1,はじめに |
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今回で情報公開度ランキングの発表も8回目になりました。調査方法は過去7回と同様に全国市民オンブズマン連絡会議に所属する日本全国のオンブズによる実際の情報公開請求に基づいて入手した資料を基礎とし、これに各自治体に情報公開条例の運用の実態を直接問い合わせた結果を加味して評価しました。各地のオンブズの調査は2003年の11月、情報公開条例運用実態の追加調査は2003年12月を基準としました。そのため、一部の自治体では現時点の運用の実態と評価が食い違う結果となっています。評価対象自治体は47都道府県、13政令市のほか、地元の各市民オンブズが任意に情報公開請求した25の市です。
評価の基準は全国市民オンブズマンのメンバーによる第8回ランキング判定委員会によって作成され、これに基づく資料の評価と調査は名古屋にある全国事務局のメンバーが担当しました。調査対象資料は定期監査の資料が膨大なこともあり、A4判の厚さ約8センチのファイル50冊分に上りましたが、すべての書類を複数名で目を通し、協議し、自治体に確認のうえ評価を決定しました。今回の調査にも、全国市民オンブズマン連絡会議に加盟する50を越えるグループとそのメンバーが参加しました。
なお、今回、物品購入の予定価格の情報としてA4コピー用紙の予定価格情報を調査しましたが、情報をチェックするうち、情報公開度とは違った意味で興味深い結果が現れました。全国の警察が支出した激励慰労費についても、私たちの情報公開度ランキングが全国初の調査となります。これらは情報公開度ランキング調査の副産物ともいえるデータですが、今後の市民オンブズの活動に重要な示唆を与える可能性のある情報と考え、末尾に掲載しました。
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2.評価項目・採点基準等 |
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評価の項目は例年通り、文書の公開(透明)度と制度運用状況から構成しました。 |
(1) |
文書の公開(透明)度
47都道府県の公開度の評価対象情報と配点は次の通りです。 |
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首長、部(局)長交際費の相手方情報(15ポイント) |
A |
直近の県警に対する定期監査の資料(45ポイント) |
B |
入札書類の予定価格情報(20ポイント) |
C |
土地開発公社の取得土地に関する情報(40ポイント) |
D |
県警の激励慰労費の支出に関する氏名(10ポイント) |
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(合計得点130ポイント) |
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土地開発公社のない東京都と愛媛県では住宅供給公社の情報の公開度を、激励慰労費を支出していない県警では県警の出張旅費または食糧費の公開度を評価対象としました(それぞれの自治体の一覧表にその旨を表記しています)。
また、県警のない政令市、その他の市についてはDをはずし、Aの監査書類は教育委員会に対する定期監査とし、満点を120ポイントとして評価を実施しました。 |
(2) |
評価対象の変更 |
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評価対象情報中、昨年から引き続いて調査しているのは交際費の相手方情報と定期監査の資料のみです。入札書類、土地開発公社の情報については過去のランキングでも調査対象としたことがありますが(入札は第3回、土地開発公社は第4回)、入札書類についてはこれまで実施したことのない業務委託と物品購入に関する入札予定価格情報を、土地開発公社の情報については土地開発公社自体が条例の実施機関となっているかどうかも含めて評価するなど、ひねりを加えました。また、私たちが数年前から注目している警察情報の公開については、公費で飲食することが認められている数少ない費目である激励慰労費情報を取り上げました。
県警に対する定期監査の資料については昨年に引き続き2回目です。政策形成過程の情報公開を重視する、という観点から、配点を高くしたのもこれまで同様です。
交際費については、あの不当な最高裁判決の悪影響をチェックする意味もこめて例年通りのいわば「定点観測」ですが、今回は首長交際費に限定せず、部(局)交際費の公開実態も調査しました。これは一部の自治体で首長交際費の公開度と部長交際費の公開度を異にする運用をしている例があったからです。そして今回は、公開度が異なるような場合には、公開度の低い方を基準として評価しました。 |
(3) |
制度運用 |
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評価項目はこれまで同様コピー代だけとし、A4判1枚を基準としました。
閲覧手数料を徴収する自治体は「失格」として順位をつけないことも例年通りです。該当したのは東京都だけでした。 |
(4) |
総合ポイントと配点 |
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その結果、都道府県については合計160ポイントを満点とし、それ以外の自治体に関しては150ポイントを満点として、それぞれ100点満点に換算して得点を決定しました。
例年同様、開示された文書の評価に際しても、単に公開、非公開のみを判断するだけでなく、議論の過程が詳細に汲み取れるような記載がなされているかどうか、という、文書から得られる情報の量と質に着目しました。そのため、記載されている情報が刊行物で既に公にされているものと大差ない場合には得点が伸びないという結果も発生しました。 |
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3.調査期間、方法 |
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一部の自治体を除き、昨年(2003年)の11月18日に全国市民オンブズマン連絡会議に所属する各地のグループが自治体宛に情報の公開請求を実施し、開示された資料に追加調査結果を加味して一次評価を行いました。主な追加調査事項は、交際費支出の相手方情報の公開基準の有無と予定価格を公表する運用をしているか否か、という点です。
一次評価をした段階で、その評価を各自治体に送付し、3月5日を期限として自治体の意見を聴取したうえで、最終的な評価を決定しました。
各項目の採点基準の詳細は、別紙の採点基準表をご覧ください。 |
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4.調査結果 |
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(1) |
全体の傾向 |
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@ |
宮城県1位陥落、福井県の躍進、東京都の最下位 |
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今回のランキング調査の項目で知事を実施機関とするものは交際費関係情報と入札関係情報だけです。したがって、知事だけが情報公開に熱心であっても、監査書類や県警関係書類の公開が遅れている場合には得点が伸びません。そういう点では、自治体全体での情報公開への取り組みが問われる結果になっています。
調査結果からは、新たに評価の対象とした物品購入契約と業務委託契約の予定価格情報の公開と土地開発公社の情報の公開度で差がついた、という結果となりました。昨年まで通算6回、99年発表の第3回ランキング調査以来5回連続して1位を守ってきた宮城県が今回6位に後退したことなどはその典型的な例と言えます。宮城県の最大の敗因は、土地開発公社を条例の実施機関とする条例改正が行われていないこと、地番ごとに取得価格を公開していないことの二点で、土地開発公社の情報の公開度の得点が伸びなかったことが挙げられます。鳥取県、岡山県では土地開発公社を既に条例の実施機関としていますし、福井県、岐阜県、三重県、京都府、沖縄県の5府県では地番ごとの取得価格を公開しています。
宮城県にかわって首位にたったのは鳥取県です。2位は三重県、3位は和歌山県、福井県、5位は山口県です。三重県、和歌山県、鳥取県、山口県はこのところ上位にいますが、昨年26位の福井県のベスト5入りは大躍進と言ってよいでしょう。福井県は昨年、新知事が誕生しました。知事の姿勢が情報公開をすすめる原動力となっていることからみれば、新知事は少なくともこの一年は情報公開に積極的に取り組んでいると評価できると思います。
一方、今回、公開度(透明度)で最下位となったのは東京都です。東京都は閲覧手数料を徴収することで失格となり、総合順位はつきません。しかし、透明度の観点のみから見ても今年もっとも情報公開度の低い都道府県となった訳です。カンニングをして失格となった答案を採点したら赤点だった、というようなもので、どの観点から見ても首都東京は日本の情報公開のワースト1です。東京都の情報公開の貧弱さはすべての評価項目に共通しています。
東京都は土地開発公社を持っていませんから、この項目では住宅供給公社を対象としました。そして、この項目では3ポイントしか獲得できなかったことについて東京都から、評価対象が異なる以上、不公平だ、とのクレームが寄せられましたが、東京都と同様に住宅供給公社を評価対象とした愛媛県では24ポイントを獲得しています。
そのほか、東京都では物品購入と業務委託に関する入札の予定価格はまったく公開せず、激励慰労費を警視庁は2002年度に1年間で1億2300万円(!)も飲食に使っていながら、これを用いた飲食会の出席者を公開しない、警視庁の定期監査での委員の質疑内容の公開もないなど、今回の調査における東京都の情報公開の運用には見るべきところは全くありません。
情報公開制度は市民が行政に参加するためのものです。今回、東京都の情報公開度が全国最悪となったのは、石原知事の権力的な姿勢がもたらしたと言えるかもしれません。原因はともかく、首都東京の情報公開に対する消極的な姿勢は強い批判に値します。 |
A |
情報公開の低迷地区九州 |
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去年最下位の長崎県は41位、福岡県はさらに悪く44位、熊本県が40位、鹿児島県が36位、宮崎県が30位、大分県が23位、最も順位の高い佐賀県でも17位と、相変わらず九州地方の低迷が続いています。なぜ九州はこれほどまでに情報公開に不熱心なのでしょうか。九州地方の各県では市民の眼をおそれる何か大問題を常に抱えているのでしょうか。あるいは、情報公開請求をする市民を不逞の輩などと敵視する姿勢が県庁内に蔓延しているのでしょうか。九州地区の知事たちは、もういい加減に情報非公開の風土から脱却すべきです。 |
B |
息切れ?自治体 |
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過去成績上位だったにもかかわらず、前回から低迷している自治体があります。前々回の第6回でベスト5入りをした長野県は前回18位、今回はとうとう35位に、前々回6位の北海道は前回22位、今回は43位に、第2回から第5回調査まで4回連続ベスト10入りをしていた高知県は前々回の第6回が18位、前回が34位、今回24位と、下落傾向にあります。これらの自治体はかつては全国的に高い情報公開度を保っていたことからみれば、知事の情報公開に対する意識は高いと考えられます。しかし、その意識が県庁全体に及んでいないことが低迷の原因になっているのではないでしょうか。復活を望みたいものです。 |
C |
大阪市の低迷 |
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政令市では大阪市の低迷が目立っています。大阪市は全国市民オンブズマン連絡会議の調査で、2001年度に全国で最も多額の交際費を支出していた自治体(年間1億7000万円以上)であることが明らかになり、2003年8月の仙台での全国市民オンブズマン大会でその非公開体質が問題とされました。ところが、今回の調査でも、相手方情報の多くを公開しない、という運用を改めません。こうなると、支出先を公にできない特殊な事情がある支出先や目的に交際費が使われているのではないか、との疑いがますます強くなります。情報非公開の影に腐敗あり、とは私たちが過去10年間にわたって主張してきたことですし、後に述べるように、最近の道警や県警による裏金つくりの事実は、そのことに例外がないことを示しているからです。
大阪市は、それ以外の項目でも評価すべき運用はなく、相変わらずの情報暗黒都市ぶりを発揮しています。大阪は市民オンブズマンの発祥の地であり、見張り番など地元のグループが大阪市の情報非公開体質を裁判などで鋭く追及しています。にもかかわらず未だに大阪市が頑迷な非公開体質を維持していることは、大阪市長をはじめとする大阪市職員がもっていた「情報非公開ウイルス」が、情報の公開を求める市民に抵抗するうちに突然変異を起こし、より強力な情報非公開ウイルスとなった、と言いたくなります。
昨年最下位の名古屋市、下から2番目だった神戸市がカムバックしました。しかし、このように順位の上下動が大きいのは、情報公開制度の見直しが市民オンブズマンによる調査の後手後手に回っていること、すなわち、情報公開の重要性は認めるが、指摘されるまでは改善しない、という体質が市長さんや市役所内にあることが原因となっているのではないか、と思われます。しかし、そういう状態で、情報公開制度が実際に市政運営に生かされていると言えるかは疑問です。かつて宮城県の浅野知事が情報公開制度について、転ばぬ先の杖、と評しましたが、市民オンブズマンに指摘されて改善する(それでも、改善することは大阪市のように無視するより良いのは明らかですが)のと、転ばぬ先の杖、と位置づけて積極的に情報公開制度を行政に生かしていくのとでは、考え方に大きな開きがあるように思えるからです。 |
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(2) |
交際費情報 |
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調査の趣旨 |
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首長交際費は第2回ランキング調査から連続して評価項目としていますが、今回のランキングでは、部(局)長交際費の相手方の開示度を資料に加え、首長、部(局)長交際費のうち、公開度の低い方を得点とすることにしました。当然ながら、交際費の支出先情報の公開基準を首長と部長とで異にすることの合理性は認められません。首長交際費の相手方を公開するだけでは、自治体のおつきあいの実態が市民に公開されたことにはならないからです。 |
A |
最高裁判決の悪影響 |
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2001年3月27日に出された、情報公開に極めて消極的な最高裁第三小法廷判決の影響に一昨年来注目してきました。最高裁の基準によった場合、おおよそこのランキング調査では「非個人の一部の公開(個人の一部公開も含む)」の2ポイント、となると思われますが、2ポイントしかとれなかった自治体は昨年が山形県・茨城県・静岡県・石川県・奈良県・福岡県・鹿児島県の7県、今年が山形県、静岡県、奈良県、島根県、福岡県、鹿児島県の6県となっています。昨年2ポイントの茨城県、石川県は今回は全面公開の15点満点となりました。その代わりに昨年7ポイントの島根県が2ポイントに後退しています。
全国で島根県だけが交際費の相手方情報の公開度を後退させてきました。これが最高裁判決を受けたものかどうかは不明です。動機はともかく、一旦公開した情報を非公開にする、ということは時代に逆行します。
島根県はともかく、他の都道府県を見る限り、最高裁判決の悪影響は自治体の公開の流れを阻害していない、と言えると思います。 |
B |
病気見舞いも原則公開が常識化 |
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反対に「病気見舞いの相手方氏名」の全面公開(15ポイント)をした自治体は昨年が13道県(北海道・秋田県・岩手県・宮城県・福島県・栃木県・千葉県・三重県・和歌山県・鳥取県・岡山県・山口県・熊本県)。今回は19道県(北海道、岩手県、宮城県、秋田県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、福井県、三重県、京都府、和歌山県、鳥取県、山口県、徳島県、佐賀県、熊本県)となり、「病気見舞いについて場合によっては非公開にすることがある」(12点)という自治体は、16都府県(青森県、東京都、山梨県、長野県、富山県、愛知県、滋賀県、大阪府、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県、宮崎県、沖縄県)になりました。これら12ポイント以上の、病気見舞いまで公開または原則公開する、という都道府県数は昨年の29都道府県から35都道府県に増えました。
全面公開かどうかはさておき、病気見舞いまで公開する、という自治体が35都道府県となったということからみれば、このあたりが交際費の公開についての自治体のスタンダードとなったと言えます。これ以下の公開に甘んじている自治体は、大なり小なり、交際費の相手先を公開した場合には行政運営に支障が出る、と考えていることになるのでしょう。しかし、むしろそのような自治体では、交際費を用いた行政運営のあり方そのものを再検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。 |
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(3) |
監査書類 |
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調査の趣旨と対象情報 |
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昨年に引き続き、都道府県の監査委員の県警本部の予算執行に関する定期監査の書類を調査しました。公開請求は都道府県の代表監査委員に対し「直近の県警本部に対する定期監査(監査通知〜広報掲載)の過程で職務上作成し、または職務上取得した書類、資料、メモの一切」です。
最近、北海道警をはじめとして、全国の複数の県警で捜査補償費や旅費を財源とした裏金づくりが問題とされています。これらが報道されること自体、監査委員の監査が警察の不正支出に対しては無力であったことを証明しています。定期監査の作業の形骸化も含めて、監査の情報の公開が監査制度の改善のためには必要なはずです。
なお、市については、教育委員会への定期監査の資料の公開度を調査しました。 |
A |
評価の方法 |
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昨年同様、地方自治法199条1項および4項に定められた定期監査に関するものです。定期監査の手続きをおさらいしましょう。定期監査の手続きは、初めに監査対象部局に監査委員から監査通知をすることからスタートします。その後、事務局職員による帳票・簿冊等の予備監査(事務局監査)を経て、監査委員による説明聴取や質疑等からなる本監査(委員監査)、委員協議会による協議、監査結果通知、公報掲載という手順をとるのです。この手続きのうち、監査委員の定期監査の結論である公報記載事項が、どのような調査や議論を経て決定されたか、という過程の文書の公開請求をして公開度を評価しました。
公開請求先は各都道府県の代表監査委員で、対象文書は「直近の県警本部(市町村は教育委員会)に対する定期監査(監査通知〜公報掲載)の過程で職務上作成し、または職務上取得した書類、資料、メモの一切」としました。具体的な評価方法は、上記請求の結果公開された事務局監査での復命書や報告書、委員監査での質疑内容を精読し、各都道府県で公にされている公報と比較して、公開(一部公開の場合には一部公開)資料から公報記載事項以外にどのような情報が読みとれるか、公報記載事項以外の事項がどの程度詳細に記載されているか、といった、公開文書から得られる情報の量と質に着目して行いました。
今年は昨年と異なり、今回は事務局監査での書類と委員監査での文書のそれぞれについて詳細な評価をしました。委員監査の形骸化も含め、事務局と監査委員の仕事がどこまで市民、県民に公開されているかが重要と判断したからです。
政令市では事務局監査、監査委員監査の一方しか公開されていない等、事務局監査と委員監査を別々に行っているのか不明な自治体が多く見られました。したがって、昨年はどちらに関する文書か不明な場合でもできるだけポイントをつけたのですが、今回は事務局監査の書類が充実していても委員監査の書類が不十分な場合には、委員監査に関する質疑の評価を0としました。その分、昨年よりもきびしい評価となり、得点を落とした自治体が続出しました。 |
B |
調査の結果 |
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評価を厳しくしましたが、昨年以上に情報の公開度は高まっています。今年は全都道府県で監査の際に県警から受領した資料が公開されました。事務局監査の質疑応答も23の府県で詳細な記録が作成され、公開されています。委員監査については24の府県で質疑応答のわかる記録が作成されています。しかしその一方で13の府県では委員監査としての内容のある資料が公開されない結果となりました。もっとも、群馬県のように、公報に詳細な内容が記載されている場合には、委員監査の得点が0となる、というような結果もあります。これについては不公平だ、という考えもあるかもしれませんが、公報記載事項に監査委員事務局内での議論の過程が記載されている訳ではありませんし、なぜこれらを公報記載として選択したのか、という過程の議論の記録が公表されることが重要ですから、群馬県についてはあえて0ポイントとしました。
青森県と東京都については昨年、全国市民オンブズマンが調査した結果、監査委員が実際に県警や警視庁に行っていないことが明らかになりましたが、それ以外にも、今回の調査で0点の評価を受けた自治体の中には、実際に委員監査が行われているかどうかすら疑問に思わざるを得ないものもありました。また、裏金づくりを認めた北海道警ですが、北海道の監査委員事務局の監査の報告内容も不十分、委員監査については0ポイントですから、これでは裏金つくりなどそもそも指摘できないことは明らかです。現状の監査制度の機能不全は公開された資料からもわかります。
北海道だけでなく、自治体の監査制度の大幅な改正、改善の必要性があることは誰の目からも明らかです。せめてそのためにも、詳細な記録は残し、監査委員や事務局の仕事の内容を明らかにして、不正支出を見逃した際の責任の所在がわかる程度の情報は市民、県民に明らかにしておくことが必要でしょう。このことによって監査制度の改善についての意見も出てくる素地をつくることができるからです。そういう点では、監査関係情報の公開も、記録も残さない、という自治体の監査委員事務局は制度疲労の極致にあると言えるのではないでしょうか。 |
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(4) |
入札予定価格情報 |
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調査の趣旨と対象情報 |
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A4コピー用紙の購入契約(本庁契約分複数の部局で契約していればいずれか1部局対象)と道路清掃業務委託(本庁契約分、なければ出先の1つ)について、「平成15年に入札が行われた、以下の予定価格と入札価格、落札価格のわかるもの」を対象情報として公開請求したものです。工事の予定価格については、2001年(平成13年)3月9日付閣議決定による入札・契約適正化指針で公表が指示され、現在は全都道府県、政令市で公表されています。
その一方で、業務委託と物品購入の予定価格については、上記「指針」が指示していないことを理由として、公表していない自治体もあります。しかし、談合や不当な取引が行われていないか、適切な金額で契約されているかを市民、県民が知るためには、予定価格が公開されることが必要である点は工事と相違はありません。そこで今回、どこの自治体でも購入するA4コピー用紙と道路清掃業務委託の予定価格を評価対象としました。 |
A |
評価の基準 |
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予定価格を情報公開条例による公開請求によらなくても公表している場合には高い得点(8ポイント以上)が得られることとし、そのうち予定価格の公表時期が入札前の場合には最も透明度が高いとして、満点の10ポイントを配点しました。
予定価格を入札前に公表すること自体が談合防止に直接結びつくものではないにしても、予定価格情報が利権となり、汚職の温床となっていることから、入札前公表に高い評価をしたわけです。 |
B |
調査の結果 |
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A4用紙購入で事前公表制度を設けている自治体はなく、宮城県、鳥取県、山口県で情報公開請求を待たず、事後的に予定価格を公表していました。道路清掃については愛知県、三重県、京都府、和歌山県、鳥取県、愛媛県、熊本県、大分県の8府県が本庁で予定価格の事前公表の制度をもうけており、この8自治体を含む20自治体が公表の制度を設けています。反対にコピー用紙の予定価格を公表していない自治体は31都道府県、道路清掃の予定価格については6都県が公表していません。道路清掃の予定価格を公表していないこの6都県(東京、新潟、長野、滋賀、広島、福岡)はコピー用紙の予定価格も公開していません。
多くの自治体でコピー用紙の予定価格を公表しない理由は、工事のように複雑な積算作業を経て算出される設計金額に基づいて予定価格を決定する必要がないだけに、コピー用紙は単価が単純に決まり、しかも反復継続して契約をするものである以上、予定価格の公表が談合を誘発するから、と説明されます。
しかし、コピー用紙2500枚の実態価格などは民間向けの宅配通信販売業者のカタログで容易に知ることができます。単価が単純に把握できるからこそ、予定価格の相当性や契約価格の合理性などは市民、県民がより容易に判断できるとすら言えます。
工事についての予定価格を公表していながら、清掃業務の委託契約の予定価格を公表しない、という合理性はコピー用紙以上に乏しいと言えます。双方について予定価格を公表していない6都県中に、工事の入札制度改革で日本でもっとも進んだ制度を持っている自治体の一つと言える長野県が含まれていることについては、意外です。長野県の順位低迷の原因となっています。
なお、今回の調査の過程で入手した各地の入札結果調書を分析した結果、同じA4のコピー用紙の購入でありながら、自治体ごとに契約単価に大きな開きがあること、ひどいところでは同じ県の県庁所在地の市と県とで単価にして倍以上の開きのあるところがあることが明らかになりました。これについては最後に番外編として報告します。 |
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(5) |
土地開発公社 |
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調査の趣旨と対象情報 |
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土地開発公社(以下「公社」と言います)が自治体の事業用地を購入したまま、事業の凍結などで長期間保有している土地に要する費用が自治体財源を圧迫していることは、過去、私たちも「塩漬け土地問題」と名付けて問題にしてきました。この問題の深刻さは、公社保有土地の取得費や、土地取得のための借入金の金利などを合算した積上価格(簿価)はそのまま自治体の負担となっていき、私たち県民、市民の税金がつぎ込まれることになることによります。現実にバブル期に購入した塩漬け土地に要する費用負担が原因となって事実上破産してしまった自治体も出ています。そうなると住民に対する行政サービスは悪化せざるを得ません。したがって公社保有土地について、不当に高い価格で公社が土地を購入していないか、また金利を含む経費を自治体がどのくらい負担しなければならないか、といった情報は自治体行政の将来を左右する情報として、県民、市民に公開されなければならないのです。
情報公開対象情報は「土地開発公社の保有土地一覧表(2003年3月31日現在)」とし、地番ごとの取得価格がわかるか、積上価格がわかるかを評価対象としました。なお、先に述べましたが、土地開発公社がない東京都、土地開発公社で土地を保有していない愛媛県に関しては、住宅供給公社の保有 する土地について調査しました。 |
A |
情報の請求先と条例の実施機関化 |
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多くの土地開発公社では情報公開のための規定や要綱を定めています。そこで、今回の調査では、原則として土地開発公社に情報公開請求をし、入手した資料をもとにしました(規定、要綱もない場合には首長宛に請求)。そして、公開度とは別に、規定、要綱を有しているか(3ポイント)、各自治体の情報公開条例で土地開発公社を実施機関としているかどうか(10ポイント)でポイントを加算しました。条例の実施機関となっていて初めて非公開処分を争う訴訟を提起できるなど、情報公開制度を具備している、と言えるからです。
なお、かつては公社を条例の実施機関とできるか、という点に法的な疑義が出されたことがありました。しかしこの点については、現在国において独立行政法人等情報公開法が施行、制定されていることから、法的に問題はありませんし、地方三公社の実施機関化については2000年5月17日開催の「特殊法人情報公開検討委員会第22回会議」において自治省行政局長、建設省道路局路政課長・住宅局民間住宅課長らが、地方三公社 (土地開発公社、地方道路公社、地方住宅供給公社)の情報公開条例の実施機関化について法的な問題はない旨を述べています。 |
B |
調査結果 |
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地番ごとの取得価格を公開していれば満点の15ポイント、地番・地権者名は公開しているが個別取得価格は非公開であれば7ポイント、地番は公開しているが個別取得価格は非公開なら6ポイント、地番は非公開だが代表地番や事業ごとの価格は公開していれば4ポイント、 事業ごとの価格のみ公開なら3ポイント、いずれも非公開なら0ポイントとしました。積上価格は事業ごとに記載されますから、事業ごとの支払利息を公開していれば満点の15ポイント、非公開なら7ポイント、記載が なければ0ポイントとしました。これは非公開なら取消を求められますが、記載なしでは取消を求めようがないからです。これに基づく調査結果は別表記載の通りです。
取得価格については地番ごとの取得価格まで公開しているのは5府県(三重県、福井県、沖縄県、岐阜県、京都府)と3市(横浜市、千葉市、川崎市)でした。不当な価格で土地購入がなされたかどうかを市民が知るためには、地番ごとの取得価格の公開が必要です。地番ごとに取得価格が公開されることの公益性は高いと考えます。
積上価格の事業ごとの利息については36府県は公開しており、非公開なのは山梨県のみで、残りは記載なしでした。利息がどの程度自治体の財源を圧迫するかはきわめて重要な情報です。記載すらないことは塩漬け土地の深刻さを十分に理解していないか、塩漬け土地に多額の税金を投入する結果となったとしても、そのことについて市民に責任をとろうとする意識がないとしか思えないのですが。 |
C |
条例の実施機関化の遅れ |
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情報公開条例の実施機関になっていたのは鳥取県と岡山県、福岡市の3自治体のみでした。逆に京都府と熊本県は情報公開規程すらありませんでした。今回の調査で45都道府県と13政令市の公社について直接情報公開請求ができることが判明したわけです。
道府県以外の土地開発公社はどの程度条例の実施機関となっているのでしょうか。今回ランキングにあわせて市町村の土地開発公社について調査しました。全国1475公社の設置団体のうち、土地開発公社を実施機関に含めているのは以下の46市町村でした。 |
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北海道:函館市、青森県:浪岡町・常盤村、茨城県:阿見町、群馬県:藤岡市・玉村町、埼玉県:草加市・入間市・鳩ヶ谷市・朝霞市・幸手市・白岡町、神奈川県:藤沢市・小田原市、三重県:上野市、兵庫県:伊丹市・三田市、山口県:久賀町・大畠町・田布施町・平生町、福岡県:福岡市・大牟田市・直方市・飯塚市・柳川市・八女市・篠栗町・粕屋町・若宮町・碓井町・杷木町・夜須町・二丈町・吉井町・城島町・三潴町・立花町・広川町・金田町、熊本県:水俣市・牛深市・菊池市・松橋町・菊水町・津奈木町 |
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上記46市町村と鳥取県・岡山県の合計48自治体が条例で土地開発公社を実施機関にしていることになります。
土地開発公社に限らず、地方住宅供給公社、地方道路公社のいわゆる地方三公社の債務が地方財政を圧迫することが指摘され、いくつかの自治体では現実に問題も生じています。地方三公社に問題があり、国に独立行政法人等情報公開法があるのに、未だに地方三公社が条例の実施機関となっていない、というのは明らかに自治体の対応が遅れています。早急に条例改正が必要でしょう。 |
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(6) |
激励慰労費 |
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調査の対象と趣旨 |
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警察関係支出の対象として激励慰労費の支出関係文書を選びました。激励慰労費とは、捜査活動に従事した警察官が飲食に用いることが許されている経費で、財源が国費のものと県費のものとがあります。請求対象文書は「2002年度中に捜査費(国費・県費)で支出した激励慰労費」で、請求先は各道府県警本部長です。請求の結果、激励慰労費を支出していなかったことが判明した4県(群馬県・山口県・大分県・宮崎県)に関しては、県警総務課の出張旅費(群馬・宮崎県警)、食糧費(山口・大分県警)を情報公開請求しました。
2002年度に全国の道府県警と警視庁で支出した激励慰労費の総額は約1億9700万円に上りました。各県別の支出額は別紙〔参考資料1〕をご覧下さい。以前、食糧費を公務員が内輪での飲食に使っていて返還を命じられた判決がありましたが、同じ公費でありながら、激励慰労費というだけで未だに年間1億9700万円もの税金が飲食に用いることが許されるというのは合理的とは思えません。現に昨年(2003年)、高知県警が県費を財源とする激励慰労費を飲食に支出していたことに関し、監査委員が同年の9月に自主返還を求める意見を出すに至っています。加えて、現在、北海道警を初めとして日本全国の県警でカラ出張やカラ捜査費の流用など組織的な裏金つくりの疑惑が問題となっています。
私たちは95年の官官接待の追及以降、カラ出張問題など他の自治体の部局の不正支出を追及してきましたが、警察情報についてはこれまで、ほとんどが捜査上の秘密を理由に非開示とされ、住民訴訟に勝訴するに十分なカラ出張などの資料をなかなか入手できませんでした。一方、宮城県警や静岡県警の旅費や食糧費の情報は情報公開訴訟の結果2004年2月、3月に相次いで開示され、静岡県警はカラ出張を認めるという大きな成果を生み出しました。食糧費・旅費 は警部補以下非公開であったからこそ裏金にまわっていたのであり、情報をオープンにすれば裏金になることもありませんでした。今ごろになって、警察の裏金疑惑が噴出しているのは、情報の非公開の陰に腐敗あり、といった私たちがこの10年言い続けてきたことが顕出したにすぎません。 |
A |
評価基準 |
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ランキングとしては県警本部の激励慰労費の参加者氏名に関して、どこまで公開されるかをチェックしました。全面公開の県警本部は10ポイント(満点)、警部補以下非公開が 8ポイント、警部以下非公開が6ポイント、非公開・記載無しが0ポイントとしました。 |
B |
調査の結果 |
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氏名を全面公開している県警本部はありませんでした。参加者の記載がなかったのは6都県 (沖縄県・岐阜県・千葉県・神奈川県・福岡県・東京都)、警部以下の氏名非公開は2県(静岡県・山梨県)、その他39道府県が警部補以下の氏名が非公開でした。そもそも身内だけの激励慰労会の出席者名簿を作成しない6都県は問題外です。
また、非公開の論理にしても、警備の任務中ならともかく、任務終了後の激励慰労会に参加した氏名すら非公開 なのは理解に苦しみます。
カラ出張・カラ飲食を認めた静岡県警は警部以下の情報を公開してきませんでした。これでは、再発防止に対する意欲を疑わざるを得ません。
警部補以下氏名を非公開としている県警本部が多いのですが、これも問題です。ちなみに鳥取県警は、地元のオンブズが提起した鳥取県警の食糧費の公開に関する裁判で、警部補以下の氏名を公開するという判決が出る前に、規則で「警部補以下の氏名は非公開とする」と定めてしまいました。警部補以下氏名の非公開取消判決は確定し、公開が命じられましたが、新たに作った規則を盾にいまだに公開していません。法的な対応の合理性について疑義があることももちろんですが、不正がないから非公開、ではなく、不正がないから公開、というのが県警の信頼回復に最も求められていることのはずです。そしてこのことは、全国の県警本部に共通するはずです。 |
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制度運用 |
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これまで同様、コピー代が安価であることが充実した情報公開制度には不可欠という観点から、1枚10円までのコピー代を徴収する場合には満点の30ポイント、21円以上のコピー代を徴収するところは一律0ポイントとしました。都道府県では21円以上を徴収する自治体はありません。
昨年、コピー代は1枚10円とする地方自治体は28府県でしたが、今年は35自治体になりました。昨年の第7回ランキング調査で「コピー代10円はスタンダードとなったと言って良い」と述べましたが、その傾向はますます強まったと思います。20円を徴収している12自治体(東京、山梨、新潟、兵庫、広島、島根、香川、福岡、長崎、熊本、鹿児島、宮崎)中5県が九州というのもコピー代のカルテルでもあるのではないか、と疑われますが、佐賀県は今年、10円に値下げしました。他の5県も佐賀県にならってほしいと思います。 |
(8) |
失格について |
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閲覧手数料を徴収する自治体は例年同様、失格としました。都道府県、政令市での失格は東京都だけです。 |
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5.まとめ |
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二極化が進んでいること、九州地区の公開度が低いことを昨年来指摘しました。しかし、その九州でも佐賀や大分など、少しずつ公開度の改善をしている自治体も出ています。情報公開制度の遅れている自治体はやはり少数派になっています。今年の福井県のように、新知事誕生が情報公開度アップの原動力になった、と思われるところもあります。しかし、いったん上位評価を受けても、翌年の調査では順位を後退させる自治体も多くなっています。
行政や地方政治が常に新しい問題に直面する度ごとに、どのような情報を公開しなければならないか、というテーマも新しくなります。一度の見直しだけで情報公開制度は完成するのではないのです。そして、情報公開制度の改善を不断に検討する、ということは、自治体運営に対する県民、市民の参加に対する首長さんの考え方が常に問われている、ということです。情報公開度の低い自治体の首長さんは、情報公開制度を自己の推進する行政目標に対する広報制度の一部として位置づけたり、自己の推進する行政に反対する市民、県民の意見を雑音としか考えていないのではないでしょうか。
第一次調査の結果を各自治体の情報公開担当者の方に送付し、それぞれの自治体の方々から寄せられた意見も参考にしながらランキングを作成しました。第一調査を各自治体の担当者にお送りするようになってから、年毎に各自治体の担当者から多くの意見が寄せられるようになり、今回の調査では33通のファックスでの申し出が寄せられました。意見の採否と理由について原則としてすべての意見に文書でご返事をしてきましたが、そのすべてを本コメントでふれることはできませんでした。その点をお詫びするとともにご意見をお寄せくださったことに感謝致します。特に、監査書類の評価については多くの意見が寄せられました。中には今後の参考にするから、良い評価を受けたサンプルを見せていただきたい、という意見もありました。そこで、今回は監査書類について満点を獲得した自治体のうち、復命書の内容については茨城県、監査委員質疑については三重県の文書の一部を別紙〔参考資料2・3〕として添付します。
自治体の情報公開でもっとも遅れているのは県警の情報公開です。情報の非公開を続ける場合には、県警に対する信頼回復をはかることは困難です。そればかりか、情報の非公開は、かつて情報を非公開としたまま、自治体内部でカラ出張の調査、改善をした際に自治体が直面した問題、すなわち、公費支出について市民、県民の批判や意見が入り込まないことで、妥当な公費支出基準の判断に支障が生じる(たとえば旅費の支出などで部局内ごとで基準がまちまちになる)などの多くの弊害を生みやすくするのです。各地の県警が情報公開度の改善をはかることを期待したいと思います。 |
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【 番外編 】 コピー用紙価格比較〔参考資料4〕 |
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今回コピー用紙の予定価格をランキングの対象にしましたが、その副産物として各自治体がいくらでコピー用紙を購入しているかが判明しました。これらを踏まえ、コピー用紙の契約について気づいた点をレポートします。 |
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最も安く購入している自治体、最も高い自治体 |
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A4コピー用紙2500枚当たりの単価を調査してみましたが、今回調査中最安値は福島県で、2500枚で944円で契約しています。反対に、最も高いのは和歌山市で3,300円で、3倍の開きがあります。 |
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用紙のメーカー指定が高値の原因 |
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コピー用紙をメーカー別に指定している自治体が多くみられましたが、これが落札額高騰の原因となっています。民間のオフィス宅配大手のカタログ価格よりも安価な1,200円未満で購入している自治体は40ありましたが、メーカー別に指定していた自治体はここには含まれていません。逆に民間のオフィス宅配より明らかに高額の1,500円以上で購入している自治体は19もありましたが、内、10がメーカー別に紙を指定しています。メーカー別に指定して購入すると、入札業者数が限定されて高価になることがデータから推測できます。
また、コピー機との包括契約をしている自治体もありますが、それも高価になる傾向が見られます。他にも、広島市や福井県など各課ごとに用紙を随意購入している自治体などは割高になる傾向がみられます。購入方法を検討してもらいたいものです。 |
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近隣の価格差 |
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近隣の自治体の入札金額を比較してみると、不可解な点が浮かび上がってきました。いくつか気づいた点を挙げます。
<千葉市と千葉県>
千葉市に1,125円で落札した業者は千葉県では入札を辞退し、別の業者が1,540円で落札しています。
<和歌山県と和歌山市>
和歌山県で1,470円で落札した業者は、和歌山市で同一種の紙を3,200円と2.18倍の価格で落札しています。
<石川県と金沢市>
石川県で1,414円、1,729円で入札した業者は、金沢市では共に1,900円で入札していました(いずれも落札せず)。
<松山市と愛媛県>
松山市で1,075円、1,100円、1,150円で入札した業者は、愛媛県では1,850円で入札していました(いずれも落札せず)。
これらは用紙の参入業者間で価格カルテルや談合組織のようなものがつくられ、それぞれが棲み分けが行われていると考える以外に合理的な説明はできないのですが。ぜひ各自治体は調査の上、説明してほしいものです。 |
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まとめ |
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価格カルテルや談合が行われているかどうかはともかくとして、自治体は数万箱単位で紙を購入しています。1箱あたりの落札額が入札によって下がれば、全庁当たりで見れば数百万円単位の節約につながります。また、物品の予定価格を設定する際には、他県の状況を把握して設定すべきです。 |
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