としていますが、長崎県行政手続条例上、「不受理」は許されないのではないでしょうか。「不受理」だと手続上、請求行為がなかったことになってしまいます。受理した上で「文書不存在」を理由として公開拒否処分をしないと、請求者が当該処分を法的に争う道を閉ざすことになります。富山県は任意提供として海外視察先の一覧表が出ましたが、私たちとしては権利として請求できるかどうかに重点を置いているので、今回は0点としました。富山県は今年4月から議会が実施機関になるということなので、次回の躍進を期待したいと思います。なお、長崎県は今年3月から、千葉県・新潟県は今年4月から議会が実施機関になることになっています。
 政令指定都市では、川崎市の20点が最高得点で、北九州市がここでも0点でした。
 任意参加の26市では、新潟市と岡山市の20点が最高得点で、福島市・上野市の5点が最低でした。

【運転免許費中の交通安全協会に対する委託料】
〔調査の意図〕
 警察情報として今回選定したのは、交通安全協会に対する運転免許費による委託料に関する情報です。交通安全協会は警察職員の有力な天下り先で、交通安全行政に関する委託料として莫大な公費が支出されています。協会に対する公費支出が適切に行われているかどうかをチェックするためには、積算根拠の公開が必要です。しかもこれは個別の犯罪捜査に関与しない情報で、公開しても犯罪捜査への支障は生じるはずはないため、全面公開されて当然のはずです。
〔採点基準と採点結果〕
 積算根拠が詳細に説明されている順に30点、25点とし、項目の名称と項目毎の金額がわかる場合には15点、委託業務毎の総額がわかる場合が10点、総額のみがわかる場合を5点としました。これについては積算資料を非公開とする合理性などないはずですが、東京都はこれをも非公開としてきました。ふだん強気の発言が多い石原慎太郎知事も警視庁にはかなり遠慮があるようです。
 30点は宮城県・滋賀県・愛媛県の3県でした。例えば、宮城県では支出負担行為決議書・支出命令決議書・請求書・検収調書・実施報告書が全面的に公開され、各運転免許センターの講習実施状況が詳細にわかる内容になっています。
 25点は北海道・茨城県・埼玉県・山梨県・愛知県・大阪府・島根県の7道府県でした。
 0点は青森県・福島県・群馬県・岐阜県・福井県・奈良県・兵庫県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県の14県でした。
 情報公開請求した「支出明細」の中には、交通安全協会と知事との間の会計関連文書があるはずですから、これは知事の責任において管理しているはずです。「不受理」「不存在」というのは納得できません。長崎県はここでも「不受理」としていました。「不存在」には2つのタイプがあり、1つは「不存在」を理由に非公開とし、不服申立ができることを告知している県(福島県・群馬県・千葉県・福井県・岐阜県・奈良県・岡山県・熊本県・大分県・鹿児島県)と、もう1つは単に「不存在」であることを知らせているだけの県(佐賀県)があります。広島県は「条例の適用がありません。」という書き方をしているだけで、不服申立ができることの告知をしていません。不服申立はできないということでしょうか。
 なお、兵庫県・福島県は2002年3月現在では県警が情報公開条例の実施機関になっており、交通安全協会に対する委託料の情報も積算根拠まで公開する運用をしているようです(25点相当)が、今回の調査は昨年11月中の運用を基準としました。その結果、両県は県警が条例の実施機関となっていない前提での評価となっています。次回ランキングでの高得点を期待します。

【庁議の議事録・配付資料】
〔調査の意図〕
 情報公開制度は行政の政策形成過程の情報を公開してこそ、民主主義の手段として有効になります。今回は自治体の政策を形成する会議として、多くの自治体で庁議と呼ばれている自治体幹部の定例会議の資料、議事録を評価の対象とすることを意図しました。ところが、調査前の私たちの予想に反し、庁議を政策形成の場として利用せず、既に決定した政策についての連絡の場としているに止まる自治体が多く見られました。庁議についてこのような位置づけをしている場合には、議事録はつくられません。尤も、このような自治体の中にも、庁議に先立つ会議をもうけ、そこで政策を決定する、という自治体もありました。そこで、庁議に至る過程で政策形成の会議を実施している場合については、そのような会議の資料を対象としましたが、それ以外の自治体では行政のどの会議で重要な政策決定がなされているかがわかりませんでした。
 庁議の場で政策が決定されず、さらに、行政内部で政策を決定する場が存在するかどうかもわからない場合には、庁議に関する資料を評価の対象とすることが適切かどうか、私たちの間でも議論がありました。しかし、どこで政策形成の会議をしているかがわからない、という事自体、人事異動の激しい行政組織において、事後的にいつ、だれが、どのような議論をして出た結論なのかを検証できないということに繋がります。結論さえ決まれば、そのための議論や理由などどうでもよいというのが現場の感覚かもしれませんが、自治体の政策決定に重大な関心を抱く住民としては困ります。政策形成過程の情報が十分に公開されなければ意味がありません。
 議事録が作成されていない場合でも、せめて庁議に提出された資料の公開だけでも十分になされるべきです。以上の観点から、庁議以外に政策形成のための会議の存在がわからない場合には、庁議に関する資料を対象として採点をしました。
〔採点基準と採点結果〕
 政策形成にあたって、どのような意見が出されたかが重要です。したがって、議事録を作成し、それを公開している場合には、議事録に記載された情報の質に応じて15点?20点を配点し、資料のみの公開をしている場合には10点としました。庁議を政策形成の場としていない場合には議事録を作成することはまずないでしょうから、庁議以外の政策形成の会議がないか、かかる会議の存在が公になっていない場合には、10点未満の得点しか得ることはできません。
 20点は、北海道・秋田県・宮城県・群馬県・長野県・石川県・岐阜県・滋賀県・大阪府・鳥取県・徳島県の11道府県でした。例えば、北海道では、「庁議の概要」という文書を作成しており、各課題ごとに説明者・質疑応答者の発言内容が詳細に書かれています。宮城県では庁議は結果発表の場として位置づけられており、実質的な議論が行われる政策会議での議論の内容が詳細に記録されています。
 15点が11県で、10点が24都府県でした。
 議事録を作成していない県は23都府県ありました。福島県・茨城県・栃木県・埼玉県・千葉県・東京都・山梨県・新潟県・富山県・福井県・愛知県・和歌山県・京都府・奈良県・広島県・岡山県・島根県・愛媛県・福岡県・大分県・佐賀県・長崎県・熊本県です。庁議が重要な政策決定の場になっていないということなのでしょう。但し、栃木県は今年1月から議事録を作成し、ホームページで公表するようになりました。
 千葉県は他の自治体と異なり,提出資料と討議資料があり,提出資料は公開しましたが、討議資料を非公開としました。その理由は、「討議資料は、検討又は協議に関する未成熟な情報であり、開示することにより、県民の誤解や憶測を招き、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがあるため。」とのことです。討議資料はどの自治体でも未成熟な情報です。それを理由に公開しないという堂本暁子知事は、千葉県民の意識レベルを他の自治体に比べて相当低く見ているのでしょうか。重要資料を公開していないということで5点にすることも検討しましたが,他の自治体が資料として公開しているようなものは提出資料として公開しているので,10点としました。
宮崎県は議事録を作成していますが,一部非公開で出て来た議事録は発言部分がすべて墨塗りになっていたので,千葉県と同じ評価をすることにしました。
 奈良県は唯一、0点でした。討議資料も議事録も一切作成していないというのです。一体、どんな会議をしているのでしょうか。まるで「証拠を残すな!」と言わんばかりの、秘密結社の会議です。
 政令指定都市では、20点は広島市だけでした。大阪市は0点でした。
 任意参加市ではかなりのばらつきがありました。20点は24市中、宇都宮市・綾瀬市・高知市・長崎市の4市もある一方で、0点は福島市・尼崎市・大分市・日田市・臼杵市の5市もありました。

【制度運用】
〔調査の意図〕
 先に述べた理由から、今年はコピー代のみに着目し、昨年と比較して、コピー代のウエイトを高めました。コピー代が安価であることが充実した情報公開制度には不可欠だからです。
〔採点基準と採点結果〕
 今回は評価の基準も昨年までとは変え、一枚21円以上のコピー代を徴収するところは一律0点としました。また、10円までのコピー代を徴収する場合には満点の30点を配点しましたが、これは事務事業が広範にわたり、請求件数も多い都道府県や政令市などについては、コピー代0円とする政策は現実的ではない、と考えた結果です。ただ、これは都道府県や政令市の場合に関するものであって、政令市ではない市や町村などの条例については、コピー代を0円とすることが理想でしょう。また、今後、コピー代について公益減免制度を採用する自治体が現れるならば、コピー代の金額の低さとは別に評価する必要が出てくるでしょう。
 昨年、コピー代は1枚10円とする地方自治体が16ありました(岩手県・秋田県・宮城県・福島県・千葉県・神奈川県・石川県・福井県・長野県・静岡県・岐阜県・愛知県・三重県・大阪府・愛媛県・大分県)が、今年は新たに群馬県・埼玉県・京都府・徳島県・沖縄県の5府県が増え、21府県になりました。日本一の高額県は新潟県・富山県・佐賀県の3県で、コピー1枚につき30円です。高いコピー代をとる自治体は総合順位でも最下位に近い位置にランクされるというはっきりした相関関係があります。
 政令指定都市は12市中、9市(札幌市・仙台市・千葉市・川崎市・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市)が10円で30点、3市(広島市・北九州市・福岡市)が20円で10点でした。ここでも北九州市が総合最下位、福岡市が総合最下位から1つ上というランクになっています。
 任意参加市は26市中、20市が10円で30点、6市が20円で10点でした。
 これからはコピー代10円がすべての自治体に広がり定着し、さらに公益減免制度を採用する自治体が出てくるでしょう。

【失格について】
 閲覧手数料を徴収する自治体は昨年同様、失格としました。
 都道府県での失格は東京都だけです。情報公開法の場合と異なり、情報公開請求するときには手数料は徴収されません。文書不存在の場合には払う必要がありません。しかし、閲覧のときに1枚につき10円を徴収され、上限が100円とされています。閲覧後に写しの交付を受ける場合と写しの交付だけを受ける場合とは同じ扱いになっており、コピー代1枚20円のほかに、対象文書の枚数に応じて1枚につき10円、最高100円を払わなければなりません。要するにコピー代20円のほかに1件につき最高100円をプラスするということですが、「1件」の数え方によってはかなりの負担になることは間違いありません。東京都だけがあえてこのような手数料を徴収しなければならない理由はないのではないでしょうか。
 香川県では条例の規定では閲覧手数料を徴収するとしつつ、同時に公益減免を規定しています。そして香川県の「行政文書公開手数料減免事務取扱要領」では、手数料の減免基準を規定し、「ア 人の生命、身体及び健康の保護のためになされる請求」「イ 人の財産及び消費生活の保護のためになされる請求」「ウ 環境保全のためになされる請求」「エ 県の予算の執行及び財産の管理等について適正な事務執行の確保のためになされる請求」を挙げ、幅広く減免が認められるような規定の仕方になっています。しかし、せっかく制度を作っても、それが住民に知られず利用されていなければ意味がありませんから、実情がどうなっているかを香川県に問い合わせ、文書で回答をもらいました。回答によると、情報公開請求の窓口に公益減免ができることを掲示し、請求者には公益減免手続を必ず説明し、実際にも営利目的以外は広く減免の運用がなされているとのことでした。このような実態を踏まえて、香川県については失格としないことにしました。
 政令指定都市では、前回手数料を徴収していたのは千葉市、北九州市でしたが、今回も同様でした。任意参加市では、福島市と尼崎市が失格です。
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4.まとめ
 宮城県・愛媛県・岩手県・長野県・北海道・秋田県はほぼ安定的に上位を占めるようになりました。大阪府は10位から3位へ、埼玉県は20位から6位へ、滋賀県は20位から11位に躍進しました。愛知県は第2回、第3回で最下位にランクされたのが、第4回で一気に5位に上昇し、第5回で17位に落ち、今回は6位と、かなり順位変動がありますが、概ね上位を占める方向になってきているようです。
 九州地方では、沖縄県が他の県を引き離して常に上位の位置にいますが、今回、大分県が宮崎県(最下位)・佐賀県(43位)・長崎県(40位)・福岡県(37位)・鹿児島県(37位)・熊本県(23位)を引き離して、14位につきました。各項目で得点していることからすると、沖縄県と並んで九州地方の期待の星になるかもしれません。
 他方、高知県は第2回で6位、第3回で9位、第4回で4位、第5回で3位と上位安定かと思われましたが、今回は議会・警察で得点できなかったことと、コピー代が20円であることが響いて、18位に落ちました。
 三重県も第3回で2位、第4回で3位、第5回で3位だったのが、今回は11位に落ちました。原因は、議会・警察で得点できなかったことです。高知県ほど落ちなかったのはコピー代が10円だったからです。
 最下位は宮崎県と奈良県でした。宮崎県は首長交際費・議会・警察が0点、奈良県は首長交際費・警察・庁議が0点でした。宮崎県は、第1回で37位、第2回で35位、第3回で41位、第4回で42位、第5回で43位(下から2番目)という経過を辿っています。
 奈良県は、第1回で8位という上位にランクされながら、第2回で16位と陰りが見え始め、その後、第3回で20位、第4回で35位、第5回で38位と転落の一途を辿り、そしてついに今回、最下位になってしまいました。
 昨年から、一次評価をした段階でその結果を各自治体に送付し、一次評価に対する自治体の意見を聴取したうえで、最終的な評価をするという方法を採用することにしましたが、昨年以上に多くの自治体から質問や抗議が殺到しました。
 質問では、「採点基準を事前に明らかにしてほしい」というものがありました。通常の試験であれば、そうすることが公正だと思います。しかし、私たちの情報公開度ランキングは、すでに出来上がっている完成品を基準に評価するのではなく、日々、「進化」しつつある制度とその運用を利用者の立場から評価するものです。どこの自治体にもできる当たり前のことはあえて高い評価を与えませんが、多くの自治体にできていないことを実行する自治体には高い評価を与えることにしています。そのため、評価すべきかどうか、どれくらいに評価すべきかは、全国から公開された文書が集まってみないと、どうにも決められないのです。
 抗議では、前記の議会の視察旅行に関するもののほか、交通安全協会に対する運転免許費の委託料に関する文書について、「実施機関になっていない警察が文書を管理している」というものもありました。私たちは実行不可能なことを要求するつもりはありません。実際にどこかの自治体が行っている情報公開や、行おうとしている情報公開を、全国的に広めたいと考えているのです。ですから、「ウチの県とアソコの県では制度がちがう」ということは、私たちに対する説明にはなりません。どのような条例を作り、どのように解釈運用するかは、各自治体の判断に委ねられているのです。
 私たちは全国の自治体の情報公開条例の更なる進化を期待しています。自治体の情報公開度が高まれば、住民の主権者意識(責任意識)も確実に育っていくはずです。
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以上

第6回全国情報公開度ランキング採点基準




30






30点 相手方の個人名まで全面公開 病気見舞いの個人名まで原則開示
25点 一部の個人名のみ非公開 病気見舞いは一部非開示
20点 非個人の公開+個人名のほとんどが公開 病気見舞い以外の個人名はすべて開示
15点 非個人の公開+個人名の一部の公開 個人は相手により開示、一部非開示
10点 非個人の公開+個人名の非公開 法人・団体名のみ開示
 5点 非個人の一部の公開(個人一部公開も含む) 法人・団体名も一部非開示
×  0点 全面非公開  

 
 
30




30点 詳細な企画書(視察先)及び選定過程(旅行社)のわかる文書の存在と公開
25点 詳細な企画書(視察先)はあるが選定過程(旅行社)を欠くもの
20点 選定過程はわかるが詳細な企画書がないもの
15点 企画書があるが具体性がない
10点 会計文書、報告書の存在と公開
 5点 会計文書のみの存在と公開
×  0点 全面非公開(不受理、不存在、非公開を含む)


*




*
30









30点 支出の内訳を開示するか、もしくは積算根拠の説明文がある
25点 積算根拠(明細の数字)までわかる
20点 積算項目の名称・金額がわかるとともに、その執行結果の件数内訳等が公開される
15点 積算項目の名称・金額がわかる
10点 委託の業務ごとの総額がわかる
 5点 総額のみ開示
×  0点 全面非公開(不受理、不存在、非公開を含む)





20


 
20点 発言内容ないし議事の過程がわかる 庁議に至る意思形成過程の会議等の議事録でも可
15点 議事の結果及び資料の公開
10点 議事の結果または資料の一方のみ公開  
×  0点 全面非公開 議事録及び資料を作成していない





30




30点 一枚1円〜10円   
10点 一枚11円〜20円
× 0点 一枚21円以上

閲 覧
手数料
都道府県 東京都
政令都市 千葉市、北九州市
合計 140点 (政令都市および一般参加は110点)
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